漂えど沈まず

コミック アース・スターで連載されている女子プロレス漫画『世界でいちばん強くなりたい!』が、10月からアニメ放送されるとか。

コミックナタリー - 女子プロレスアニメ「せかつよ」に竹達彩奈&阿澄佳奈 コミックナタリー - 女子プロレスアニメ「せかつよ」に竹達彩奈&阿澄佳奈

10月から放送が開始される、ESE・夏木きよひと原作によるTVアニメ「世界でいちばん強くなりたい!」のメインキャストが発表された。


国民的アイドルグループのセンターボーカルから女子プロレスに転身するヒロイン・萩原さくらは竹達彩奈が、さくらのライバルであり親友でもある宮澤エレナは阿澄佳奈が演じる。またキャスト発表に合わせて、アニメビジュアルも公開された。

(左がヒロイン、右がライバル)


世界でいちばん強くなりたい!」は、月刊コミック アース・スターアース・スター エンターテイメント)にて連載中。アイドルからプロレスラーに転身したさくらを中心に、女同士の真剣勝負が描かれる。

主人公のコスチュームを見てもわかるように、お色気を前面に出した内容で、このテの漫画では定番となる恥ずかし固めもフィーチュアされています。
(1話・2話はこちらで閲覧できます)


女子プロレスを題材とした漫画では、『ここが噂のエル・パラシオ』も、お色気を前面に出して実写化されています。

ここが噂のエル・パラシオDVD-BOX(5枚組)

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この両方に共通しているのが、プロレスを、競技的な意味での真剣勝負として描いていることなんですよね。


現代(とくに「高橋本」以降の時代)において、プロレスを題材とする漫画、小説、映画など、どのジャンルでも「プロレスは演出されたショーである」という前提のもとに描くのがふつうです。

新・餓狼伝 巻ノ二 拳神皇帝編 (FUTABA NOVELS)

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プロレスメン (ヤンマガKCスペシャル)

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レスラー [DVD]

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その世界観の中で、格闘競技とは違った強さや、パフォーマーとしての凄味、そして色んな意味でのズンドコ感を描くのが、今の主流になっています。
最近では、猿渡哲也グランドジャンプで連載を始めたばかりの『ロックアップ』がいい味です。読み切りとして同誌に掲載された『漂えど沈まず』を連載化したもので、末期がんのレスラーが率いる、潰れる寸前のプロレス団体を舞台にした人情ものです。
(連載3回目まで、試し読みが公開中)
http://grandjump.shueisha.co.jp/original/lockup1/
http://grandjump.shueisha.co.jp/original/lockup2/
http://grandjump.shueisha.co.jp/original/lockup3/
とくに第3話冒頭が完全に『タフ』のセルフパロディになっていて、自分で「格闘クソマンガにあるようなキャラ設定」と言っちゃうあたりが最高。ファンの間では、「いつ鈴木みのるが出てくるのか」が最大の関心事になっていたりします。


しかし、こういう傾向は男子プロレスに限るようで、女子プロレスは、いまだに完全なるファンタジーの世界として描かれることが多いようですね。
まぁ『せかつよ』(公式にこう略される)の場合は、実在の女子プロレス団体であるスターダム(ロッシ―小川が愛川ゆず季のためにでっち上げた設立した団体)とコラボもしているので、ぶっちゃけた内容にはできないという裏事情もあるんでしょうけど。


女子プロレス漫画がお色気を前面に押し出すようになったのも、現実の女子プロレスがそういう路線になったことを反映しているのかもしれませんね。
オレが知ってる女子プロレスって、もっとハードでジェンダーを越えたものだったんですけど、逆にあの時代が特別おかしかったということなんでしょうね。歴史的に見れば。

1993年の女子プロレス

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