デマの氾濫

今日の日経は、こんなニュースを伝えていましたが。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111130/224702/

ドコモ、来年夏にiPhone参入

次世代高速通信規格「LTE」に対応

 NTTドコモは米アップルの人気スマートフォンiPhone」とタブレット端末「iPad」の次世代機を日本国内で販売することで、アップルと基本合意した。ドコモはこの合意に基づき、まず来年夏に高速通信規格「LTE」に対応したiPadを日本市場に投入し、秋までにLTE対応のiPhoneを発売する見通しだ。


 国内の携帯電話会社ではソフトバンクモバイルが2008年に初めてiPhoneを発売し、今年10月にはKDDIau)も最新型「iPhone4S」の販売を始めた。ドコモの参入によって大手3社すべてがiPhoneを取り扱うことになり、携帯各社の競争の軸は端末から通信品質や料金面にシフトすることになりそうだ。

「複数の関係者によると」11月中旬にドコモの社長と副社長がアップルを訪れ、CEOと会談して基本合意した、とのことなんですが。


http://www.nttdocomo.co.jp/info/notice/page/111201_00_m.html

ドコモからのお知らせ:弊社に関する一部報道について

2011年12月1日


平素はNTTドコモグループのサービス・商品をご利用いただき、誠にありがとうございます。


本日、一部報道で、当社がアップル社の「iPhone」及び「iPad」の取り扱いを開始する旨の報道がありましたが、
現時点において、「iPhone」及び「iPad」の取り扱いについて、当社がアップル社と基本合意したという事実はございません。


また、現時点において、「iPhone」及び「iPad」の取り扱いに関し、アップル社と具体的な交渉をしている事実もございません。

ドコモ公式でガッツリ全否定されてしまいました。関係者のリークがあったのだとしても、交渉の事実もないとするこの否定ぶりでは、まとまる話も壊れてしまうでしょう。この報道で株価も上がったそうですが、もしかしてそれを見越したインサイダー取引じゃないでしょうね。


いっぽう、読売新聞はこんな記事を載せましたが。


http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111201-OYT1T00084.htm

東電、東通原発を断念…工事中断の1号機

東京電力は30日、青森県東通村で1月に着工した東通原子力発電所1号機の建設を断念する方針を固めた。


 福島第一原発事故の賠償を進めるため、十分な建設資金が確保できないためだ。政府が原発の新増設に厳しい姿勢を見せる中、具体的に中止の計画が浮上したのは初めてだ。

 1号機は改良タイプの沸騰水型軽水炉(ABWR)で、出力は国内最大級の138万5000キロ・ワット。東電は2017年3月の運転開始を目指して工事を始めたが、福島第一原発の事故を受けて中断し、再開や中止についての判断を明らかにしていなかった。20年以降の運転開始を予定していた東通原発2号機の建設も取りやめる見通しだ。

 原発の新増設について政府は原則認めない方針だが、野田首相は10月、「建設が相当進んでいるものもある。個々の案件ごとに地元の意向も踏まえながら判断していく」との考えも明らかにしていた。

こちらは、「脱原発」という流れによるものではなく「建設資金難」というなんとなく現実味のありそうな話で、いかにも本当のことのようですが。


http://www.tepco.co.jp/cc/kanren/11120101-j.html

12月1日付読売新聞1面「東電、東通原発を断念」について

平成23年12月1日
東京電力株式会社


 12月1日付の読売新聞にて、「東電、東通原発を断念」との記事が報じられておりますが、当社が発表したものではなく、また、こうした事実はございません。


以 上

こちらも公式でガッツリ否定されてしまいました。東電としたら、ここは否定しないほうが企業のイメージアップになると思うんですが、それでも否定するんだからよっぽど東通原発に執念があるんでしょう。もう原発推進なんて無理だと思うんですけどねぇ。


んで、原発関連ではこんなお話がありました。


http://www.med.or.jp/people/info/people_info/000614.html

日本医師会から国民の皆様へのお知らせ

ネット上の書き込み「白血病患者急増 医学界で高まる不安」について

 現在、ネット上の掲示板、ツイッター、ブログ等において、「白血病患者急増 医学界で高まる不安」として、以下の内容が出回っています。

【ネット上からの引用】
 各都道府県の国公立医師会病院の統計によると、今年の4月から10月にかけて、「白血病」と診断された患者数が、昨年の約7倍にのぼったことが21日に判明した。これを受けて、日本医師会会長原中勝征は、原発事故との因果関係は不明として、原因が判明次第発表するとした。
 白血病と診断された患者の約60%以上が急性白血病で、統計をとりはじめた1978年以来、このような比率は例が無いという。
 また、患者の約80%が東北・関東地方で、福島県が最も多く、次に茨城、栃木、東京の順に多かった。

 日本医師会が、このような発表を行った事実はありません。
 本文中には、「各都道府県の国公立医師会病院」との表現がありますが、そもそも医師会病院は、国公立ではありませんし、統計の数値につきましても、現段階でそのようなデータについて確認できず、信憑性を疑わざるを得ないものであります。
 また、一部一般紙に掲載されたものであるとの噂もございますが、確認したところ掲載した事実はないとの回答を得ております。
 日本医師会は、今回の福島第一原子力発電所事故に関しては、政府に対し正確な情報を国民の皆様に提供するよう求めているところでありますし、本会からの情報の提供に関しては、正確な情報提供に心がけております。
 国民の皆様とともに安心・安全な医療を進めて参る所存でございますので、今後ともご理解いただきますようお願い申し上げます。
 
