Flesh For Frankenstein

先だって観た映画『第9地区』では、エイリアンの肉を食べることで呪術的な力を得ようとする、ナイジェリア人ギャングが登場してきました。

第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

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人種差別と格差がうずまくヨハネスブルグを舞台にした、一種のポリティカル・フィクションでもあるこの映画ですが、迷信を信じるギャングも、まんざら作り話ではなかったようです。


http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2723801/5724736

止まらぬアルビノ殺害、今月だけで被害者3人 アフリカ

アルビノ(先天性白皮症の人)の殺害事件が相次いでいるタンザニアブルンジで、今月に入って新たに3人の被害者が出たとカナダのNGOが6日、明らかにした。殺害の目的はアルビノの体の一部をお守りの材料として高値で売ることで、国際社会からの圧力にもかかわらずいまだに売買が後を絶たない現状が改めて浮き彫りになった。


 NGO「セイム・サン(Same Sun)」が地元警察の話として報告したところによると、タンザニアとの国境に近いブルンジのCendajuruで2日、アルビノの28歳の女性と4歳の息子が武装した9人組に殺害され、手足と臓器が切り取られる事件があった。止めに入った男児の祖父にあたるアルビノではない男性も殺害されたという。  


 セイム・サンによると、タンザニアでは今年2〜4月にアルビノの殺人が1件、殺人未遂が4件発生している。2007年以降の殺害件数はタンザニアで57件(未遂6件)、ブルンジでは14件に上るが、あくまで報告に基づいた数値で実際ははるかに多いと見られる。過去2年間だけで100件を優に超えているとの予測もある。


 法の裁きも遅々として進んでいない。タンザニアでは、この2年間に有罪判決を受けたケースはたった2件。一方ブルンジでは、14件中12件で既に有罪判決が下った。


 07年から始まった一連のアルビノ殺害事件では、アルビノの体の部位がすべてそろったもの(手足4本と1対の耳、性器と鼻と舌が含まれる)が7万5000ドル(約670万円)で取引されているとタンザニア警察は推定している。


 タンザニアの人口3500万人のうちアルビノは約15万人。アルビノの赤ちゃんが産まれた場合、差別を免れるために、親が故意に殺すこともあるという。

ひどい話です。アフリカはいまだに呪術が幅を利かせる文化を持っており、黒魔術で呪いをかけた人が逮捕されたりもしてますが、これはさすがにひどすぎる。


せめて、ジョニー&エドガー・ウィンターだけは勘弁してくれよオイ。


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ベスト・オブ・エドガー・ウィンター

ベスト・オブ・エドガー・ウィンター

「100万ドルのブルーズ・ギタリスト」と呼ばれたジョニー・ウィンターと、弟でキーボーディストのエドガー・ウィンターはともにアルビノです。そのせいか、とくにジョニーは虚弱体質で(まぁドラッグとアルコールの問題もあるんだけど)常用している薬が日本の薬事法では認可されていないため来日不可能、といういわくつきの大物でした。近年はジョニーの体調がさらに悪化し、視力もほとんどないと伝え聞いており、心配なところです。


この辺の、大物アルビノ有名人を狙ったりは、しないでもらいたいですね。


あと、このニュースにちなんで「アフリカ人は野蛮」とか言ってる人もいることと思いますが、先日のHIV陽性看護士の解雇騒動を見るに、日本も一般国民の科学知識ではあんまり威張れたもんじゃないですね。


人体をまじないに使う、ということでは日本も古くから近年まで人肉民間療法が根強く息づいておりました。


『明治大正昭和 事件・犯罪大事典』などの資料を紐解きますと、

  • 明治25年大分県の河野儀平が、妻を殺してその生き胆を眼病の母に食べさせる。
  • 明治26年三重県の高島久次郎が、幼児の墓をあばき、蒲焼にして食べる。
  • 明治35年:東京で、野口男三郎が少年を殺害してその肉でスープを作り、ハンセン病の義兄に飲ませる(ただし証拠不十分とされ、冤罪の可能性がある)。
  • 同年:島根県の持田捨太郎が、墓から掘り出した人骨を黒焼きにし、木炭やイタチの黒焼きと配合して梅毒薬として利用した。
  • 同年:大阪府の共同墓地で、墓守の安藤小三郎が生首を密売していた。
  • 明治39年:長野県の馬場勝太郎が、共犯者から「ハンセン病の薬にする」と持ちかけられて4人を殺害し生き胆を取る。5人目の犯行が未遂となって発覚。裁判では共犯者の存在は立証されず、単独犯として死刑判決。
  • 明治40年福島県の墓守、大竹某が墓から死体を掘り出して梅毒薬を密造。家宅捜索を受けると、人間の頭がいくつも出てきたという。
  • 明治41年三重県の小林兄弟が、火葬場の死体から脳漿を採取して油をとり、また骨粉を万病に効く妙薬と称して密売していた。本人たちも「人油を飲まないと調子が悪い」と、ときどき小瓶を取り出しては啜っていたという。
  • 昭和8年群馬県の火葬場従業員が、遺体を5体のうち1体しか焼かず(遺族には少しずつ分けて渡していた)燃料費を横領し、さらに性病患者に頼まれて脳を密売していた。火葬場の敷地には、焼かれなかった遺体が1570体も埋められていた。
  • 昭和13年:愛知県で、ハンセン病にかかった崔東雲という男が、生き胆を取ろうとして9歳の少年を殺害。嫌疑がかかったことに気づいて自殺。
  • 昭和23年:自分が肺結核ハンセン病にかかったと思い込んだ愛知県の男が、生き胆を取るため行商の女性を殺害。しかしうまく解剖できず、死体を川に捨てた。
  • 昭和31年:秋田県の成川某が、埋葬を依頼された死産児や、墓から盗掘した赤ん坊の死体を黒焼きにして、その粉末を強壮剤として密売。近隣の農民ら数十人に、一包10円で合計1300円分が売れたという。
  • 昭和35年ごろ:埼玉県で腰痛などに悩む男6人が、「人の頭蓋骨の黒焼きを煎じて飲むと打ち身や坐骨神経痛が治る」との俗説を信じて、人骨を墓から掘り出した。
  • 昭和36年静岡県で共同墓地が暴かれ、死体が2体盗まれる。近隣では「口の周りを血に染めた男がうろついていた」「肝を薬に使った」などの噂がささやかれた。
  • 昭和55年:人骨の黒焼きを密売していた男が薬事法違反で逮捕された。この男は、それ以前にも滋賀や広島で人骨薬を密売し、昭和35年ごろと40年ごろにも逮捕されており、今回が3度目の逮捕であった。

死体の本別宝228号 (別冊宝島 228)

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ま、こと呪術に関していえば日本もアフリカも実は大差ないってことですね。


そういえば『シグルイ』にも、瀕死の藤木源之助が狒々の頭の黒焼きで全快するというエピソードがありました。

シグルイ 14 (チャンピオンREDコミックス)

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漫画では、藤木は狒々の黒焼きをむしゃむしゃ食べていましたが、ふつう黒焼きってのは煎じて飲むものだと思うんですけどね。