臨床真理

柚月裕子先生の『臨床真理』文庫版が出ました。

臨床真理 (上) (宝島社文庫 C ゆ 1-1)

臨床真理 (上) (宝島社文庫 C ゆ 1-1)

臨床真理 (下) (宝島社文庫 C ゆ 1-2)

臨床真理 (下) (宝島社文庫 C ゆ 1-2)

最近の宝島社の方針として、単価を下げるため、さほど厚くない本でも上下巻の分冊にしています。今作も例外ではなく、上下に分かれていますのでお間違えのないよう。


この作品は、第7回「このミステリーがすごい! 大賞」を受賞した、著者のデビュー作です。知的障害者施設で自殺した少女をめぐり、共感覚(音や声や文字に色を感じる能力)を持つ青年と臨床心理士の女性が、その背後に隠された真実に迫る、というストーリーで、その真相は醜悪にして衝撃的。

セックスボランティア (新潮文庫)

セックスボランティア (新潮文庫)

知的障害者の性という、エンターテインメントとしては重みのあるテーマに切り込んだ、意欲的な作品です。ミステリーとしてはやや謎の構成が弱いという難点はありますが、それを補って余りあるほど、テーマで読ませる力を持っていますね。


単行本のときには残っていたいくつかのアラが修正され、逆に、単行本ではカットされていたある重要な部分が文庫版では収録されていますので、ハードカバーで読んだという方も、もう一度こちらを再読してみることをおすすめします。


柚月先生は現在、4月発売予定の新作を執筆されています。評論家の茶木則雄さんによれば、こちらも傑作とのことですので、期待して待ちましょう。