行間を読む
『シグルイ』最新巻を買ってきたッス。
- 作者: 山口貴由,南條範夫
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: コミック
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ですが、よく読んでみると漫画の文法について再認識できたのでちょっとメモしておきます。
『シグルイ』はその物語の構成が回想の入れ子構造になっており、そもそも第一話が伊良子と藤木の対決から始まって、その因縁を語るという形式になっています。
で、その回想の中でもさらに時系列を移動しながら過去にさかのぼることが多いので、混乱をさける必要がありますね。
そのため『シグルイ』では、時系列が移動したり視点が移動したりしたときは、コマの枠外がベタ塗りになって、読者に雰囲気の変化を知らせるという演出がなされています。
時制が現在のときは白、回想シーンに入ると黒、といった具合。
で、63話『透視』では、馬淵刑部介が家老に藤木源之助と峻安との試合の顛末を報告するのですが、彼らが会って話している「現在」の時制は枠外が白。
試合の様子を描く、馬淵の回想シーンでは、枠外が黒。
そして、峻安のかつての試合ぶりを思い出す、家老の回想シーンでは、枠外は濃いスクリーントーンが貼られ、また別の時制であることを表しています。
今まで意識しないで読んでたんですが、こういうルールってのは昔からあったんでしょうか。
また、第65話『死人』では、成り行きによって藤木と月岡雪之介が剣を交えますが、二人の高速の動きを無音の世界で精密に描写する、一種のスローモーションになると枠外がスクリーントーンに変わり、時間経過が他のページと異なることを表します。
その夜、藤木と三重の寝室に短筒を持ったいくが押し入る場面では、はじめは三重・藤木の視点から描かれており、そこでは枠外は白。
で、三重に今は亡き虎眼が乗り移ると、今度は恐怖するいくの視点に変わり、枠外が黒に。
そして、銃声を聞いた月岡が駆けつけると、枠外はまた白に戻ります。
このように、枠外によって空気感を描写するという演出が『シグルイ』では効果的に用いられているんですね。
文章では、よく「行間を読む」という言葉が使われますが、漫画では「コマ外を読む」ということもまた重要なのかもしれません。
(そういえば、80年代ごろの漫画ではコマ外に作者のヒトコト近況が書かれてたり、セルフツッコミの一文が入ったりしてたもんですがいつの頃からかあまり見られなくなりましたね)