元祖「ネイチャー・ボーイ」の実力

柳澤健の『1964年のジャイアント馬場』は、日本のプロレスファンの多くが持っている、ルー・テーズカール・ゴッチアントニオ猪木という「ストロングスタイル」を重視する史観に対し、ゴージャス・ジョージ→バディ・ロジャース→リック・フレアーという、多くのプオタが「ショーマンスタイル」と呼んで軽視してきた流れこそがプロレスの保守本流である、という指摘をする本でありました。

1964年のジャイアント馬場

1964年のジャイアント馬場


ジャイアント馬場アメリカ修業時代、当時最大のスターだったバディ・ロジャースと戦い、その華やかなショーマンシップと徹底したプロ意識を学んだわけですが、ロジャースは来日した経験がないためそのファイトを見た人がなく、また、おもに梶原一騎によるネガティヴキャンペーンもあって、日本のプロレスファンは「実力もないのに威張っていたダメレスラー」というイメージを植え付けられています。

(『プロレススーパースター列伝カール・ゴッチ篇より)


しかし、近年はYouTubeで昔の貴重な映像も気軽に見られる、いい時代になりました。


というわけで、ここで紹介するのが、このルー・テーズバディ・ロジャースの動画です。シカゴで行われた、テーズのNWAタイトルにロジャースが挑戦するタイトルマッチで、レフェリーは、元ボクシング世界ヘビー級チャンピオンのジャック・デンプシーが務めています。

  • Lou Thesz vs. Buddy Rogers


梶原一騎の漫画では、キザなベビーフェイスとして描かれていたロジャースが、実際には大ヒールだったこともよくわかりますが、極め付きは34分ごろに見られるフィニッシュのロープワークです。あまりにみごとなので、思わずGIFにしちゃいました。


わはは、これはすごい。かなりの練習をしないとこのムーヴはできないよ。テーズにこれをやれと言っても無理でしょう。これがロジャースの実力か……!


それにしても、当時のロープは柔らかかったんだなあ。いまの日本で同じことやったら、一発で首の骨が折れますよ。
(誤解している人が多いが、日本のプロレスで使用されているリングロープは、ゴムのように弾力があるわけではなく、鉄のワイヤーを編んだ上にゴムの被覆をかぶせたもので、非常に硬いのである)