デビルマン対ゲッターロボ

永井豪ちゃん先生の『激マン!』2巻が出てるので、買ってきました。

激マン! 2 (ニチブンコミックス)

激マン! 2 (ニチブンコミックス)

デビルマン』に力を入れるため、同時に連載していた『ハレンチ学園』を終わらせるのが今回の山場です。当時、熾烈なバッシングを受けていた心情の告白や、豪ちゃんほどの売れっ子漫画家でも連載では儲からないという業界の構造告発(まぁ今では常識なんだけど、永井豪クラスでもそうだとなると重い)など、見どころ満点。


ハレンチ学園』を辞めるとき、「ハレンチ大戦争で主要キャラをみんな殺したので、もう続けられない」という豪ちゃんに、少年ジャンプの担当編集者が「だったらもう一度生き返らせてもいいんじゃない」と言う辺りは、今に至る「ジャンプ」漫画の芸風を物語っていて興味深いですね。

でも豪ちゃんは、「それだとハレンチ大戦争も無かったことになる。ハレンチ大戦争にはマスコミへの怒りが込められているので、それは絶対にしたくない」と固辞します。

ハレンチ学園 3 (キングシリーズ 小池書院漫画デラックス)

ハレンチ学園 3 (キングシリーズ 小池書院漫画デラックス)


「次々に死んでいく『ハレンチ学園』のキャラクター達はマスコミのバッシングによるオレの心の痛みの表現なんです!! だからイキドマリもアユちゃんも生き返ることはできないんです!!」


と、いちど死んだキャラクターを生き返らせることをあくまで拒否する豪ちゃんなのでありました。


この創作姿勢は、実はその後も引き継がれていて、『バイオレンスジャック』で過去作のキャラクターを登場させたときも、「月刊少年マガジン」連載分で死んだはずの早乙女門土を「漫画ゴラク」連載分で復活させるにあたっては、ちゃんとその蘇生にストーリー上の仕掛けをしてあったものでした。


死んだキャラクターを平気で甦らせる、ゆで先生とか宮下先生とか平松先生の豪胆さもそれはそれでいいのですが、豪ちゃんの作家としての気概もまた素晴らしいですね。


しかし、『バイオレンスジャック』で「別世界を創造する」という手法を身につけた豪ちゃん先生は、その後は『デビルマンレディー』などで不動明を何度も甦らせ、なぜか『ゲッターロボ』の世界にまで、不動明シレーヌを登場させています。

デビルマン対ゲッターロボ (チャンピオンREDコミックス)

デビルマン対ゲッターロボ (チャンピオンREDコミックス)

石川賢がすでに亡くなっているので、竜馬も隼人も好青年です。武蔵も剣道の胴にドカヘルじゃなく、ちゃんとユニフォームを着ています。その点で『ゲッター』としてはかなりの異色作です。いや、異色作でない『ゲッターロボ』なんてないんですけどね。作中で、ゲッターロボが出撃するときに「ゲッターロボ永井豪の作詞だぜー」と、「ダイナミックおっさん合唱団」(スタッフと思われる)が主題歌を歌うのですが、”若い力が真っ赤に燃えて”と、歌詞を間違えているあたりのテキトーさもまた、近年の豪ちゃんらしさがよく出ています。


正しくは”若い命が真っ赤に燃えて”ですよー。


『激マン!』連載分でも、あれだけ大騒ぎして『ハレンチ学園』を辞めたのにすぐ『マジンガーZ』をジャンプに連載開始していて、ぜんぜんスケジュールを空けられないという展開が見られますしね。ツッコミどころ満載、というのもまた豪ちゃん先生の持ち味の一つだと捉えることにしましょう。