9月〜10月の拳闘展望

先日、アメリカで亀田兄弟の次男と三男が試合をやり、二人そろって判定負け(TBS時代ならありえない)で仲良くダブル二連敗を喫したことで、ボクシング界も正常化されてきたのかな、と感じます。
10月には、亀田長男が河野公平(ワタナベ)のWBAスーパーフライ級王座に挑戦するというので、気の早いネット民は「4買級制覇確実」なんて言ってますが、この試合はワタナベジムと関係の深いテレビ東京で中継されるんですね。つまり、亀田にとって初のアウェイ試合ということになります。これまでTBSの手厚いプロテクトに守られてきた亀田が、敵地でどんな闘い方をするか。河野は「判定になると不利」と言っているようですが、実際のところはどうなるか。亀田が2013年に韓国でやった、WBAバンタム級防衛戦で見せた目を覆うばかりの衰えぶり(がっちりガードを固めて後ろに退り続けているのに、素人同然の相手がヘナヘナ繰り出すパンチを食らいまくってダウンまで喫するという、歴史的醜態であった)を考えると、楽観はできないまでも、そう絶望する必要もないかもしれません。


とはいえ、スーパーフライ級にはWBC王者“貴公子”カルロス・クアドラス(帝拳プロモーション)と、WBO王者の井上尚弥(大橋)という無敗の強豪がふたりも君臨しているので、亀田と河野の試合は実際のところ、それほど注目度が高いわけではありません。


それより注目すべきなのは、日程的にはこちらが先ですが、9月22日に開催される、山中慎介帝拳)vsアンセルモ・モレノパナマ)のWBCバンタム級タイトルマッチです。


モレノは2008年から2014年までWBAバンタム級王座に君臨していた強豪で、WBAが亀田長男を王者にするためにスーパー王者へ格上げされたことで、日本でも有名です。暫定王者ウーゴ・ルイスとの“統一戦”に勝利した長男が、スーパー王者モレノとの統一戦指令は全力で回避したのを、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。強すぎて相手がいないので一階級上のスーパーバンタム級に挑戦したこともあるほど(負けたケド)の強さで、しかも山中のようなハードパンチャータイプではなく、長いリーチを活かした懐の深いアウトボクシングで、相手の良さを消して自分のペースに持ち込むタイプ。山中にとってはやりづらい、いや、山中のみならず誰がやってもやりづらいボクサーです。これまで“神の左”でKOの山を築いてきた山中ですが、これまで39戦のキャリアで一度もノックアウトされたことのないモレノに、はたしてあのコークスクリューブローを撃ち込むことができるか。


鍵になるのは、山中の右リードブローでしょう。前の試合で見せた多彩なジャブに加えて、とくに注目すべきパンチは、近距離での右アッパー。これがヒットすれば、山中のペースになるであろうと予想します。


9月27日には、井岡一翔(井岡)と高山勝成(仲里)がそれぞれ防衛戦を行いますが、こちらはそれほど注目すべき試合ではなさそうです。



海外選手に目を向けると、5月にマニー・パッキャオ(比)との“世紀のスーパーファイト”を闘ったフロイド・メイウェザー(米)は、引退試合と称して格下のアンドレ・ベルト(米)と闘うというので、相変わらずの消極的姿勢に批判が集まっています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150910-00000030-jij_afp-spo

メイウェザー、「最終戦」前の会見で自己弁護

【AFP=時事】ボクシング、WBAWBC世界ウエルター級王者のフロイド・メイウェザー・ジュニア(Floyd Mayweather Jr.、米国)が、アンドレ・ベルト(Andre Berto、米国)とのタイトルマッチを3日後に控えた9日、ベルトを「現役最終戦」の相手に選んだ決断を、強い口調で自己弁護した。

「TBE(The Best Ever、史上最高)」を自称するメイウェザーは、ここまで48勝無敗の成績を残しており、次の試合に勝利すれば、ヘビー級のレジェンド、故ロッキー・マルシアーノ(Rocky Marciano)氏が残した歴代最高記録に肩を並べることになる。

 しかし、ファンの盛り上がりはいま一つ高まっていない。まず、ベルトがここ6戦で3敗を喫していることもあり、メイウェザーの勝利は堅いとみられている。また、38歳のメイウェザーが現役最終戦と繰り返したところで、この言葉を信じる人がほとんどいない。

