ワッシュ流文章術・初級編

はてなブックマークを見ていると、よく「文章の書き方」を解説するエントリが、多数のブクマを集めています。でもたいていは、以前に多数のブックマークを集めたエントリのまとめだったりするんですけどね。


そんな中で、今日はこんなエントリを見つけました。
誰でも素敵な文章が書ける秘訣!→文章に盛り込む魔法の文章術「5W1H」 : Blogで本を紹介しちゃいます。
文章に5W1Hを盛り込み、かつ「なぜ」の部分を掘り下げていくことで、文章を作っていくという手法を解説しています。自力で書いているだけ好感が持てます。


しかし、それでできた文章が、

今日は友達と2人で、六本木ヒルズのイタリアンレストランに行きました。料理がすごく美味しかったです。松坂牛のステーキが出てきました。なぜお肉だったかというと、お魚とお肉という選択肢があって、以前から気になっていたお口の中でとろけるお肉を食べたかったからです。なぜお肉が柔らかかったのか?シェフに聞いたら、焼く前にお肉を叩いているそうです。この記事を書こうかと思った理由はiPhoneで撮った写真がうまく撮れたからからです。はぁ〜また行ってみたいな。

これはオチですよね? ぜんぜん素敵な文章になってないじゃないですか。


これを、もう少し読み手を引き付ける文章にするとしたら、ぼくならこう書きます。

今日は、以前から気になっていた松坂牛のステーキを食べたかったので、六本木ヒルズのイタリアンレストランに行きました。お待ちかねのお肉は、口の中でとろける柔らかさです。いっしょに行った友達と二人で、大感激しました。シェフに聞いてみたら、焼く前にお肉を叩いているそうです。それであんなに柔らかいんですね。はぁ〜また行ってみたいな。


文章の中で伝えたいことを明確にしましょう。この場合、伝えるべきことはまず第一に肉の柔らかさです。それを伝えるためには、「柔らかいステーキ」を文章の背骨として一本通しておくといいです。前の文章では、何がいちばん伝えたいことなのか、あっちこっちに趣旨が飛んでいてわかりづらくなっています。「素敵な写真が撮れたのでこの記事を書きました」というのは不要な文章です。写真が素敵かどうかは見た人が判断することです。


「素敵な写真が撮れた」ことを背骨にしたいのであれば、まず冒頭に「素敵な写真を求めて」食事に行った、ということを書いておきましょう。この場合、ステーキの柔らかさはそれほど重要にはなりませんので、「柔らかかった」と書けば充分です。それより、肉の焼き目や盛り付けの美しさがわかるように文章を組み立てます。


味を伝えたいのであれば、「美味しかったです」ではいけません。どんな味でどう美味しいのか、そこを書くのが腕の見せどころです。
肉の焼き加減はレアかウェルダンか、フライパン焼きか鉄板焼きか炭火焼きか、ガーリックの香りがしたのか胡椒が利いていたのか、フランベしたブランデーの香ばしい匂いがしたのか、書くべきことはたくさんあります。


誰かと一緒に食事をしたことが重要なのであれば、最初に、一緒に行った人のことを書きましょう。そして最後にも、一緒に行った人の様子を書いておくと、文章に背骨が通ります。


文の最初と最後で、話の中心にしたい素材に触れておくと、文章の背骨が通りやすくなります。文章の順番には気を付けてください。


一文の中では、時系列はなるべく時間順にしましょう。前の例文だと、レストランに行ったというところから、次の文で「以前から気になっていた」とさかのぼってしまいます。これでは読者は混乱します。
「なぜかというと」→「○○だからです」というのも、小学生の作文じみていていけません。「私は○○しました」→「すると××になりました」→「それは△△だったからです」というのは書き方の基本ですが、そのまま書くと非常に稚拙な文章に見えてしまいます。

エースの系譜

エースの系譜

(↑そういう文章の典型が見られる本)



また、日本語では主語を省略しても意味が通じることが多いです。文章の中に「私は」「私が」と何度も出てくるようであれば、外せるところは外すようにすると良いです。主語以外でも、一つの文の中に同じ単語が連続して出てくるとクドくなります。二回目以降は表現を変えるようにしましょう。


句読点の打ち方も重要です。点を打つ場所によって文章の意味は変わります。「私は彼と闘った」と書いた場合、「彼」が闘いの相手なのか、それとも一緒に闘ったパートナーなのかわかりません。前者の場合は「私は、彼と闘った」。後者なら「私は彼と、闘った」とすれば意味が通りやすくなります。また、句読点は文章のリズムという点でも重要です。書いた文章をいちど声に出して読んでみて、息継ぎをする箇所に点を打ってみましょう。ぐっと読みやすくなるはずです。


語尾を散らすことも、文章をうまく見せるために有効な手段です。「○○でした」「○○しました」「○○になりました」「○○だと思いました」というふうに語尾が全部「〜た」だったりすると、稚拙に見えます。この場合「○○でした」「○○します」「○○になりました」「○○だと思われます」というふうに語尾を散らすと、書きなれた感じになります。とくに、同じ母音が連続しないように注意しましょう。


パソコンを使って文章を書くと、漢字が多くなりがちです。でも、読みやすさというのはぱっと見たときのバランスで決まります。「私は文章が上手く書け無い為苦労して来た」と書くよりは、ひらがなに開いて「私は文章がうまく書けないため苦労してきた」とした方が読みやすくなります。
漢字が続かないようにすることも必要です。「今日本のことを考えた」と書いてしまうと、「今、日本のことを考えた」のか「今日、本のことを考えた」なのかわかりません。「いま日本の」「きょう本の」と書くといちばんわかりやすいです。「この先生きのこるには」というAAがありますが、このような誤読を生まないように心がけましょう。


それと、語尾を体言止めにすると文章を強く印象づけることができますが、多すぎるとやはりクドくなります。体言止めは最小限。


まとめると、

  • 文章の背骨が通っていること
  • 説明よりも描写を心がけること
  • なくても意味の通じる語は削ること
  • 句読点の位置が適切であること
  • 語尾の母音を散らすこと
  • 漢字とかなのバランスに注意すること
  • 体言止めを多用しないこと
  • きのこらないこと

この辺を注意すると、読みやすく、読者を引き付ける文章を書くことができます。


何より大事なのは、

  • 何度も推敲すること

です。何度も音読して、欠点を見つけるようにしましょう。