見取り図あれこれ

ライトノベルは『クラッシャージョウ』以来読んでないワスですけど、アニメや実写映画にもなって人気の『僕は友達が少ない』が話題になっているのを目にしたんです。


僕は友達が少ない10巻 「夜空復活。残念系も最加速―!? 待望のクリスマス!?」 - アキバBlog 僕は友達が少ない10巻 「夜空復活。残念系も最加速―!? 待望のクリスマス!?」 - アキバBlog

この10巻(シリーズ11弾)が、ストーリー上は完結巻だとのこと。今回は、人気の挿絵画家であるブリキの絵が、巻頭の口絵だけで本文中には収録されていないというのも話題になっているようですが、まぁその辺はファンのお歴々がああだこうだ議論するでしょうから、読んだことないワスとしてはスルーしておくしかないッスね。
それより気になったのは、この画像ッス。



どうやら、トランプゲームをやる場面の説明のようで、ここからゲームの展開を描くのに便利な見取り図だとは思うのですが、これについて2ちゃんねる方面ではこんな反応が見られます。


【画像】はがない作者ついに文章でなく図で説明するようになるwwwww:わんこーる速報! 【画像】はがない作者ついに文章でなく図で説明するようになるwwwww:わんこーる速報!
はがない作者がついに小説家としてのプライドを捨てたwwwwwww - You速報 はがない作者がついに小説家としてのプライドを捨てたwwwwwww - You速報
このスレタイはひどいなぁ。まとめの中でも指摘されてますが、これ推理小説だったら常識の手法じゃないですか。

綾辻行人の『十角館の殺人』に始まる館シリーズは「新本格ミステリ」のムーヴメントを生んだとされており、その影響から新本格の作品にはよく建物の見取り図が出てくる傾向がありますが、これは戦前から本格ミステリでよく使われる手法です。
東京帝大法学部卒の元検事で子爵という、上流階級の超エリートだった浜尾四郎の代表作『殺人鬼』には、部屋の見取り図、土地と建物の見取り図、間取りの図、浴槽に沈んでいた死体の詳細な図という4点もの図が出てきます。


青空文庫でも読めます→http://www.aozora.gr.jp/cards/000289/files/1799_19399.html


この絵がね、ヘンテコなんだまた。

これじゃ部屋に入れないよ!
浜尾四郎は法律のプロであり、法と人間というテーマを見据える目は素晴らしい作家でしたが、図面の書き方はシロウト同然だったということですね。作者の分身であるワトソン役の記述者が、地の文で「私は図を描くのは苦手」と何度も書いているあたりも味わい深い。まぁこの当時は、編集者もまだ図面に不慣れだったんでしょうし。それに『殺人鬼』が連載されたのは専門誌じゃなく地方新聞だったので、これがもし「新青年」とか「ぷろふいる」あたりだったら違ってたかもしれませんけどね。


ところで、この「見取り図」という手法は、どこから生まれたんでしょうね。
ぼくが知る限りでは、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』(1907年連載)に出てくるあたりが元祖じゃないかと思うんですが、それより古い作品がある、とご存じの方はご指摘くだされば幸いです。

黄色い部屋の謎 (創元推理文庫)

黄色い部屋の謎 (創元推理文庫)