 対戦相手に英国のアミール・カーン(Amir Khan)ら、自身への挑戦を熱望するウエルター級の有力選手を避け、明らかに格下のベルトを選んだ弱腰ぶりも、ボクシングファンの不興を買っている。

 メイウェザーに批判的な人は、試合への関心を何とかして集める必要があるからこそ、最終戦などと言って騒ぎ立てるのだと指摘している。会場のMGMグランド・ガーデン・アリーナ(MGM Grand Garden Arena)のチケットは、8日時点でまだかなり売れ残っており、このままではメイウェザーの最後の舞台は、興行的に大失敗となるおそれがある。

 そのなかで、9日の記者会見に臨んだメイウェザーは、ベルトが2度世界チャンピオンになっていることを指摘し、「ベルトは楽勝な相手なんかじゃない。誰を選んだって、メディアはあれこれ言っただろう」と話した。

「カーンだって3敗してる。ベルトも3敗だ。メディアが何と言おうと、つまるところボクシングは2人の選手の戦いだ。そして、俺は自分の力をわかっている」

「俺には力がある。観客を一番集めた男、それは俺だ。一番(テレビの)ペイパービューを稼いだ男、それも俺だ」

【翻訳編集】 AFPBB News

まぁ、パッキャオ戦を見た人ならわかると思いますが、メイウェザーの試合はいつもあんな感じなので、とくに内容とか注目する必要はないです。メイウェザーの試合で面白かったのは、反則しまくりの乱戦となったビクター・オルティス戦ぐらいのものでしたからね。



それより注目すべきなのは、ミドル級で無敵を誇るWBAスーパー王者、WBC暫定王者ゲンナディ・ゴロフキンカザフスタン)と、IBF王座を獲得したばかりのデヴィッド・レミュー(カナダ)による三団体統一戦です。



ゴロフキンは33戦全勝30KO、しかもここ20試合連続KO勝ちで、世界戦でも14連続KOという驚異的なパワーを持つハードパンチャーです。とにかく一発一発のパンチが重く、日本でいうなら内山高志(ワタナベ)をさらに大型にしたようなタイプ。オレの見たところ、もしかしたらミドル級では地上最強どころか史上最強かもしれない、そんなレベルのボクサーです。
同級にはWBC正規王者ミゲール・コット(プエルトリコ)や前ウェルター級王者サウル・アルバレス(メキシコ)、WBO王者アンディ・リー(アイルランド)といった強豪がひしめいていますが、ゴロフキンは頭2つぐらい飛び出ている印象。日本の期待の星、村田諒太帝拳)も、ほかのチャンピオン相手なら勝てるイメージがいくつも湧きますが、ゴロフキン相手ではさすがにかなわないかと。


そんなゴロフキンに挑戦するのは、カナダからアメリカに進出してオスカー・デラ・ホーヤゴールデンボーイ・プロモーションと契約した、デヴィッド・レミュー。


まだ26歳と若いものの、36戦34勝31KO、という戦績はゴロフキンにもひけをとりませんが、特筆すべきは一撃必殺のパンチ力。ナチュラルなパワーを持つゴロフキンとはひと味違う、気合を込めてブンブン振り回すパンチは、いかにもファン受けがいい感じです。日本人ボクサーのタイプとしては、辰吉丈一郎をぐっと大型化したような感じを思い浮かべるといいでしょう。6月には、元王者の強豪ハッサン・ヌダム・ヌジカム(フランス)とIBF王者決定戦を行い、4度のダウンを奪う猛攻で3−0の判定勝ちをおさめてみごと王座を獲得いたしました。


その初防衛戦が、無敵を誇るゴロフキンへの挑戦というあたり、その意気やよし! と応援したくなるのを感じます。ラスベガスのオッズでは14対1とゴロフキン圧倒的有利が予想されていますが、レミューのパンチ力を見ると、ひょっとしたらひょっとするんじゃないかという期待を抱く人も多いでしょう。



試合は10月17日、日本ではwowowエキサイトマッチにて生中継。アンダーカードでは、軽量級最強を誇るローマン・ゴンザレス(帝拳)がブライアン・ビロリア(米)とWBC世界フライ級王座防衛戦をやります。こちらも注目!


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