となりの格闘王

いま30代以上の格闘技ファンにとって、佐竹雅昭はことのほか思い出深い選手です。80年代から90年代にかけて、プロレスでもボクシングでも空手でもない総合格闘技・立ち技格闘技というジャンルが形成されていきました。当初は、前田日明UWFのプロレスラーたちが中心で、他カテゴリーの選手は招かれて出る程度でしたが、プロレス村の外からやってきたスターが佐竹でした。空手家にありがちだった過剰なストイシズムを排し、インタビューでは怪獣やアニメへの愛情を隠さない、天真爛漫な人柄でファンから愛された人物でした。しかし、後年には師匠だった石井和義と反目して暴露本を出したり、怪しげな人材育成ビジネスを始めたりして、往時のファンからすると複雑な思いを抱かざるを得ない活動をしていましたが、このほど自民党から参院選に出馬するとのこと。


【参院選】「空手を五輪種目に」 自民公認の元K−1ファイター佐竹氏 - MSN産経ニュース 【参院選】「空手を五輪種目に」 自民公認の元K−1ファイター佐竹氏 - MSN産経ニュース

 自民党が夏の参院選比例代表で公認した格闘技「K−1」の元選手、佐竹雅昭氏(47)が27日、党本部で記者会見し、礼節を重んじる教育の普及や空手の五輪種目化などに政治家として取り組みたいと語った。立候補の動機は「主宰する人材養成塾で経営者らと武士道を学び、国に貢献したいと思った」と説明した。

 自民党K−1で活躍した知名度などを評価し、今月24日に公認した。

武道と武士道って決して同じモンじゃないんですけど、佐山さんといい佐竹さんといい、こういう勘違いをする人は多いですね。やはり精神的なものを鍛え、国体を復活させる方が先ですよね

佐山原理 新生武道真陰 (BUDO‐RA BOOKS)

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空手の五輪競技化、というのもかなり無理のある話です。


レスリングの五輪競技除外問題は話題になっていますが、ここで、代わりに名乗りを挙げている競技のひとつが空手です。といっても、いま候補になっているのは伝統派のほうであって、佐竹がやっていたフルコンタクト空手ではありません。


そもそもオリンピック競技には、世界的な統括団体が必要です。ボクシングなら国際ボクシング協会AIBA、柔道なら国際柔道連盟IJF、レスリングなら国際レスリング連盟FILAというふうに。いま名乗りを挙げている空手団体は伝統派のWKFですが、こちらもITKFとの抗争があって統一団体とは言い難い。フルコンなら言わずもがなです。

まっすぐに蹴る

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(アカン)


いちおうフルコン業界のほうでも、オリンピック競技化を目指して「全日本フルコンタクト空手道連盟」が発足しています。自民党河村建夫議員を会長に迎え、新極真会緑健児が中心となって、極真連合会芦原会館など各流派を一本にまとめたのですが、肝心の松井派極真会館正道会館が参加していないので、現実はかなり厳しいと言わざるを得ないですね。


http://efight.jp/news-20130318_13679



もうこうなったら、無理に空手を五輪競技にするより、空手家をテコンドーの大会に乱入させてオリンピック出場を目指せばいいんじゃないですかね。
戦前は日本にレスリングの選手がいなかったので、柔道家を五輪レスリングに出場させていたぐらいなんですから、空手家がテコンドーをやったっておかしくはないでしょう。

日本レスリングの物語

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もういっそのこと、ボクシングもレスリングも柔道もテコンドーも空手も武術太極拳も全部いっしょにして、「格闘技」にしちゃえばいいんですよ。ごちゃごちゃ言わんと、誰が一番強いか決めたらええんや!というわけで、佐竹とは縁の深いアキラ兄さんが出たところで今日のエントリはお開き。