バレエ地獄変『ブラック・スワン』
ちょっと前に、ラサール石井が「浅田真央ちゃんはエッチしなきゃミキティやキムヨナには勝てないよ」とツイッターでつぶやき、批判を受けて謝罪・撤回するという騒ぎがありました。
ラサール石井さん暴言で炎上! - Togetter
ラサール石井さん炎上で元ツイート削除の上、謝罪ツイート - Togetter
このセクハラ発言は批判されて当然だと思いますが、もしかしてラサールさん『ブラック・スワン』観たんじゃないですかね。
ブロマイド写真★ナタリー・ポートマン『ブラック・スワン』/バレリーナ姿
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というわけで、今日『ブラック・スワン』が公開されたので観てきたッス。まさにそういう話でした。
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ナタリー・ポートマン演じるヒロインのニナは、『白鳥の湖』の主役を演じるにあたって、演出家のヴァンサン・カッセルから「王子を誘惑する黒鳥の妖艶さを身につけろ」という名目のセクハラ指導を受けます。母親(バーバラ・ハーシー)により性的に抑圧されていた彼女はその指導を受け入れることができずに悩み、ライバルのリリー(ミラ・クニス)が持つ自由奔放さに嫉妬と憧れがないまぜになった複雑な感情を抱くようになりました。やがてニナは現実と幻想の区別がつかなくなり、不可思議な体験を繰り返す……というお話の骨子はみなさんすでにご存知かと思います。
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演技者が性的体験を積むことで舞台での表現に深みが増す、というこの映画での価値観はいかにも男性主義的で、フェミニストから批判されそうなところですが、そこはヴァンサン・カッセルだから仕方ない、ということでカンベンしていただきたいものです。
※以下ネタバレ
黒鳥の妖艶さを身につけられないニナは、自分と正反対の性格を持つリリーがときどき自分と同じ顔に見えるようになります。そして、リリーに誘われて酒とドラッグを服用し、混濁した意識の中でゆきずりの男に身を任せ、さらに自室に連れ込んだリリーとも関係を持ちます。その場面でも、リリーは一瞬ニナの顔になります。ニナにとって、リリーは「こうありたい自分」を投影した存在であり、自分の分身なわけですね。
ところが翌朝に目覚めるとリリーの姿はなく、稽古場で会っても、昨夜に関係を持ったことを否定します。ますます混乱するニナ。
『白鳥の湖』開演前夜になるとニナは完全に錯乱し、母の描いた絵がみんな自分をあざ笑ったり、背中から黒い羽毛が生えてきたり、自分の脚が鳥のような逆関節になったりする幻覚を体感した末に、意識を失って倒れてしまいます。
翌朝に意識を取り戻したニナは、母の制止を振り切って劇場に向かい、補欠のリリーがスタンバイしているにも関わらず強行出演します。しかし舞台でもめまいを起こして転倒してしまい、すっかり凹んで一幕を終え、黒鳥役のスタンバイのために楽屋に戻ると、そこではリリーが代役のためのメイクをしていました。ここでもまたリリーはニナの分身に変身し、ニナは自分の分身ともみ合いになった末に、割れた鏡の破片で刺し殺します。ハッと気づくと、分身と思ったのはリリーの死体でした。ニナはリリーの死体を隠し、黒鳥のメイクをして舞台に戻ります。そこで彼女は、腕や背中から羽毛が生えて本物のブラック・スワンに変身する幻覚を体感しながら素晴らしい演技を見せ、観客の拍手喝采とヴァンサン・カッセルの絶賛を受けます。満足して楽屋に戻ると、殺したはずのリリーが訪問して演技を賞賛してゆきます。混乱するニナ。隠したはずのリリーの死体も、なくなっています。さきほど争ったのは幻覚であり、刺したのは自分の分身だったことをニナは悟ります。そして彼女の腹には鏡の破片が刺さったままでした。
この辺は古式ゆかしいサイコサスペンスものというか、ヒッチコックやブライアン・デ・パルマを彷彿とさせる味わいがあります。
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そして、腹部から出血したままでニナは最終幕の舞台に上がり、高台から身を投げて命を絶つフィナーレを迎えます。
満場の観客が賞賛の拍手を送る中、ニナはその命を完全燃焼させて飛翔し、最期を遂げるのでした。
……『レスラー』とまったく同じやん!
もともと姉妹篇として企画されたものだとはいえ、さすがにビックリしました。
エンドクレジットでは、チャイコフスキーの”白鳥の湖”が流れるのですが、思わずブルース・スプリングスティーンの"The Wrestler"を口ずさみたくなったほどです。
また、腹を切って血を流しながら、最期の完全燃焼を遂げるというのは日本の漫画などによく見られる「陰腹」以外の何物でもないですね。
とかく『PERFECT BLUE』との類似が指摘される『ブラック・スワン』ではありますが、太陽のごときスポットライトを浴びながら、陰腹を切った人が燃え尽きるという点では『アストロ球団』へのリスペクトも感じないこともない。
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