ふっかつのじゅもんがちがいます
- 作者: 柚月裕子
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2009/01/24
- メディア: 単行本
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1月11日に天童市でサイン会があり、そのときに買ったものです。
あらすじは以下のとおりです。
知的障害者入所施設で、失語症の少女が手首を切って自殺した。
彼女と親しかった入所者の青年は、担当の臨床心理士に「彼女は殺されたんだ」と語る。
彼の治療のため、臨床心理士の美帆は事件について調べていく。
そこには、おぞましい真相が隠されていた…
ミステリとして見れば、謎の構成が弱い(「探偵」「犯人」「被害者」以外の人物がほとんど出てこない)という感はありますが、人物や心理の描写が丁寧で、テーマ的にも骨太で、読ませる力がありました。
※以下ネタバレ
この小説では、福祉施設の職員が、障害者の就職を斡旋する機関の役員に入所者の少女を抱かせ、その見返りとして優先的に企業に紹介してもらっていた、というグロテスクな真相が描かれています。
「障害者福祉利権」*1、「知的障害者の性的搾取」*2という醜悪なテーマは、昨今話題の海外同人ゲーム「かたわ少女」とネガとポジの関係にある、と言えなくもないというか。
http://www.katawa-shoujo.com/
(↑それにしても、迫力のあるドメインではある。いつの間にか日本語にも対応しているが、耳の不自由な少女に「静音」と名付けるあたりのセンスも含めて味わい深い)
こちらのゲームでは、身体障害を抱える少女たちとのふれ合いが描かれる予定だそうで、それはそれでいいと思うのですが、『臨床真理』では、障害者の多くが直面せざるを得ない、権力と抑圧の構造を抉り出しているので、萌えの方々にはこちら方面からの考察も忘れないでほしいですね。
重いテーマの話はこれくらいにして。
作品の後半で、主人公の臨床心理士は、失語症の少女がUSBメモリに残していた誤字だらけの文章を入手し、その誤字を修正して解読します。
似ている字を置き換えて(「き」と「さ」、「に」と「こ」、「は」と「ほ」など)入力し直していくあたりは、ぼくぐらいのファミコン世代からすると、『ドラクエ2』とかでパスワードを写しまちがえたときの経験を思い出すものがあり、なんとも共感を覚えずにはいられなかったといいますか。
- 出版社/メーカー: エニックス
- 発売日: 1987/01/26
- メディア: Video Game
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