世界統一亀田選手権

本日、大阪市ボディメーカーコロシアムにてWBA世界統一亀田選手権試合があり、日本の亀田興毅が、メキシコの亀田ことウーゴ・ルイスを下し、真の亀田に認定されました。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121204-00000105-spnannex-fight

興毅、5度目の防衛に成功!“最強挑戦者”に判定勝ち

 プロボクシングの亀田祭りが4日、大阪市ボディメーカーコロシアムで行われ、メーンのWBA世界バンタム級王座統一戦では正規王者の亀田興毅(26=亀田)が暫定王者ウーゴ・ルイス(26=メキシコ)を判定2―1で下し、5度目の防衛に成功した。


 4月に行われた4度目の防衛戦で左拳を骨折して以来、8カ月ぶりの復帰戦。興毅が休養中に暫定王者となり4度防衛したルイスに対し、距離を保ち、持ち前のスピードを生かしたボクシングで確実にポイントを稼いだ。

 過去4度の防衛戦ではランキングの低い相手との対戦だったが、自身初の指名試合で32戦31勝28KOの“最強挑戦者”を退け、その実力を証明した。これで興毅の戦績は30戦29勝(17KO)1敗となった。日本のジム所属の男子現役世界王者は5人のまま。

 次男の大毅(23)は55キロ契約でジェームス・モコギンタ(21=インドネシア)と対戦し、判定3―0で勝利。三男の和毅(21)は同じく55キロ契約でレイ・ラスピニャス(26=フィリピン)と対戦し、4回KO勝ちした。

スポーツ新聞やTBSテレビでは、この試合をボクシング世界タイトルマッチと称していましたが、ボクシングファンは誰もこの試合が世界戦に値するとは思っていません。


そもそもWBAは「暫定王者」「休養王者」「スーパー王者」など同階級に王者を乱立させることで、ファンの間では悪名高い団体です。ウーゴ・ルイスは「暫定王者」に認定されていて、TBSは「チャンピオンは2人いらない」「暫定王者は鏡の中でしか輝けない」などと煽っていましたが、実はルイスはすでにWBA暫定王座から外れていました。
この試合で、どちらが勝っても暫定王座が消滅することが確定しているため、WBAはルイスから暫定王座を剥奪して、先月、新たに王座決定戦をやりました。
ところが、ランキング2位と3位の選手によるこの暫定王座決定戦は、王座を乱立したいWBAの思惑どおりには行かず結果はドローに終わり、新たな暫定王者は生まれませんでした。
だからといってルイスに暫定王座を返すわけにもいかず、ウーゴ・ルイスはランキング1位の指名挑戦者として来日したのですが、スポーツ紙でもテレビでも「暫定王者」と報じています。商売優先のためにウソをついた、といっても過言ではないでしょう。


そもそも、「チャンピオンは2人いらない、亀田が正規王者だ」と煽っていても、その上にスーパー王者のアンセルモ・モレノが君臨していることには、決して触れませんしね。


で、ルイスの戦績ですが、数字を見ると32戦31勝28KOですから、かなりの強豪のように思えます。
しかし、その戦績をBoxRec(ボクサーの戦績を記録するサイト)でよく見てみると、


http://boxrec.com/list_bouts.php?human_id=380401&cat=boxer


デビューしてから24戦目までは、2人を除いて大きく負け越している選手とばかり対戦していて、しかも0勝のボクサーがのべ13人(同じ相手と2回戦っているので、人数は12人)もいます。
ルイスは父親がトレーナー、二人の兄もボクサーとあって「メキシコの亀田」なんていわれています。それは家庭環境だけじゃなく、かませ犬とばかり対戦してきたインスタント・チャンピオンであるところも共通しているんですね。テレビではそこには触れないけど。


以前、wowowエキサイトマッチでルイスの試合を観たことがありますが、戦績のわりに大したことないなという印象がありました。
んで今日の試合ですが、以前に観たときに増してルイスの動きが悪い。フットワークに軽さはなく、身体の芯が常にヨロけていて、手打ちのパンチを出すたびに上体が泳ぐ。明らかに調整失敗です。「こんなパンチで28人もKOしてきたの?」と疑いたくなったぐらいです。


