復興の書店

大宅壮一ノンフィクション賞作家、稲泉連さんの『復興の書店』が発売されています。

復興の書店

復興の書店

東日本大震災で被災した岩手・宮城・福島3県の書店が復興するのを追った、「週刊ポスト」連載記事を書籍化したものです。


津波によって被害を受けた地域の人々が、食料や飲料水、衣類などを求めるのと同じレベルで本を求めていたことがよくわかります。避難所にいる人たちに読ませるために
雑誌やコミックを何冊も買う人が多く、ある書店では「少年ジャンプ」を通常の4倍も仕入れていたそうです。また、流失した本を取り戻そうとするためか、一昔前のベストセラーが人気になり、『ワンピース』より『ドラゴンボール』のほうがよく売れた書店もありました。

ONE PIECE 67 (ジャンプコミックス)

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DRAGON BALL 完全版 34 (ジャンプコミックス)

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他によく売れたのが、手紙の書き方の本や、住宅関係の法律の本、編み物の本など。被災者がどんな情報を必要としていたか、よくわかりますね。


いっぽう、原発に近い福島県浜通りの書店では、女性や子どもが地域外に避難したため、女性誌や少女漫画誌の売り上げが激減したとのこと。
一口に被災地といっても土地によって受けた影響はさまざまで、復興への道はひとかたならないことがよくわかります。


店舗を失った書店の人々が、プレハブの仮設店舗で営業を再開したり、青空移動書店を開いたりといった動きや、被災によって職場を失い、書店のなくなった地域で新たに開業した人の例も紹介されています。書店という一つの業種をとって見ただけでも、様々な人生模様が見てとれますね。


震災直後には、千葉県でコンビナート火災が発生し、そのため有害物質の雨が降るというデマが飛び交いました。

検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)

検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)

あの火災が、出版業界に与えた影響についても触れられています。意外なところに影響が出ていたんですね。


ほかにも、津波の被害は直接受けなかったものの、物流の寸断によって本が届かなくなった仙台市内の書店が、再開したときの様子なども書かれています。どうぞよろしく。