お前は俺を殺す気か

シギサワカヤの『お前は俺を殺す気か』1巻を読んだッス。

お前は俺を殺す気か 1

お前は俺を殺す気か 1

まず、本屋で探すのが大変。白泉社の「楽園」に連載された作品なんですが、少女漫画でもレディースコミックでもない微妙な立ち位置なので、本屋さんも置き場に困るカテゴリーの本です。
タイトルからは、どことなく上島竜兵のかほりが漂ってきますが、内容は実にめんどくさい&シビアな恋愛もの(とも言い切れない何か)です。
人生他力本願 (14歳の世渡り術)

人生他力本願 (14歳の世渡り術)

主人公は、デザイナーの芝。仕事が忙しくなってきたので、個人事務所に社員を採用します。やってきたのが、橋本雪江というまさに氷のような美女。仕事では有能で重宝しますが、とげとげしい物腰でとっつきづらい人物です。しかし、芝の才能には強い興味を抱いており、歓迎会と称して飲みにいったとき、あっさりと肉体関係を持ってしまいます。


翌日、芝は職場で雪江と会うものの、どこか違和感を持ちます。指先の形が違うことに気付いた芝は「お前は何だ」と問い詰め、彼女は「妹の雨音です」と白状するのでした。
一卵性双生児が交代で出勤していた(一卵性双生児でも指紋は違う)、というネタなんですが、この秘密は第1話ですぐに明かされます。ここから、芝はこの双生児の深い共依存に巻き込まれていきます。


2人とも同じように有能だったため、芝は姉妹を両方とも採用するのですが、冷たくギスギスしたやり取りにヒヤヒヤさせられてばかり。
あげく、「姉と同じようにしてください」と迫られ、妹とも関係を持つ始末。同じ顔をした違う女と関係するというのは、なかなか倒錯した官能性があります。作画的には、描き分ける手間も省けていいことづくめです。


この姉妹はとても深く依存し合っており、夜はお互い抱き合って絡み合ってでないと眠れないというから「あんたたちおかしいよ」と言いたくなるところですが、芝と関係を持ったことでこの関係性がどう変わっていくか、がこれからの見どころということでしょう。


あと、主人公の男が、関係を持った部下のことをすごく無造作に「お前」と呼ぶのがぼくとしてはちょっとカンに触るところなんですが、女性作家の描く男性って往々にしてすごく無神経だったりしますよね。おそらく、女性たちから見るとわれわれ男子はそのぐらいガサツに映っている、ということなんでしょう。


ぼくがふだん読んでいるような漫画に出てくる一卵性双生児というと、宮沢家のおじさんたちが思い浮かぶところですが、練り歩きおじさんとこの双子では、だいぶ趣きが異なりますね。

タフ外伝 OTON-おとん- 2 (ヤングジャンプコミックス)

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あの双子も、一人の女をめぐって争っていましたが結局は和解しましたからねぇ。ちなみに、ガサツな格闘オヤジではありますが、静虎は女性を「お前」なんてよう呼びません。


ぼくももう38歳になり、完膚なきまでに中年のおじさんです。色恋沙汰からはもう卒業してもいい年齢だし、こういう男女の機微を描いた漫画に付き合うのもだいぶしんどくなってきましたが、かといって猿渡哲也ばっかり読んでたらどんどん女性の気持ちがわからなくなるからなぁ。

GOKUSAI 2 (ヤングジャンプコミックス)

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