すごいAVであった、という話(完結篇)



さて、三回にわたって書いてきた『春原未来のすべて』も、ついに完結篇です。


今回も、かなり濃厚な性行為の描写がありますので、18歳未満の方、およびポルノに嫌悪感がある方はご遠慮ください。






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2月4日に羽田空港を発ち、2泊3日の予定で北海道へ撮影旅行にやってきた、AV女優の春原未来と、監督のタートル今田。


1日目は札幌近郊のホテルに宿泊し、ロングインタビューで春原はプロ意識の高さから特異な死生観までを涙ながらに語り、視聴者に衝撃を与えます。
しかし2日目は、宿泊先である小樽のホテルで、彼女は大量のお酒を飲んで泥酔し、自分の膣の中で今田監督に放尿させるという奇行に走り、視聴者は「昨日の衝撃は何だったんだ」と別種の衝撃を受けることになりました。


そしてふたりは、旅の最終日である、3日目の朝を迎えます。


昨夜の醜態を思い出してさすがにバツの悪そうな春原未来ですが、タートル今田監督は「いいよ」「楽しかったよ」とおおらかに応じます。
春原は「したことないことをやりたかったの。特別な感じがするから」と桜Trick』みたいなことを言います。ちなみにこの人は百合ビデオでもたいへん高い評価を受けています。

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恋人同士のようにしっとりした雰囲気で、ようやくこの撮影旅行で最初の、本格的なセックスがはじまります。DVDのランタイムではもう1時間30分を回っていました。


ふつうのAVでは、手順がだいたい決まっていて、キス→胸を愛撫→女性器を愛撫(潮吹きがここで入ることも多い)→フェラチオ→本番というのが主流ですが、春原未来はここで「スローセックスみたいにやろう」と提案し、まず性器をつなげてからゆっくりと互いの身体に触れ、「本当に気持ちいいセックス」について語り合います。


春原未来は、3年足らずの間に400本近いビデオに出演してきた売れっ子で、痴女からM女までこなす人です。1日で100人の男とセックスしたり、エスパー伊東みたいにバッグに詰め込まれて犯されたり、椅子に拘束されて電動器具で気を失うまで責められたりといった、超ハードな撮影も泣きごとひとつ言わずにやりぬいてきた、筋金入りのAV女優であります。



その彼女が、タートル今田監督に語ったのは「気持ちいい、ということの原点に帰ったセックスを見せたい」ということです。



「プレイ内容って、どうしても『もっと、もっと』ってなるじゃん。女優もみんな『解禁、解禁』ってなるしさ。それって違うと思うの」という春原。いつもの撮影では、大声を挙げ、顔をくしゃくしゃにして、気が触れたようなエクスタシーの狂態を見せる彼女ですが、今日はゆっくりと身体をつなげて抱き合い、互いの肌と肌を合わせて「ほんとは私ね、毎回イかなくてもいいの。こうやってくっついてるだけでも、女の子は幸せになるんだよ」とタートル今田に囁きます。今田監督も「男もそうだよ」と肯定し、DVDの再生時間で40分近く、ゆったりとしたセックスが続きます。こういう展開って、通常のアダルトビデオでは考えられないことなんです。


ホテルをチェックアウトしたふたりは、旅の目的地である、小樽運河へ向かいます。雪が舞う中で、どうしてここを選んだのかと聞くと「2年前に撮影で来た、思い出の場所だから」と答える春原未来。当時は美少女レーベル専属で、それなりにソフトな内容で撮影していたころでした。もっとも、彼女の場合はソフトなプレイ内容でも反応が濃すぎてハード映像になっちゃうんですけどね。

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「この業界の人って、撮った作品のことなんか忘れちゃうじゃん。でも私はちゃんと思い出に残しておきたい。『AV女優の春原未来』がいなくなったとしても、私という人間は残るんだから」と彼女は語ります。本当に誇りを持って仕事をしているんでしょうね。この2年で自分も成長した、と実感したらしく「前はメーカー専属だからみんなに支えられてたけど、今はもっとしっかりできるようになった」「いい作品になるように頑張れば、結果はついてくるし、メーカーも事務所もwin-winの関係でいられる」と、初日のインタビューでは考えられなかったようなポジティブな面をここで見せてくれるので、視聴者のゴリゴリと削られた気力も、だいぶ回復してくるでしょう。


