身体を買ったらサヨウナラ

実はですね、オカダ・トシオのスキャンダルが出たとき、これちょっと『テレクラキャノンボール』に飛び火しそうだな、という気がちょっぴりしたんですよね。

オカダ・トシオは、関係を持った(もしくは妄想した)相手の年齢や体型、性器の機能などをABCで格付けしてリストを作り、仲間に見せていたというのが、女性に対するひどい侮辱だ、と大批判されたわけです。
で、このたび劇場版もソフト化された『テレクラキャノンボール2013』ですが、この企画では、6人のAV監督がナンパを行い、ゲットした女性とのハメ撮り内容によってポイントを競うという内容になっているわけです。女性をゲットした早さ、人数、顔出しを許可させられるか、「今まででいちばん気持ちいい」と言わせることができるか、精液を飲んでもらえるか、などが加点対象。射精するのに手を使ったり、そもそも射精できなかったりすると減点となります。後半になるとポイント獲得の機会がどんどん増設されていき、プレイ内容が無茶苦茶になっていくのが面白さの主眼であります。


で、ゲットした女性が10代だと+1点、40代以上だと−1点という規定もあります。ここがちょっぴりオカダチックだという感じはしたんですよね。
撮影したビデオをレース参加者がみんなで見て、女性の美醜をうんぬんしながら笑いのタネにするというのも、フェミニズム的には言語道断な行為といえるでしょう。


ハマジムのビデオには独特のゆるいコンプライアンス意識があるようで、『テレクラキャノンボール』シリーズでは毎回のように誰かがスピード違反で捕まるし、昔のビデ倫では審査を通らなかった低身長症の男優も、いまはふつうに出演しています。ちょっと知的障害も疑われる彼の発言を、みんなで笑っているのは、よく言えば差別のないバリアフリーということになりますが、違法行為を否定的に描写しないことも合わせて、ポリティカル・コレクトネスの観点からは、問題がないとはいえないでしょう。


そんな批判を、湯山玲子カンパニー松尾にぶつける対談がアップされています。


カンパニー松尾/湯山玲子 女性たちは、「テレキャノ」にどうして怒らないの?<対談 「劇場版 テレクラキャノンボール2013」が教えてくれる男と女とその時代> - 幻冬舎plus カンパニー松尾/湯山玲子 女性たちは、「テレキャノ」にどうして怒らないの?<対談 「劇場版 テレクラキャノンボール2013」が教えてくれる男と女とその時代> - 幻冬舎plus

『テレクラキャノンボール』はポルノグラフィとして作られたものなので、こういった批判を避けることは決してできないとは思いますが、でも、湯山さんの批判もちょっぴり内容と噛み合ってないような感じはしますね。


あの作品には、美人もそうでない人も出てくるんですが、そもそも女性の美醜はポイント計算の対象にはなっていないんですよね。美人であろうとブスであろうと、ゲットしたポイントに変わりはない。年齢による加減算以外は、女性に点数をつけることはいっさい行われていないのです。
(※もちろん、ポイント付け以外の雑談で笑いものにする行為は、悪質と断ぜられても仕方ないであろう)


あと、湯山さんは「女性を蔑視してマウンティングしている」「バカな俺でも女よりはすごい、というかつての価値観で男のプライドを保っている」というような批判もしていますが、まぁこれはオレがAVファンだから思うことかもしれませんけど、あの映画で美人とはいえない女性と絡む男たちからは、「こんな女でもヤれる俺はすごいんだぜ」というマウンティングより、「こんな女でも、ヤラせてもらえなければ何にもならない、俺たちってダメ人間だよな」という自虐のメッセージを感じましたけどね。
(※もちろん、意志を持って生きている女性を男の自虐の材料にするな、という批判は当然あってしかるべきではある)


女性を下に置くことで男たちがまとまっている、という湯山さんの見立てには、さすがに松尾隊長も「そうかなあ……」と苦笑しています。AV業界というのは、女性に対する蔑視と崇拝が複雑に混在している場で、商品としては女性をモノのように扱いつつ、現場では女優を最大限に立てなければいけません。そんな現場で生きてきた監督たちの、あの場で見せる一体感には、「女性を自分たちの下に置く」というよりは「自分たちを女性の下に置いている」という態度を感じました。
(※もちろん、相手を勝手に自分の上に置いたり下に置いたりする権利を自明のものと思うな、という批判は避けられるものではない)


オカダ・トシオは一方的に相手をランク付けしていましたけど、『テレクラキャノンボール』では各付けの対象は女性ではなく監督自身のほうである、ということでいかがですかね。
(誰に聞いているんだろう)



このカンパニー松尾×湯山玲子の対談連載は4回目まで続くそうなので、これからどんな話になっていくのか、楽しみにして読んでいきたいです。


ちなみに、湯山さんはこんなことも言っていますけど。

湯山 たとえば、ニッポン男子の競争の最大スキームは東大中心のヒエラルキーでしょ? そこではほとんどの人が負けるのに、「俺は負けていない」という理由を見つけていくのはきついよね。「東大、それが何か?」という域なんて、仕事の実力の世界ではすぐに達せそうなのに、その”負け感”が人生に影を落としている男性は世代を超えて大半だと思うけどなあ。

カン松隊長はかつて、ちょうど東大の大学院に進学したころの鈴木涼美と、ハメ撮りもやっているので、東大ヒエラルキーに対するある種の復讐はできているんじゃないかと思ったのでありました。