ロンドンは燃えている!

今年はじめての映画に、なぜか『けいおん!』を選びました。

映画「けいおん!」劇中歌アルバム放課後ティータイム in MOVIE

映画「けいおん!」劇中歌アルバム放課後ティータイム in MOVIE

テレビ版を一期の三話だけで切ったぼくですが、今季お正月映画最大級のヒットと聞いて、いちおう観にいったのです。


放課後ティータイムの面々は、全員おなじ女子大に受かってあとは卒業するだけとなり、るんるん気分で卒業旅行の計画を立てます。同時に、後輩のあずにゃんへ内緒で何か贈り物をしようと話し合います。


旅行先は亀に選ばせた結果、澪が提案したロンドンへ行くことになります。ロックの本場で、あずにゃんに贈る曲のインスピレーションも得ようという魂胆ですね。

しかし、なぜかあずにゃんも連れていきます。なんで二年生が卒業旅行についてくるんだよ! 内緒で曲作りするのに、ついてきたら意味ねえだろ!

しかも、空港に集まったメンバーたちは、なぜか各自の楽器を担いできました。バカじゃねえの? ライブに行くわけでもねえのに。律に至ってはドラムを持ってきたようです。本気でバカじゃないの?


そんで、飛行機でヒースロー空港に降りたった五人は、タクシーでホテルアイビスに向かいます。アイビスといえば、日本ではケンドーコバヤシら芸人御用達の六本木アイビスが有名ですが、ロンドンにもあるんですね。


しかし、予約していたアールズコートとは別のチェーン店に行ってしまい、地下鉄でまた移動することになります。『水曜どうでしょう』だったら確実に喧嘩になるところです。

とはいえ、萌えアニメなので「田井中律がバカなのか、秋山さんが合ってましたっていうのか、どっちだ言ってみろ」「…秋山澪がバカだ!」などという喧嘩になることもなく、仲良く腹ペコのままアールズコートまで向かいます。

そこで回転寿司屋を見つけた五人。わざわざロンドンくんだりまで来て寿司を喰うこともないと思いますが、とにかく入ります。すると、楽器を持った彼女たちを見た、背の高い白人の店長になにやら英語で話しかけられ、わけもわからず生返事をしていると、なぜかステージで演奏する羽目になります。

ここで、放課後ティータイムは自分たちのオリジナル曲を演奏します。


いやいや、そこは普通イギリスの曲をやるところだろ。ビートルズとかストーンズとかさ、ロンドンなんだからクラッシュの"ロンドンは燃えている!"でもいいじゃん。

Clash

Clash

この映画で描かれているロンドンは綺麗で安全で、暴動があったことなどまったくうかがえません。まぁそういうアニメじゃないから別にいいんですけど。

そんで、みんなでアビイ・ロードの横断歩道を歩いたり、観覧車に乗ったり、日本のポップカルチャーを紹介するフェスに飛び入りしながら、三泊五日の珍道中を終えて帰国します。異文化との衝突とか、イギリスのまずい食い物とかは出てきません。フィッシュ&チップスも食いません。んで肝心の新曲は、「自分たちらしい曲」という安直な路線に落ち着きました。


帰国してから数日で、唯たちはあずにゃんに捧げる曲を完成させ、卒業式のあとに部室で披露します。あずにゃんの加入を「素敵な天使に逢えた」と表現する、素晴らしくこっぱずかしい萌えソングでした。

このアニメでは、やたらと少女たちが抱き合ったり手をつないだり子守唄を歌ったり、過剰なスキンシップをするんですが、女の子ってそういうもんなんですかね? これが野郎のバンドマンだったら、下ネタと殴り合いと女の取り合いに明け暮れるばかりで、後輩のことを「天使」なんて言っちゃうのは、よほどのホモか、そうでなければストライパーぐらいのもんでしょう。

7-The Best Of Stryper-

7-The Best Of Stryper-

こうして、平沢唯たち三年生は卒業して、あずにゃんとは笑顔でお別れするのでした。


いや、別に高校を卒業したからって、一緒に演奏したかったらスタジオでも行けばよくね?


高校の軽音楽部ってのはそういうもんなのかもしれませんが、とにかくこうして先輩から後輩へと曲が受け継がれ、桜高軽音部の伝統は守られたのでした。


ストーリーははっきり言ってどうでもいいような話で、それより少女たちが日常や旅行先で見せる仕草の可愛らしさ(唯がみかんをいじるところとか)を愛でるためのアニメですね。その意味では成功していて、劇場を出るときには、若い男の子が「これで四回目だよ」などと言っていました。グッズ目当てのマニアなのかもしれませんが、ファンなら何回も観たくなるんでしょう。


客層は思ったよりオタク臭くなく、子ども連れが三割、女子中高生が三割、普通の男の子が三割で、見るからにアキバ系な人はほとんどいませんでした。田舎だからですかね。


ぼくとしては、唯の使っているレスポールにはハードケースがついているはずなのに、劇中ではずっとソフトケースで持ち歩いているのが気になりました。ハードケースだと担いで歩けないからなんでしょうが、手に持って歩くのもロバート・ロドリゲスのマリアッチみたいでいいんだけどなぁ。