こうして2泊3日の旅は終わり、春原未来とタートル今田は飛行機で東京に帰ってきます。
でも、この時点でまだランタイムが1時間近く残っているんです。


いったんメーカーの会社に戻り、余計な荷物を片付けたふたりは、まだ撮れ高が足りないという判断なのか、それとも名残惜しさからか、最後のセックスをするために、春原の運転するクルマでラブホテルへと向かいます。春原未来がデビュー前にプライベートでよく行っていたという、川崎市のラブホテルにチェックインするのですが、旅の疲れからかふたりとも寝てしまい、予定が延長されて3泊4日になってしまいました。



んで、本来の予定にはなかった4日目のからみがスタートするわけですが、正直な話をすると、ふつうのアダルトビデオとして性的興奮を求める視聴者なら、DVDのチャプター画面でこの「4日目」を選択して見れば、それだけで充分です。それだけで値段分の価値はある、と断言できますね。それぐらいすごい。こういう作家性の強いAVは、以前からよく「抜けないAV」なんて言われたりして、それが褒め言葉になるような風潮もありましたが、この『春原未来のすべて』は当てはまらず、ポルノとしての実用性もハンパじゃないです。


2月7日の朝。本来なら撮影は終わっていて、プライベートな時間に近いからということか、春原未来は全裸で、完全にメイクを落としたすっぴんで眠っています。
そこに、先に目を覚ましたタートル今田監督がちょっかいを出し、おっぱいを吸ったりお尻をぺしぺし叩いたりしますが、彼女は寝ぼけていてなかなか目を開けません。「遅刻しちゃうよ」という今田に、目を閉じたままで「ねえ、入れて起こして」とつぶやく、すっぴんの春原。恋人同士というよりもはや新婚夫婦のような、スイートでまったりとした信頼関係がうかがえるやり取りです。


正常位でつながると「こんなに毎日やってたら、カタチが合っちゃう」と、目が開かないままに名言製造機の本領を発揮する春原未来。最初はふたりともおどけた態度で、今田がキスをしようとすると「まだ歯磨きしてない」と拒否するので、つながったまま彼女を抱えて洗面所に連れていき、つながったまま歯磨きさせるあたりはちょっとユーモアがあります。


でも、ベッドへ戻ってからのセックスは白熱したものになり、春原未来が前日に語っていた「気持ちいいの原点に帰ったセックス」がどういうものか、わかるようになっています。


アダルトビデオには「痴女」というジャンルがあり、女がわいせつな言葉を連発して男を辱めるというものです。この、淫語というのも女優のセンスが問われるもので(AVの台本はそんなに細かく台詞を書いてない)、得意な人も苦手な人もいます。春原未来はこれがものすごくうまい人で、痴女ビデオでは流れるようにわいせつ語を駆使してM男を責めまくるのですが、ここの場面では、とにかく相手をいたわる言葉を発し続けるんです。彼女がここで目指す艶技は、「心のつながりと触れ合いを表現するもの」だということがわかります。
タートル今田の奮闘に、すっぴんの顔を歪ませて髪をぐしゃぐしゃに振り乱し、叫び声を挙げて(隣の部屋どころか、前の道路を走っているクルマの運転手にまで聞こえそうなレベル)何度となくエクスタシーを迎えた春原は「私の身体を好きなように使って。私のことはいいから、自分が気持ちよくなることだけ考えて」「私なんかのために、そんなに疲れさせちゃ悪いもん」と、苦しい呼吸の中で告げます。
でも、今田は「この旅で俺はずっと頼りなかったから、せめて最後に未来ちゃんを気持ちよくさせてあげたいんだ」と、そこからさらに激しく彼女を責めたてるんですね。春原のよがり声も、言葉にならないうわごとになっていくので、AV初心者ならちょっと引くかもしれません。でも、そんな状態になりながらも、春原未来は触れ合いをずっと求め続け、今田監督が上体を起こした姿勢(女優の身体をよく映すため、AVでよく用いられる体勢)を取ると「行かないで、遠くに行かないで」と、手を伸ばして相手の身体を掴もうとしながら、必死で言うのです。この辺はもう、死ぬほどエロいうえに胸がきゅーんとなりますよ、確実に。キスもべったりとはせず、唇を軽く触れあわせるのを何度も繰り返すので、いちゃラブ感が余計に増すことになっています。



