童貞にいたる病

今季のアニメはいろいろ注目しようと思っていたのですが、けっきょく『エウレカセブンAO』ぐらいしかちゃんと見てなかったりします。沖縄が日本から独立していて、米軍と日本軍が沖縄をめぐって対立しているというポリティカルな設定は普段アニメを見ない層にもアピールしますし、東京が戦争と災害で滅亡していて、日本の首都は名古屋だというつボイノリオ的設定もあるので楽しいです。

エウレカセブンAO 1 (初回限定版) [Blu-ray]

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あと、家族の目を盗んでたまに見ているのが『謎の彼女X』ですね。

謎の彼女X 1(期間限定版)(Blu-ray Disc)

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植芝理一の原作がもともとフェティシズムに傾倒しているのですが、アニメでは絵柄がさらに肉感的になり、今季ナンバーワン変態アニメの座はゆるぎないものになっていますね。ぜんぶ見てるわけじゃないけど。


恋人の唾液をなめることで感情をトレースし合う、という基本設定はちょっとブチャラティの特技(相手の汗をなめるとウソをついてるかどうかわかる)を彷彿とさせるものもありますが、ミステリアスなヒロイン、卜部美琴の非萌え的な魅力(CVも、声優プロパーじゃない女優なのでぜんぜんアニメ声じゃない)もばっちり効いていて、いっぷう変わったアニメとしてなかなか高評価を受けているようです。


エキレビでも、こんな絶賛レビューが挙がっておりました。


童貞力を回復する奇跡のアニメ「謎の彼女X」 - エキサイトニュース(1/4)

童貞、処女という言葉は通常「性体験あり」と「性体験なし」という1か0かのデジタルな区別を行なう言葉として用いられることが多いが、ある程度年を経た男性なら誰もが薄々感じているように、少なくとも「童貞」の方は一度や二度の性交渉で失われるような柔なものではない。第二次性徴ーーもしかするとそれ以前の段階で既に各人の「童貞力」には個体差があると思われるし、それだけでなく第二次性徴以降、実際の性体験を行なう代わりに妄想を積み重ねることによって、その童貞力はさらに増していく。「40歳の童貞男」という映画が数年前にあったが、あのような人物は相当な童貞力を保持していたものと思われる(映画でそんなふうに描かれていたわけではないけれど)。


現在絶賛放送中のアニメ「謎の彼女X」は、そんな我々男性の童貞力を試すだけでなく、すり減ったその力を回復することができる奇跡のアニメである(ちなみに「童貞力」は「勃起力」とか「精力」とかとイコールではないので、そちらでお悩みの方には多分効果がないと思います念のため)。

まさにタイトル通り「謎」だらけの「彼女」だ。
ところがこのアニメは、そういう「謎」が少しずつ明らかになる、そういう作品ではない。この後、回を重ねるにつれ、童貞男子(童貞力の強い非童貞男子を含む)にとって、女性というものは常に「謎」である、どこまで行っても「謎」であるということをひたすら確認し続けることになる。「よだれによる絆」というのはそのシンボルに過ぎない。
冒頭からいきなりセックスの話は出てくるのだが、実のところ直接的な接触についての話はあまりない。卜部はよだれを舐めさせることを日課にし、「彼女」になった後も、頑なにキスやそれ以上の接触を拒む。その代わり毎回毎回、間接的に、あるいはフェティッシュにエロいエピソードがこれでもかとばかり繰り出され、そのたびに童貞力が回復するのを感じるのだった。

このように、「童貞力」をキーワードにしてこのアニメが絶賛されております。


童貞力という言葉自体はみうらじゅんが提唱したもので、10年前からありますが、クリエイターには欠かせないとされる童貞力を『謎の彼女X』は回復させるとまで言っていますから、このレビュアーの入れ込みぐあいは半端じゃないですね。

D.T.

D.T.


ちなみに、金平守人の『エロ漫の星』によれば、童貞力には数値化する公式があるとのこと。

エロ漫の星 上巻―素人からのエロ漫画入門 (ヤングコミックコミックス)

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ぼくもかなり童貞力には自信があるつもりでしたが、この公式によるとせいぜい200程度で、雑兵ランクにとどまっておりました。プロのレベルは厳しいなぁ。



んで、『謎の彼女X』を絶賛するこのエキサイトレビューを最後まで読むと、驚愕のオチが待ち構えておりました。

 ところで実は、作品中何度も繰り返される「よだれ」という言葉にはどうもぼくは抵抗がある。口の端から垂れたのは「よだれ」と呼ぶしかないが、口の中に溜まったり指につけたりしたそれは「つば」「唾液」ではないのかと。どっちでも一緒だろって? いやなんかやっぱり「よだれ」の方がより生々しい感じがしてちょっと嫌……。

我孫子武丸

何やってんすか先生。

殺戮にいたる病 (講談社文庫)

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まぁ新本格ミステリというジャンル自体も、結構な童貞力を必要としそうな分野ではあるんですけど。それにしても「記名オチ」という新ジャンルは初めて見ましたね。