格闘漫画いまむかし

90年代から現在まで、漫画界を代表してきた格闘技漫画といえば

ということになるでしょうか。これらの作品はそれぞれに紆余曲折を経て、前人未到の境地に達しています。


『バキ』は、作者の「読者の予想を裏切り、期待は裏切らない」というポリシーのもとにひたすら読者の予想のはるか斜め上を飛翔し続け、いよいよ刃牙と勇次郎が戦うかと思いきやなぜかオーガが常識的なことをしゃべり始めるという超シュールな展開。


http://blog.livedoor.jp/hisabisaniwarota/archives/51949921.html

範馬刃牙 27 (少年チャンピオン・コミックス)

範馬刃牙 27 (少年チャンピオン・コミックス)

もう、勇次郎は範馬雄山に改名するべきなんじゃないでしょうか。あっちの親子も和解したことだし。


『TOUGH』は、ガルシアや鬼龍らがチート過ぎる強さを発揮してこのまま強さのインフレを起こすのかと思いきや、鬼龍も兄の尊鷹もいつの間にか普通にキー坊の伯父さんになってすっかりファミリーと化し、敵キャラもどんどん地味になっていきました。ファントム・ジョーなんて単なる肉体労働者のおっさんにしか見えなかったし、続いて登場した幽玄死天王もまったく華のないおっさん軍団。その上に君臨する当主・日下部覚悟も「武道は精神修養と健康増進に役立つ」なんて言い出す始末です。ちょっと前までは、昏睡状態にあったオトンの治療費を稼ぐためにヤクザ主催の地下ファイトをやっていたキー坊なのに、今はなぜか保冷車の中で市役所勤務のデブと戦っているのだから、このスケールダウンっぷりはただごとではありません。バトル漫画に強さのインフレはつきものですが、戦いのスケールがデフレを起こすってのは珍しいですね。

TOUGH 31 (ヤングジャンプコミックス)

TOUGH 31 (ヤングジャンプコミックス)



さて、そこで『修羅の門』ですよ。

月刊 少年マガジン 2011年 04月号 [雑誌]

月刊 少年マガジン 2011年 04月号 [雑誌]

中断を経て再開されてからは変化球エピソードの連続で、陸奥と舞子がついに結ばれたり(直接の描写はないが、一緒の部屋でひと晩過ごしたように描かれている)新たな女性キャラ(『あしたのジョー』でいう白木葉子みたいな女プロモーター)が出てきたものの川原正敏史上初の非ツンデレヒロインだったりしていますが、今月号では、圓明流を使う謎のマスクマン”唵”の正体がついに明らかに。


その正体は……なんと毅波秀明だった!


…誰?


陸奥本人すら覚えていませんでしたが、『修羅の門』第一話で神武館の本部に道場破りを仕掛け、陸奥にあっさり撃退されたかませ犬です。そんなキャラ誰も覚えてねえよ!


ここでこんなキャラを持ってくるとはなぁ。「陸奥圓明流はもう謎の武術ではない」ってことの表れなんでしょうけど、それにしたってねぇ。『美味しんぼ』でいえば、「究極のメニュー」を始めるにあたってフォアグラをすすめ、山岡に「日本の食通とたてまつられている人間はこっけいだねえ!」と言われた人たちが今になって逆襲してくるようなモンですよ。

美味しんぼ (1) (ビッグコミックス)

美味しんぼ (1) (ビッグコミックス)


そういえば、『はじめの一歩』でも一歩のデビュー戦の相手が再登場してきたりしたので、「極初期キャラの再登場」が格闘漫画で流行るのかもしれませんね。『TOUGH』にもアシュラとか出てきたりして。(あの漫画はキャラクターを完全な使い捨てにするんだよなぁ)


こち亀』だったら、ときどき初期キャラクターを出すサービスもあるんですけどね。戸塚とか犬とかタバコ屋の洋子とか。『修羅の門』ももうそういう目で見るべきなんでしょうか。