平成23年11月29日
日本医師会
原 中 勝 征

前二つは誤報にせよなんらかの根拠があったのでしょうが、こちらは完全なデマです。「国公立医師会病院」という実在しない機関名を入れているあたり、11月16日の記事で紹介したデマ作成ノウハウ(http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20111116)を実践したのではないかと思われますね。ところが、それでも「医師会が即座に否定したのがあやしい」「白血病は増えているに違いない」と主張し続ける人たちもいるようで。


日本医師会「白血病患者急増」否定情報に、「まだ我々は負けていない」という人たち - Togetter


みんなよくやるねぇ。で、この中にはいないけど、反原発系のツイートでよく見かける、自称「もと東電社員で原発にいて、今は熊本で医師をしている」、[twitter:@onodekita]という人物は「『国公立医師会病院』というのは、国公立の病院と医師会病院をまとめた言葉だ」と強弁してみたり、日本医師会が公式に「あれはデマです」と否定しても、


と、あくまで白血病は増えているという路線を崩しません。


九州は佐賀県ではこんなこともありましたが、
http://www.asahi.com/national/update/1201/SEB201112010011.html

佐賀・武雄市、大震災がれきの受け入れ撤回 脅迫相次ぎ

 東日本大震災で発生したがれきの処理について、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長は1日、これまで表明していた受け入れ方針を撤回すると発表した。この日開会した12月定例市議会の冒頭、「電話などで市職員や市民への脅迫行為が続いているため」と撤回理由を説明した。

 がれきの受け入れについては、樋渡市長が11月28日、同市など3市4町でつくる広域市町村圏組合の首長会議(12月6日)に提案し、了承を得た上で、放射線量の独自基準を設けて受け入れる方針を示した。

 だが、受け入れ方針が報道されると県内外から電話やメールで約千件の意見が寄せられた。大半が批判や抗議で、「受け入れたらお前たちに苦しみを与える」「市や市民主催のイベントを妨害する」「武雄市産の物品の不買運動をする」などの脅迫もあったという。

このオイシャサンも「抗議」していたようです。



んで、こんなことも言っています。



この人は、インターネットにどれだけデマが出回ったか知らないんでしょうか。今日だけでも二つの大きなデマが出たし、去年は子ども手当にからんで「ザイール大使館員付き添いで子ども200人分請求」というのが流行ったものでした。「宮崎県で流行した家畜の口蹄疫は韓国人が持ち込んだもので、そのせいで自殺者が出た」というデマもあって、それに関してぼくもこんなエントリを書いたものでした。


でも、やるんだよ - 男の魂に火をつけろ! でも、やるんだよ - 男の魂に火をつけろ!


今は、福島県と県民を、日本とは「異質なもの」として排除しようと叫ぶ人たちがいます。「自分が賢いと証明するために、誰かが病気になったり死んだりしてほしい」という願望を隠しもしないで、福島という言葉そのものをケガレのように扱う人もいます。


ワーワー教徒の本音 - 男の魂に火をつけろ! 〜スポーツ映画ベストテン受付中〜 ワーワー教徒の本音 - 男の魂に火をつけろ! 〜スポーツ映画ベストテン受付中〜


原発とは無関係な釣りコラムニストが白血病で亡くなったのを、「福島原発から30km圏内で野宿して釣った魚を食べていた」と捏造してまで原発と結びつけた(「食べて応援」を否定するために、無関係の若者の死を利用する人 - Togetter)のも、ワーワー教徒の本音である「誰か病気にならないと福島差別する自分がバカみたいだから」という願望からくるものでしょう。


ツイッターであっという間に広がることは正しい」とツイートしているお医者さんは、自身の怪しげなツイートに対して「ソースは?」などとツッコミを入れる人のことを工作員と認定していて、しかもなぜか「下っ端は時給750円、親玉は月に50万もらっている」などと妄想を炸裂させています。こういう人にツッコミを入れたところで、本人も信者も、何も変わることはないでしょう。



でも、やるんだよ。



福島県の隣である宮城県に住んでいるぼくにとって、原発事故は他人事ではありません。でも、正しい恐れ方ができないで、ワケわかんないインチキ情報に大騒ぎするやつらを、せめて笑いものにするぐらいの余裕は持っていたいんですよ。優越感にひたりたいがためによその土地をケガレ扱いするようなやつらを、改心させるのは無理でも、せめて「それは恥ずかしいことなのだ」と、傍から見ている人に思わせることぐらいはできるはずです。自分の正しさを証明するために他人の不幸を待ち望むのは醜悪なことだ、と訴え続けることぐらいはできるはずです。


デマを嬉々として拡散している人たちを見ると、正直いってげんなりします。笑いものにするのにも、ある程度のパワーが必要なんですよ。そんなもん、無視してればいいんですよ。




でも、やるんだよ。


※追記
この記事を書いたら、qqzg7ry9k@eco.ocn.ne.jp(署名は「susumu iduta」)から「ふざけんな!死ね!!タコ!!カス!!」という件名なしメールが届きました。えーとね、これ脅迫ですからね。