ワッシュ流クッキング:厚切りウェルダンステーキ

プロレススーパースター列伝』世代にとって、「血のしたたるステーキ」はごちそうの代名詞です。

また、ステーキを焼くときの鉄則は「最初に強火で表面をこんがり焼き、火を弱めて内部にほどよく火を通す」というもの。大藪春彦の『処刑の掟』に出てくる、主人公が
ステーキを焼く場面はコピペとして広く流布されていますが、そこでも「最初に強火で焼く」手法が採用されています。

営業用の大きな冷蔵庫に買ってきた食料の大部分を収めた速見は、帽子とジャケットと靴を脱ぎ、
金魚鉢ほどの大きなグラスに氷とジンと少量のドライ・ヴェルモットと十滴ほどのアンゴラース・
ビタースをぶちこみ、フォークで掻き回した。レモンの皮を放りこむ。
一度に水呑み用グラス三杯分ほどを喉を鳴らせながら飲んだ。
露が浮かんだ大きなカクテル・グラスには、まだ三分の二ほどドライ・マルテーニが残った。
速見はアルコールが回ってくると共に猛然と食欲が起こってくるのを覚えた。
テンダーロインの大きな塊りから一キロほどヘンケルの牛刀で切り取り、塩と荒挽きのブラック・
ペッパーを振った。
玉ネギを二個ミジン切りにする。ガス・レンジに大きなフライパンを掛けてサラダ油を流しこむ。
煙抜きのファンを廻した。やがて、オイルが煙をあげはじめた。速見はそこに五十グラムほどの
牛脂を放りこんだ。菜箸で掻き廻す。
牛脂は焦げながら溶けた。脂がはぜ、速見のシュッティング・グラスに飛び散る。フライパンの
まわりからときどき炎があがった。
速見は一キロのテンダーロインをフライパンに入れた。にぎやかな音と共に、脂はさらに飛んだ。
ビーフの肉汁があまり逃げないように、三十秒ほどで速見は肉を引っくり返し、高熱で両面を硬化させた。
また三十秒ほど待ってガスを中火にし、買ってきてあったポテト・サラダに玉ねぎのミジン切りの
一個分を混ぜた。
ミディアムに焼いたステーキを大皿に移し、その脇にポテト・サラダを盛りあげる。フライパンに
残った牛脂と肉汁のグレーヴィに残りの玉ネギのミジン切りを放りこんで掻き回し、キツネ色に焦がした。
そこにショーユと砂糖を入れて沸騰させ、日本酒を一合ほどぶちこんだ。
そうやって作ったグレーヴィ・ソースを焼けたステーキの上から流し、テーブルに運ぶ。
まだ中心部にわずかに血が残るステーキを、ナイフとフォークでいそがしく使って貪り食う。ときどき、
ポテト・サラダで口の中の脂を取る。

処刑の掟 (角川文庫 緑 362-18)

処刑の掟 (角川文庫 緑 362-18)

ことほどさように、「血がしたたる」「まず強火で焼く」ことを身上としてきたステーキですが、ここでその常識を覆す試みに挑戦してみます。


厚切りステーキは、弱火でじっくり中まで火を通したほうがうまい。


というわけで、今日は分厚いステーキをわしわし食うことにします。写真が汚い、というのはワスの腕のせいですのでご容赦ください。


本日は、アメリカ産のブラックアンガスビーフ、1ポンド(450g)で税抜880円というお得な商品を求めてまいりました。
で、包丁でもってこいつの赤身と脂身の間にあるスジを切り、表面に切り込みを入れます。

オリーブオイルとみじん切りのにんにく(瓶詰めで売っている)を表面にまぶし、常温で1時間ほど置いておきます。

1時間たったら、焼く直前に塩こしょうした肉を、まだ熱していないフライパンに乗せます。

肉をフライパンに乗せてからコンロに火をつけ(※ここが重要)、弱火でじっくり温めます。

3分ぐらいするとジュージューいいはじめますが、根気よく、側面の3分の1から半分ぐらいが白っぽく変色するまで待ちます。

だいたい7分〜10分ぐらい焼いて、ひっくり返します。

また5分ぐらい弱火で焼いてから、火を強めて表面をこんがり焼きます。

ひっくり返して両面をこんがり焼いたら火からおろし、

肉をアルミホイルで包んで10分ほど休ませます。

10分後に開封し、切ってみると中はこんな感じ。もうちょっと赤くてもよかったかな。

切り分けた肉をお皿に盛りつけて、粗おろしのわさびを添えればできあがり。肝心の完成写真があんまりうまそうに撮れなかった。

金印肉用きざみわさび 30g

金印肉用きざみわさび 30g


ポイントは、肉を常温に戻すこと、肉をフライパンに乗せてから火をつけること、焼いてからホイルに包んで10分待つこと。これで、肉が急激に縮むのを防止できるし、味が落ち着いて食べやすくなります。
味付けは、シンプルに醤油をかけるだけでもいいし、赤身肉なのでバターを乗せて脂分を補充してもいい。凝ったソースがいい人はお好みでどうぞ。「お口でとろけそうにやわらかーい」というわけにはいきませんが、適度な噛み応えがしっかりありつつ、肉の旨味は存分に味わえます。厚切り肉が手に入ったら、いちどお試しください。