デスマッチ!! 甦れ我等のマジンガーZ!!

そうそう、週刊漫画ゴラクに連載されている『激マン!』マジンガーZ篇が、いきなり最終回だったのでびっくりしたんです。


日本を代表する漫画家のひとりである永井豪が、ヒット作を執筆した当時を回想する『激マン!』シリーズの、デビルマン篇に継ぐ第2部。デビルマン篇では、ギャグ漫画家からストーリー漫画家への脱皮をはかる「ながい激」(顔が本人と似てないためか仮名)が苦悩しつつ、あの壮絶な最終回を描き切るまでを漫画化していましたが、マジンガー篇ではまた顔が変わり「ナガイ激」という別人扱いで(それぐらい気持ちの切り替えが早い、という意味らしい)、悩むことなく「いんだよ細けえことは」精神で乗り切っていく姿を描いています。


マジンガーZ』はザックリ感のある作品ではありますが、その誕生と、少年ジャンプでの連載打ち切りに至る経緯は「大人の事情」に満ち溢れていて、主人公をシリアスな性格にすると重苦しくなってしまう、という配慮があったのかもしれません。


史上初のスーパーロボットである『マジンガーZ』は、渋滞に巻き込まれた永井豪が「車から足が生えて、前の車をまたいで行ければいいのに」と思ったことから、人間が乗り込んで操縦する巨大ロボットという着想を得たというエピソードは有名ですが、そこから作品誕生に至る経緯が、なかなか一筋縄ではいかない。

  • あちこちの漫画雑誌に企画を持ち込むものの「ロボット漫画なんて古い」(連載が始まった1972年当時、ロボット漫画といえば『鉄人28号』や『鉄腕アトム』であり、一世代前のヒット作という印象があった)とボツを食らう
  • 漫画でなくてもいい、と企画を持ち込んだ東映動画が興味を示し、まずアニメの企画が動き出す
  • しかし東映動画からアニメ放送の条件として「週刊少年誌で漫画を連載すること」を要望される
  • 当時「少年マガジン」にも「少年サンデー」にも「少年チャンピオン」にも連載を持っていたため、やむなく、『ハレンチ学園』を無理にやめたばかりの「少年ジャンプ」に頭を下げて連載開始
  • めでたくアニメも漫画も大好評となり、キャラクター商品も大ヒット
  • しかし、さらにマーチャンダイズ展開を広げるため、東映動画から「幼年向けテレビ雑誌での漫画連載」を要望される
  • ジャンプ編集部に「他誌でも連載したい」と言ったところ、長野規編集長が激怒しジャンプでの連載は打ち切り
  • 以後は「テレビマガジン」に掲載される


ここで『激マン! マジンガーZ篇』は「第一部完」となるのでありました。制作秘話と並行して書かれる当時の絵をリファインしたバージョンでは、グレートマジンガーマジンカイザーも含む大量の「マジンガー軍団」が現れ、主人公の兜甲児が、光の中で謎の美女から「あなたを待っていました」と迎えられる場面で終わり。現行版ともアニメともまったく違う!

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永井豪は、数々の名作を生み出してきましたが風呂敷を畳むのが苦手な人で、ちゃんとオチをつけて完結した作品のほうが少ないぐらいです。『デビルマン』シリーズはそれでも比較的まとまった作品が多いですが、『マジンガー』シリーズは何度もリメイクされながら、一度としてちゃんと完結したことがありません。今回の『激マン!』もその例外ではなかったようです。


なお、次回から「キューティーハニー篇」が始まるとのこと。たぶん、西内まりや主演の映画版とタイアップしてのことでしょうけど、このままあっちゃこっちゃ行くのかなぁ。すでに『バイオレンスジャック篇』をやることは示唆されていますが、ほかにも、石川賢との思い出をたっぷり書く『ゲッターロボ篇』とか、堀辺正志や山田恵一との交流にスポットライトを当てる『骨法・獣神ライガ―篇』とか読みたいなあ。