一つ天麩羅四杯なり 但し笑うべからず

今は人権週間だ、というタイミングを狙ったかのようなこんなニュースが。


http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20101208/news20101208221.html

障害者施設建設計画で町内会が反対運動 松山

 松山市北部で知的障害者の更生施設を運営する社会福祉法人「風早偕楽園」が同市久保の団地内に計画している知的障害者のケアホーム建設に、地元住民らが反対し計画撤回を求めていることが7日までに分かった。住民らは県道沿いや団地内に「建設反対」ののぼりや横断幕、看板を多数設置している。
 ケアホームは障害者自立支援法で新設され障害者が地域の中で共同生活する施設。食事や掃除などの家事支援や日常生活の相談に当たる世話人と食事や排せつの介護をする生活支援員が配置され、グループホームより手厚い介護が提供される。
 法人によると、計画では、新しく造成された分譲地に知的障害者のケアホーム男女用各1棟(定員男女各7人)を建設。9月の着工を目指していたが、着工できていない。
 反対運動は団地のシーサイドハイツ町内会(約100世帯、同市久保・粟井河原)と近隣住民が展開。町内会によると、法人と開発会社の入居者数や障害程度などの説明に虚偽があった▽地区の資産価値が下がる▽反対が強い地域では障害者が幸せに暮らせない―などを理由に挙げる。
 町内会は県に「白紙撤回するよう指導してほしい」との陳情書を提出。県を交えた法人と住民の話し合いも行われてきたが平行線のままという。町内会長の男性(62)は「説明もないまま突然ケアホームを隣に建てられると、土地を買った若い住民の人生が台無しになる。彼らを守るため、どうしても阻止する」と主張する。

坊っちゃん (新潮文庫)

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すごいですねぇ。さすが、夏目漱石に『坊っちゃん』を書かせた松山の人情は、今も変わっていないようです。


反対理由もまたすごい。一つ目の「説明に虚偽があった」というのはまだしも、「地区の資産価値が下がる」というのはいかにも下世話ですし、三つ目が何よりひどすぎますね。「反対が強い地域では障害者が幸せに暮らせない」って、自分で反対しておいてそれを理由にあげるのは循環論法ですよ。「それは世間が、許さない」「世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう?」という太宰メソッドどころの話じゃありません。

人間失格 (集英社文庫)

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こんな人たちのいる町内会では、障害者が幸せに暮らせないのは事実でしょうね。障害者だけじゃない。健常者だって、こんな町内会で幸せに暮らせるはずがない! こんな反対運動をするような人たちが住んでいる、となれば地区の資産価値だって下がるに決まっています。土地を買った若い住民の人生を、台無しにしたくて仕方ないんでしょうな、この老人は。


というかこの町内会長さん、この主張が世の中に受け入れられると本気で思っているんですかねぇ。仮にも「会長」と名のつく立場なら、多少は人権に配慮した発言をしなければならんとは考えないんですかねぇ。もう黙ってポンジュースでも飲んでろよ。

ポン アップルジュース 1L×6本

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と、この町内会長さんをDISってみましたが、実はこの反応は松山のこの町に限らず、日本中どこでも同じような反対運動が起こるであろうことは目に見えているんですけどね。


かの石原慎太郎が10年以上にもわたって東京都知事の職を追われずにいるのも、弱者やマイノリティや異質な文化の持ち主を「迷惑」と感じるポピュリズムが、有権者の中にあるからでしょう。夏目漱石は『坊っちゃん』の中で、松山のことを「ほかの所は何を見ても東京の足元にも及ばないが温泉丈は立派なものだ」と、道後温泉の素晴らしさと松山人の狷介固陋を描いていたものですが、少なくとも、人権感覚においては東京とくらべても遜色ないようです。


ちなみに、石原吐痴児が1999年に府中療育センターを視察して、重度障害者と触れ合って「ああいう人ってのは人格あるのかね」と発言したことがありましたが、これを批判された吐痴児は、「自分の文学に触れてくる問題だ」と、都合のいいときだけ文学者ぶる言い訳をしたものでありました。