『東京デッドクルージング』読了
『東京デッドクルージング』を読みました。
おおまかな内容は、深町先生ご自身のこちらのエントリを参照のこと。
今作は、青春の焦燥やほのかな恋を描いた前作『ヒステリック・サバイバー』や、父と娘の愛憎や喪失感をテーマとした前々作『果てしなき渇き』に比べ、描いているエモーションがより「怒り」に特化しているので、読むときの疾走感は随一です。
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また、今回は暴力を行使する人物が全員プロフェッショナルであり、粋がったチンピラや悪ぶったワナビーは出てこないので、その暴力はより苛烈で冷酷でありながらも陶酔や耽溺とは遠く、常に冷静なため、いかに激しい暴力描写が出てきても、不快さを感じることがまったくありませんでした。
とはいっても、描かれているテーマはこれまでと共通の、「失った(または持つことができなかった)幸福や平和を取り戻そうとする絶望的な戦い」であり、それは、舞台になっている世界のディストピアぶりによってより際立っています。
この小説の舞台である2015年の東京は、オリンピックを控えて開発が進んでいますが、格差社会はいっそう進行してスラム化がいちじるしく、関西出身のお笑い芸人が総理大臣に、健康フリークの元スポーツ選手が都知事になり、コワモテが売りの女性タレントは、節電とリサイクルは国民の義務だと訴え、巨大宗教団体の幹部であるタレントは、名誉会長の書いた自己啓発本の宣伝につとめている、という設定です。
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「元スポーツ選手の都知事」だけ、元ネタが思い当たりませんでした。松岡修造か長嶋一茂あたりかな…?
あと、山形県出身で東北弁をしゃべる変態スナイパー兄弟が、あまりにもいい味を出しているんですが、これもモデルがいたりするのかなぁ。