なめくじに聞いてみろ

今年は、10月27日から11月9日まで読書週間です。

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というわけで、ここ数日このブログの内容が少ないのは、本ばっかり読んでるからだということにしておいてください。決してネタがないわけではない、というふうにご理解いただきたいものだと。


んで、何を読んでるのかというと、やっぱり昔ふうの本格ミステリ関連で。

黄色い部屋はいかに改装されたか?

黄色い部屋はいかに改装されたか?

都筑道夫先生が、昭和45年にハヤカワ・ミステリマガジンで連載した評論エッセイです。


最近ノックスの十戒ヴァン・ダインの二十則が話題になり、島田荘司先生にも新本格の七則というのがあるそうですが、都筑先生にも本格推理の6箇条がありました。

  1. 本題の事件に入るのは、早いに越したことはない。
  2. その事件はかならずしも殺人である必要はないが、不可解であればあるほどいい。ただし、その不可解さは、たとえば幽霊の殺人といった現象面にはとどまらない。一見、普通の事件が論理的矛盾の発見によって、不可解さを帯びてくるといった知的なものが、むしろのぞましい。
  3. 探偵役の人物は、アマチャーでもプロフェッショナルでもかまわないが、最初から明確に存在することが望ましい。しかし、ワトスン役が犯人であったり、ホームズ役が犯人であったり、警察官が犯人であったりすることを、いちがいに否定はしない。
  4. その探偵役が直感タイプであれ、分析タイプであれ、事件の解決は論理的でなければならない。しかし、その解決が現実的な(たとえば法律的な)重みを持つ必要はない。必要なのは、真犯人の暴露であって、逮捕ではないということだ。
  5. 特殊な専門知識、たとえば最新の犯罪捜査科学なぞが、犯人推定の根拠の一部になることは、歓迎しない。それが犯人指摘の論理とは無関係であっても、たとえば常識では採取不可能な場所から、最新技術によって採取された指紋が、逮捕のきめ手となる、といったような場合でも、歓迎しない。論理の魔術に酔いたいから読むのであって、科学の進歩を讃美したくて、読むのではないから。
  6. したがって、背景が現代である場合、専門家の捜査活動の描写は、警察不在を思わせないていどに簡略であってもらいたい。といって、登場する警察官が愚かものばかり、といった感じのものも、閉口する。

で、これらの条件によく合致する、都筑先生の理想の推理作家が、国名シリーズを書いていたころのエラリー・クイーンだということなんですね。

ローマ帽子の謎 (創元推理文庫 104-5)

ローマ帽子の謎 (創元推理文庫 104-5)

このエッセイが連載されたハヤカワ・ミステリマガジンは、もとはEQMMエラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン)日本版として創刊されたもので、都筑先生が初代編集長だったこともなんか関係あるんでしょうか。