北陸代理戦争

みなさんこんにちは。毎日暑いですね!


あまりに暑くてイヤになるので、那須や軽井沢といった高原へリゾートに出かけたくなるのですが、そんなゼニは財布を逆さにしても出てこないので、せめて目で涼しさを味わおうと思い、深作欣二監督の『北陸代理戦争』を観ました。

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あらすじ:北陸でやくざが代理戦争をする話です


映画は冒頭、いきなり西村晃が首だけ出して雪の中に埋められているところから始まります。

子分の松方弘樹に組の利権を譲ると約束していたものの、なかなか引退しないため業を煮やした松方弘樹の仕業です。その上、ジープで轢き殺そうになります。


凍死寸前で、命からがら助かった黄門さまは、若衆たちに担がれて帰宅し、風呂に入ります。しかし風呂が熱くて「アチー!」と叫んで飛び出します。まさかの熱湯コマーシャルの刑です。


手に負えない松方弘樹に困った黄門さまは、弟分のハナ肇に相談します。これを機に自分が縄張りを乗っ取ろうとするハナ肇は、大阪の大組織で切込隊長を務める千葉真一に助けを求めます。大組織の介入により、存亡の危機に陥った黄門さまは引退し、千葉ちゃんに取り入ったハナ肇が組を掌握します。
そうなると狂犬の松方弘樹が邪魔なので、喫茶店に呼び出して暗殺しようとします。瀕死の重傷を負った松方弘樹は、情婦の野川由美子の故郷で、野川の弟の地井武男と、妹の高橋洋子(”残酷な天使のテーゼ”じゃない方)にかくまわれます。野菜だけの鍋物を食い、傷をいやすとともにオテンバ娘の高橋洋子をゲットした松方弘樹は、ハナ肇のところに乗り込んでいって、命乞いするハナ肇の左手を切断し、たまたまその場にいた無関係の大阪やくざに挑発されたので、そいつも一刀のもとに斬り殺します。計画性なさすぎるだろ! 


そんで逮捕され、刑務所に入った松方弘樹ですが、六年間服役して、出所するとまた反撃を開始します。
まずは海岸の土産物屋で越前ガニを手づかみでバリバリ食い、昔の舎弟の矢吹二朗(『仮面ライダー』の滝)と、ムショ仲間の伊吹吾郎(角さん)とでグループを結成します。


ここからは権謀術数と破天荒な暴力の連発で、大阪の大組織の本体に乗り込んで若頭の遠藤太津朗の盃をもらったかと思ったら、大組織の中で疎まれている千葉真一に喧嘩を売り、武器を用意しているところを警察に密告して逮捕させたり、敵の車をブルドーザーとパワーショベルで挟み撃ちにして破壊したり、やりたい放題です。黄門さまもハナ肇もその傘下に入れてしまいます。


あまりにやりたい放題なので、千葉真一組の残党である地井武男が、松方の妻で自分の妹である高橋洋子を誘拐して、松方弘樹を呼び出します。自分の妹を手下にレイプさせるのだから何を考えているのかわかりません。そんな無思慮な作戦がうまくいくわけもなく、拳銃で武装しているところを滝と角さんに機関銃で襲撃され、なすすべもなく降伏します。地井武男は、解放された高橋洋子に包丁で刺殺されます。高橋洋子は警察に自首しますが、角さんたちの機関銃をどうごまかしたんでしょうか。


そんで、地井武男の手下三人を捕虜にした松方軍団は、角さんお手製のカニ鍋を喰わせて懐柔し、松方弘樹ハナ肇→遠藤太津朗と乗り換えていた野川由美子が、遠藤太津朗の出資で出していたクラブで大暴れさせます。


怒った遠藤太津朗が「どういうことだ」と松方弘樹に詰め寄ると、「これはハナ肇の差し金です」と松方。
ちょうど心臓発作で入院し、絶対安静・面会謝絶のハナ肇のところに押しかける松方弘樹と遠藤太津朗。病室のドアを開けると、ハナ肇ベッドの上で山盛りのスパゲティをむしゃむしゃ喰っています。ここが可笑しいんだもう。


松方弘樹に詰め寄られたハナ肇は「わしゃ何も知らん、もう引退する」と情けない演技を見せます。遠藤太津朗が「ふざけるな」と詰め寄ると、心臓を押さえて「うう〜苦しい〜」と白々しい演技を見せます。バカ負けした遠藤太津朗は病室を立ち去ります。


松方弘樹に連れられて雪原に行くと、店で暴れた三人が首だけ出して埋めてあります。騙された三人組が松方弘樹を罵るのを、滝がジープのエンジン音でごまかそうとします。遠藤太津朗は完全に松方弘樹の仕業だと確信しますが、松方弘樹とりあえず三人組をジープで轢き殺します。この辺りは『地獄のモーテル』に影響を与えていると思います。

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「これで済むと思うのか」と迫る遠藤太津朗に、松方弘樹は「餓えた狼には親兄弟も関係ないですよ」と凄んでみせます。そこでナレーションが入り、

「俗に北陸三県の気質を称して越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師と言うが、この三者に共通しているのは生きるためにはなりふり構わず、手段を選ばぬ特有のしぶとさである」

と、地域差別としか思えないシメで無理やり終わります。


新必殺仕置人』35話や『AIR劇場版』でおなじみの、能登の名物である御陣乗太鼓もよく出てくるし、六年にわたる長い話なのに映画の中はずっと冬という、「北陸」をカリカチュアライズした、夏に見るにはぴったりの納涼映画でした。



ちなみに、この映画の伊吹吾郎の役はもともと渡瀬恒彦が演じる予定だったのですが、撮影中にジープの事故で重傷を負って降板したため、予告編には出ているのに本編には出てきません。
また、松方弘樹のモデルになった川内弘組長は「北陸の帝王」と呼ばれた大物でしたが、この映画が公開された翌年、抗争で射殺されます。この影響もあってか、東映は『仁義なき戦い』以来の実録路線をこの作品で終了させ、深作欣二監督は『柳生一族の陰謀』『宇宙からのメッセージ』など、時代劇やSFに挑戦するのでありました。

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