そして、彼女の凄艶な姿を充分カメラにおさめたタートル今田監督は、「そろそろ俺もイクよ」と、フィニッシュに入ることを告げます。
すると、春原未来のよがり声に嗚咽が混じり始め、やがて彼女は涙を流しながら、幼児のように「うわあーん」と大きな声で号泣するのです。
今田が「どうして泣くの」と聞くと、春原は「わかんない。けど、終わっちゃうって思ったら……」と泣きながら言うんですよ。
こんなこと言われたら、男だったらもう心臓をぎゅーっと握りつぶされるようなもんじゃないですか。

(イメージ映像)


オレもここで、彼女といっしょに涙が出ましたよ、ええ。涙以外のものも、ここで出すのがタイミング的にいいんじゃないかな。


こうして、2泊3日+αの旅は終わり、タートル今田と春原未来はそれぞれの日常へと帰っていきます。彼女をクルマで送っていき、握手をして、唇をさっと合わせて別れるふたり。


AV女優と男優は、けっして恋人同士ではないけど、ビジネス上のパートナーであり、いい作品を撮るための同志であり、そして何より、おたがいに肉体のいちばん弱い部分をさらけ出してつながり合う関係です。春原未来は、そこにも心の交流があるべきだと考えていて、視聴者もそれを見ることで、人と人とのつながりを求めるきっかけになってほしい、と訴えているんですね。

エンディングでは、タートル今田の兄貴分たるカンパニー松尾の『劇場版テレクラキャノンボール2013』でもおなじみのWeekday Sleepersによる、メロウなロックナンバー“ドキュメント”が流れ、この旅のカットバック映像と、「Eros,Thanatos,Travelling」というこの作品を三題噺にまとめたテロップ、そして監督から春原に向けたメッセージが映し出されます。ここはグッとキマった演出です。


「二十なかばで消えてしまいたい、と言っていた君だけど、もしその季節をやり過ごすことができたら、また君と旅に出たいと思っています」というタートル今田監督のメッセージには、ファンも共感することでしょう。


「AV女優なんて汚れた存在だ」「やっぱり二次元が最高」みたいなことを言う人は少なくないけど、春原未来はこの作品でそんな悪口を真っ向から受け止め、そして跳ね返していると思いますね。このビデオで、彼女は常軌を逸した発言で男を困らせ、大食いをすればぽっこり出たおなかをぽんぽんと叩き、男の精液を平気で飲み、大酒で泥酔して男に絡み、小便を漏らし、いびきをかいて眠りこける。すっぴんの地味な顔で、髪の毛をぐちゃぐちゃにして、身の毛もよだつような声を挙げてセックスをする。「可愛いオンナノコ」の幻想なんて粉々に打ち砕くことばかりやってます。でも、そんな彼女が心と身体を全力でぶつけて人と触れ合おうとする姿が、たまらなく可愛らしく、いとおしくなる。「自分には何もない。セックスしか価値がない」と言っていた春原未来ですが、そんな彼女が、ファンに愛の尊さを全力で伝えようとしているその姿は、あまりにも高らかな人間讃歌だ、とオレには見えますね。


オレも40年近く生きてきて、間違いなくモテないほうの人生だったけど、それでも、何人かの女性を愛したことはありました。みんな欠点だらけでした。ある人は大酒飲みで、しかも酔っ払うと決まって誰かに喧嘩をふっかけるので、あちこちの店を出入り禁止になっているタチの悪い酔っ払いだったし、ある人は、デリヘル嬢だったけど客が好みのタイプだと勝手に本番をやっちゃうので店をクビになった、どうしようもない男狂いの尻軽女でした。でもみんな可愛らしくて、優しくて、あったかくて、素敵な人たちばかりだったなあ。お互いにいい思い出ばかりではないし、もう会えない人ばかりだけど、もし言葉をかけることができるなら「ありがとう」と言いたいな、そんな気分にさせてくれる、素敵なビデオでありました。