亡き兄に復讐を誓う姉弟に心打たれる男!
ちょっと面白いエントリを目にしまして。
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1718896.html
中国人のオタクから見ると、日本の漫画やアニメには復讐ものが少なく感じる、とのこと。
まぁその理由は単純にいって、最近のオタクがハードな作品を好まなくなっているだけじゃないかと思いますけどね。
60〜70年代ぐらいまではかなり多く、劇画でも『血だるま剣法』とか『アイウエオボーイ』、そして上のエントリでも取り上げられている『子連れ狼』。特撮なら、親友の仇を探す『快傑ズバット』や、父とガリアの復讐に燃える『スパイダーマン』(東映版)がすぐに思い浮かぶところです。
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ただし、「みごと復讐の本懐を遂げてハッピーエンド」という作品はたしかに少ないです。昔の講談本なんかでは、田宮坊太郎や荒木又右衛門がみごと仇討ちを遂げて終わりになってましたが、その彼らにしたところで、復讐のために生きた人生を後悔して魔人に転生したことですしね。
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『子連れ狼』にしても、単純に拝一刀が妻の仇を討つ話ではなく、柳生烈堂から見ても一刀は息子や娘を殺した仇であり、報復の連鎖を経て、最終的には、彼らの信奉する武士道と対極の存在である阿部怪異の暗躍もあって、二人は恩讐を超えた神聖なる宿敵となります。有名な「我が孫よ」のラストも、一刀と烈堂が互いに激しく戦いながら、誰よりも深く理解し合っていたことを示しています。
現代の漫画やアニメでも「復讐」をテーマにすることは少なくないのですが、「復讐は遂げたものの、全てを失い心に残るのは空虚さだけだった」というような落としどころに持っていくことが多いようですね。『シグルイ』はその典型だったと思います。
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時代劇からアニメにいたるまで、現代日本のポップカルチャーにおける「復讐はむなしい」という価値観がどこから生まれて定着していったのか、考察すればいろいろな意見が出そうですが、個人的には『仮面ライダーV3』の存在が大きいんじゃないかと思います。
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そのテーマがもっとも良く出たのが『仮面ライダーV3』です。悪の組織デストロンに両親と妹を殺された風見志郎は、復讐のため、大学の先輩である仮面ライダー1号に「自分も仮面ライダーに改造してくれ」と懇願します。しかし、復讐は何も生まない、それに仮面ライダーになるというのは人間でなくなることだ、と一度は拒否されます。
いったんは改造手術をあきらめた志郎ですが、1号・2号がデストロンの卑劣な罠にかかったのを救い、身代わりに瀕死の重傷を負います。志郎の命を救うため、ダブルライダーは彼を仮面ライダーV3に改造する手術をするのでした。
そして、ダブルライダーはデストロンの怪人カメバズーカの自爆に巻き込まれて行方不明となり、V3は自分の身体に秘められた能力をよく知らないまま孤独な戦いを余儀なくされます。
その過程で立花藤兵衛とも出会い、家族を殺された復讐のためではなく、正義のための戦いという使命に目覚めてゆきます。
彼のスタンスがより明確になるのが、番組終盤でライダーマン/結城丈二が登場したときです。
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そして、失った右腕にアタッチメントをつけ、「ライダーマン」を名乗ってデストロンと戦うのですが、当初はヨロイ元帥への私怨が戦いの動機であり、正義のためには戦っていませんでした。
そんなライダーマンは、私怨ではなく正義のために戦うV3と初めは反目しあっており、視聴者に「弱いくせに怒りっぽい」という印象を残しましたが、次第にV3の姿勢に感化され、ついには東京を救うために核ミサイルに乗り込んで南太平洋で自爆します。その自己犠牲と正義の心に感服したV3は、ライダーマンを「仮面ライダー4号」と認めるのでした。
この辺りから、子ども向け作品では単に復讐を目的とするのではなく、もっと大きな正義のために戦うというコンセプトが確立していったのではないかと思いますね。
もちろん、その後も『快傑ズバット』や『スパイダーマッ』のような復讐ものはありましたが。
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あと、中国圏の映画でも「復讐は空しい」というメッセージを打ち出したものはあります。
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ここでリーが見せた名演! 仇を討ったものの、妹が帰ってくることはない。それでも倒さずにいられないというやるせなさを、数秒の顔面演技だけでみごとに表現しています。
ジミー・ウォングあたりのB級カンフー映画より、リーは洗練されたセンスを持っていたことがわかりますね。
まぁそのジミーさんも、『片腕ドラゴン』こそ、師匠を殺し右腕を奪った仇への復讐を終えたところで余韻も何もなく終わりますが、続編『片腕カンフー対空とぶギロチン』では、今度は自分が復讐の対象になるわけで、不毛なる報復の連鎖が描かれている、といえなくもないですけどね。ジミーさんは絶対にそんなことまで考えてないと思うけど。
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(殺陣のクオリティは『燃えよドラゴン』とは比べものにならないほど低いが、なぜか癖になる『片腕カンフー対空とぶギロチン』のバトル)