愛のバラード

今年は横溝正史の没後三十周年にあたりますが、縁の深い岡山県でこんな試みがあるそうで。


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111201-OYT1T00375.htm

犬神家のスケキヨ弁当試作品


 推理作家・横溝正史(1902〜81年)の名探偵・金田一耕助シリーズの一つ「犬神家の一族」の登場人物をテーマにした「スケキヨ弁当」の試作品を30日、岡山県倉敷市くらしき作陽大が発表した。


 横溝が戦中・戦後に約3年過ごした同市真備町岡田の疎開宅で、没後30年の命日に当たる12月28日、関係者らを招いて試食する。


 スケキヨ(犬神佐清)は、小説を基にした映画やドラマでは、顔を白いマスクで覆った姿が強烈な印象を与えた。弁当は、佐清の白いマスクを笠岡産のゆで卵に海苔で目を付けて表現。湖面から両足が突き出た有名なシーンは、笠岡産シャコの天ぷらなどを2本並べた。倉敷産輪切りレンコンは骸骨、高梁産コンニャクは墓標という。


 イベント「巡・金田一耕助の小径」を展開する倉敷市などが、「ファン向けに弁当を」と同大学に依頼。栄養学科の教員、学生5人が、映画を見て盛りつけを考えた。来年度の販売を検討する。

ラバーマスク M2 白ぬり

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見た目にキャッチーじゃないですね、このお弁当。シャコの天ぷらは、メイン食材としての華やかさの点では合格といえますが、レンコンやコンニャクは素材としてはやや地味な上に、モチーフが墓標と骸骨では、横溝作品独特の禍々しい華やかさに欠けています。ここはやはり、斧・琴・菊を再現してほしかったです。コンニャクを整形して琴の形に、菊はおひたしにして鮮やかな黄色を生かせば、全体の色味がぐっと華やぐと思います。


それより何より、犬神家の一族』の舞台は信州であって岡山ではないんですけど。

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横溝正史は、自分にとって身近な土地を好んで舞台にする人で、昭和9年から11年にかけて肺結核のため諏訪に転地療養していたときには『鬼火』や『かいやぐら物語』で諏訪を舞台にし、戦時中に疎開していた岡山では『本陣殺人事件』や『獄門島』『八つ墓村』などで岡山県を舞台にしています。


戦後に東京の吉祥寺に居を構えてからは『黒猫亭事件』などで吉祥寺を舞台にして、軽井沢に別荘を構えたら今度は『霧の山荘』に『香水心中』『夜の黒豹』『仮面舞踏会』、といった具合です。それと並行して岡山もの(『夜歩く』や『悪魔の手毬唄』)、そして信州もの(『犬神家の一族』『不死蝶』)も発表しています。金田一耕助ものには信州を舞台にしたものは少ないですが、「スケキヨ弁当」を出すとしたら岡山より諏訪の方が筋が通っていると思います。


岡山で出すとしたら、『本陣殺人事件』の紅殻塗りの部屋にちなんだ桜でんぶのお弁当とか、『獄門島』にちなんだ釣り鐘型弁当なんかいいと思いますけどね。『八つ墓村』の要蔵をキャラ弁にするのはちょっとレベルが高すぎるでしょうし。

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