いつかX橋で

いつかX橋で (新潮文庫)

いつかX橋で (新潮文庫)


今日は、仙台文学館で「せんだい文学塾」講座を開催いたしました。


講師は、仙台市在住の直木賞山本周五郎賞作家、熊谷達也先生です。

今回は毛色を変えて、受講生から送られたルポを掲載いたします。

私は熊谷先生の講義を聞くのは、去年の2月以来の2回目でした。
元教師という経歴を持つ先生の話し方は優しく、分かりやすい説明をして頂けます。
それだけでも嬉しいのですが、何よりも先生の声がとても素敵です。
ぜひ一度、小説の文章だけではなく、先生の声を聞いていただきたいです。
小説とはまた違った素敵な気持ちになれると思います。

前半は3人の生徒さんのテキストの講評でした。
一つ一つ生徒の感想を聞き、良いところや改善した方がよい部分を言っていきます。
そして熊谷先生は、各テキストに赤を入れてくれます。(正確には鉛筆なので、黒ですね。なんてひと笑いもありました)そして書いた生徒にプレゼントしてくれます。
某教育講座でも回答に先生が赤ペンでアドバイスをくれるものがありますが、作家の先生に直接書いてもらえるなんて、それはもはや家宝です。
次回は自分も!ふつふつと野望を燃やしながら、講義を見ていました。

テキストでの講評としては、メールのように一行アキを何度も行うと読みやすく、一見上手くは見えるが、描写を書き飛ばせるので、空けない方が良いそうです。会話で内容が進んだり、体言止めの多用も描写を使わず書けてしまうので、なるべく使わず、リアルタイムで人間が感じる匂いや感覚を文章で書いていくのが良いそうです。
そして、他のキャラの結果を見ているより、現在形で人を動かす。
これをやってもダメだ、じゃあ次はこれだ! これでもダメか。ならこうならどうだ!
主人公がなんとかしようと試行錯誤した方が、確かにドキドキしながら読めると納得しました。


そして一つのストーリーの中に、「何を書きたいか」を明白にした方が良いのだと教えて頂きました。詰め込み過ぎもよくない。でも書くうちに分からなくなってくる。そんな時は枚数を減らすために余計な部分を削っていくといいそうです。カットしていくうちに書きたい事が見えてくるそうです。とても参考になるました。


後半は「テーマとは? プロットとは?」というテーマの講演と質問コーナーでした。
先生は、「プロットってなんだと思います?」そう言うと、受講生に2分間考える時間をくれました。そして時間内にみんなそれぞれ思う事をプロットについて書きました。
みんなの意見を聞いてから、先生はプロットのお話をしてくださいました。
本当に学校にいるみたいで、なんだか楽しかったです。
テーマについては、決めてから書く場合があったり、後から分かる場合もあると思いますが、「書くためのモチベーションを保てるもの」これがテーマになるのではないかとの事でした。
プロになるとモチベーションを保つのが難しく、モチベーションがいかに大切かを教えてくれました。勉強、仕事すべてにおいて大切なものであり、持続が難しいものだと思います。
人それぞれ、モチベーションが続く事は違うと思います。
私も維持できるものを見つけたいと思いました。


今回先生の言葉でとても心に残ることがありました。
先生は震災後、小説は現実を超えられないと悩み、震災についての小説は10年は書けないとおっしゃっていました。
書くという選択、書かないという選択、書けないという気持ち。
人の考える事はそれぞれ違います。書いたものを見て、感じる気持ちも違います。
表現するという事の難しさと危うさを考えさせられました。
本当に今回の講座では考えさせられました。行って本当に良かったと思います。
ありがとうございました。


(H・H)

いかがでしょうか? 「せんだい文学塾」では、このような講座ルポも募集しております。



次回は角田光代先生を講師にお迎えします。初めての方も歓迎しますので、ぜひご参加ください。

幾千の夜、昨日の月

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