次元の壁を超えて

欧米の一部の国では、同性での結婚も認められていますが、日本では今のところそれを認めようという動きは目立っておりません。


日本国憲法第24条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」とあり、同性の合意では成立しないことになってるんですね。これを変えるためには憲法改正の必要があるので、同性婚が日本で認められるのは遠い未来のことだと思われます。


ですが、世の中にはこんな署名運動をやってる人もいるそうでして。


日本政府に対し「二次元キャラとの結婚を法的に認めて下さい」という署名活動実施中 - GIGAZINE

日本政府に対し「二次元キャラとの結婚を法的に認めて下さい」という署名活動実施中

「もはや、僕たちは三次元には興味がありません。できるならば、二次元の世界の住人になりたいとすら考えています。しかしながら、現在の科学技術ではそれは実現されそうにはありません。そこで、せめて二次元キャラとの結婚を法的に認めてもらうことはできないでしょうか?もし、これが実現したら企画者は、朝比奈みくると結婚する予定です」ということで、署名プロジェクトが行われているようです。


二次元キャラとの結婚を法的に認めて下さい - 署名活動するなら『署名TV』
http://www.shomei.tv/project-213.html

署名の概要によると、「二次元キャラとの結婚を法的に認めてもらうことを目指しています」となっており、カテゴリーは「人権」、目標署名数は「1,000,000」で、この記事を書いている時点での署名数は「27」となっています。

署名してくれた人のコメントを見てみると、

・・・戸籍にも載せるんですか?

戦艦長門俺の嫁、あと建造物や人工物のとの結婚も・・・・・認められた例はないけどさ

三次元はろくな女がいないから大賛成。

なのはさん俺の嫁

昔から二次元の人しか好きになれなくて
今、本気で好きになった二次元の人が居ます。
たとえ架空の人物であっても人を好きになるのには変わりない。
是非ともこの制度を法的で認めて欲しいので署名します。

書面上では結婚した訳だが、やはり法的にも認めて貰いたいものだ。

私は「月姫」のアルクェイドと5年前から結婚しております。
もはや私に迷いはありません。
彼女と一生共に生きていきます。
二次に生きる者の一人として、この運動を応援したいです!!

かぶったら重婚?早い者勝ち?税金どうしよ。

などなど、さまざまな業が渦巻いています。志を同じくする人は署名してみてはいかがでしょうか……。

ぐはははは。何やってんだこの人たち。



まぁ、こんなふうに常識をコケにするジョークのセンスは嫌いじゃないんですが(マジで批判するほどのものじゃないと思う)、実はオレは「○○は俺の嫁」という物言いがどうにも気持ち悪くてですね。


だって、「嫁」ってのは姑がもらうものでしょ?


萌えというのは純粋かつ非日常的な愛情の発露なわけですよ。そこにねぇ、「嫁」だの「結婚」だの、そういう不純な概念を持ち込んで欲しくないんですよオレは!
(なんだこの熱さは)


かつて中島らもは、稲垣足穂の「詩は歴史性に対して垂直に立っている」という言葉を元ネタにして、「恋愛は日常に対して垂直に立っている」と書いたことがありました。

恋は底ぢから (集英社文庫)

恋は底ぢから (集英社文庫)

足穂は、恋愛と結婚について、

結婚するということは、恋愛という『詩』から日常という『散文』へと下っていくことです

と述べていました。


萌えというのは、そういう散文に堕することのない純粋な詩情なのに、わざわざ「俺の嫁」などという散文に落とし込もうとするのは、理解できねえなぁ。


あとね、コレ前にも言いましたけど、フィクションの人物を「二次元」と表現するのはむしろその世界を矮小化して押し込めることじゃねえかと思うんですよ。


漫画やアニメでは「絵」で表されてますけど、フィクション世界の中ではちゃんと立体として存在してるはずでしょ?


「二次元の世界」という言い方は、逆にその世界に対して愛情を注いでないように思うけどなぁ。


それに、署名を集めてる人は「朝比奈みくると結婚する予定」だそうですが、もともと朝比奈みくるは小説『涼宮ハルヒの憂鬱』の登場人物なわけでしょ。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

小説は二次元じゃないよ!