亀田はいつもの亀田です。ガードを固めて歩き回り、時おり手を前後に動かす。マニー・パッキャオの真似らしい「ノーモーションの左」を出すとTBSのアナウンサーが叫ぶ。この繰り返しです。判定に持ち込めば絶対に勝てることを理解しているので、迷いはありません。それでも今回は、ルイスのパンチがあまりにひどすぎるので(亀田が王座についたときのアレクサンドル・ムニョスとどっこいどっこい)亀田のほうがキレよく感じたぐらいでした。


というわけで、今回の「真の亀田世界一決定戦」は大阪の亀田が勝ちました。これで5度目の防衛となり、WBAはスーパー王者アンセルモ・モレノとの対戦を義務付けましたが、亀田はすでに王座返上を表明しているので、強者と戦うリスクを避けることに成功しそうです。


アンセルモ・モレノは、マヤール・モンシュプールやウラジミール・シドレンコ、ビック・ダルチニヤンといった世界的強豪を連破しており、しかもオスカー・デラ・ホーヤゴールデンボーイ・プロモーションに所属しているので、リング内外ともに実力差が歴然です。この試合を避けるのは当然でしょう。


亀田興毅ライトフライ級、フライ級、バンタム級の三階級で戴冠しましたので、おそらくは階級を下げてスーパーフライ級に挑むのでしょう。WBAスーパーフライ級王座には、弟の亀田大毅をフルマークに近い判定で破った(亀田家相手にこの勝ち方は、1ラウンド30秒以内のKO以上に難しい)テーパリット・ゴーキャットジムが君臨しています。テーパリットは大晦日に日本の河野公平と防衛戦を行いますが(テレビ東京にて中継)、これに勝ったらおそらくスーパー王者に格上げして、空位になった正規王座決定戦を行うのでしょう。その際の対戦相手は、現在同級3位にランキングされていて、以前に亀田大毅に判定負けを喫しているデンカオセーン・カオウィチットが有力と予想します。


いくらなんでもそれは汚く考えすぎだって?


それがですね、WBAの情実人事はとどまるところを知らず、大晦日のTBS興行は井岡一翔をメインにしたのはいいのですが、これも無理くり王座決定戦にしてしまったのですよ。


八重樫東との激闘を制しWBA/WBCミニマム級王座を統一した井岡は、階級を上げてWBAライトフライ級王者ローマン・ゴンサレスへの挑戦を表明していたのですが、ゴンサレスが先日の防衛V5でスーパー王者に格上げされたため正規王座が空位となり、そこで井岡が王座決定戦を戦うことに。ゴンサレスはこの3月にノンタイトル戦、4月に防衛戦、10月にノンタイトル戦、11月に防衛戦という殺人的スケジュールで試合をこなしており、井岡の挑戦を受ける状態になかったのは確かですが、それにしてもこういうやり方は井岡の商品価値を傷つけますよ。


先日、TBSの宣伝部がツイッターでこんな宣伝を行い、ちょっとしたブームになりました。


(……きこえますか…きこえますか…視聴者の…みなさん… TBSです… 今… あなたの…心に…直接… 呼びかけています…) - Togetter


晦日はスポーツ番組で紅白やガキの使いに対抗するつもりらしいですが、とにかく世界タイトルマッチにさえすればいいってもんじゃないんだよ。アンタんとこが亀田をプロデュースして、どれだけボクシングの人気を下げたか分かってんの? 井岡まで亀田にするつもりなの?


晦日のボクシング戦争、テレビ東京の興行は内山高志佐藤洋太、河野公平のトリプル世界タイトルマッチ。TBSの興行は井岡一翔、宮崎亮のダブル世界タイトルマッチ。世界王座もずいぶん安売りされたもんです。


ファンが見たいのはボクシングの試合であって、亀田ではない(あれは「亀田」という別の競技である)ということを、いつになったらわかってもらえるんでしょうか。