椰子の実を割ったらサヨウナラ

おっ、注目の本がAmazonで予約受付開始になっておる。

鈴木涼美幻冬舎WEB連載『お乳は生きるための筋肉です』が単行本化されます。WEBに掲載されただけでは分量が少ないので、大幅加筆されているものと思われます。
連載中は、鈴木氏の過去の経歴がまだ公表されていなかったので、いま見ると奥歯に物が挟まったような表現(この人に独特のミスティフィカシオンともいえる)が目につきますが、その辺が解消されているのかな。タイトルは連載された記事のうち一本のサブタイトルから昇格されたもので、一ノ瀬泰造とはとくに関係なく、「彼女がAVに出た、という男の反応」を描いたものです。エッセイの分野では、自分の経験にフェイクを入れて「友人の経験」と称する手法はごく一般的なものである、ということは知っておいてもいいと思います。
(ただし鈴木氏は、大学時代から、周囲の人にはAV出演のことを隠していなかったそうである)



そして、そしてですよ。待ちに待った柳澤健の最新作!

1964年のジャイアント馬場

1964年のジャイアント馬場

「週刊大衆」に連載された『1964年のジャイアント馬場』がついに書籍化されます。

アメリカ修業時代の貴重な映像)


ジャイアント馬場の生涯を、プロ野球時代の実力(関係者による評価は一定していない)からアメリカ修業時代(例のピンハネも含む)、金銭哲学や猪木との関係についてまで詳細に描き、少なくない数の日本のプロレスファンが持っている

というプロレス史観のメインストリームを

というアメリカン方向に揺さぶる効果を持った、かなり強烈な本です。コレだよコレ! 最近のオレはめっきり軟弱になり、鈴木涼美のことばっかり書いてた気がするが、オレの本来の興味領域はこっちなんだよ! よく考えたらキャバクラ嬢恋愛論なんてどうだっていいわ! セックスワーカーの権利より、リングワーカーの名誉のほうがオレにとっては1億倍だいじやね!


ターザン山本の影響もあって、とかく聖人君子化されがちなジャイアント馬場ではありますが、本連載では、自分が成功した当時の方法論に拘泥して、巨額の赤字を出し続けていた、無能な老害の馬場という一面も容赦なくえぐり出しているので、必読です。


果たして、この2冊を両方とも読む人間がオレ以外に存在するのかどうかは不明ですが、とにかく注目の本なのであります。