鎖された海峡

ぼくはこの一年ほど、仙台と山形で開かれている「小説家講座」に参加しています。


これらの講座では、受講生が書いたテキストを教材として、各自が感想や批判を述べ合い、講師の先生から講評をいただくというスタイルをとっていて、ぼくも他人様の書いた文章にああだこうだとケチをつけたりしていたんですけども。


だんだん、自分では何も書いたことないくせにデカいツラをしているのが心苦しくなってきて、今回は原稿用紙38枚ぐらいの短編小説もどきを提出してみたんです。


んで、そんな駄文を、今回の講師をつとめられた、逢坂剛先生に読ませたんだから怖いもの知らずというか。

鎖された海峡

鎖された海峡


今回ぼくが書いた短編は、クトゥルー神話を三つほど混ぜて日本に置き換えたという、安易な発想のうえに読み手を選ぶものでした。


うちのブログは、どんなマニアックなネタを入れても誰かしらわかってくれるという環境でやっていますので、それに慣れて、甘えがあったんでしょうね。


ツーといえばカー、阿といえば吽、「おらといっしょにぱらいそさいくだ!」といえば「わしもつれていってくだせ」と返ってくるというのは楽しいことこの上ないんですが、その環境でずっとやってきたので、どうしても、元ネタをわかってる人に向けて書いてしまうクセがついてしまっていました。


案の定、受講生の面々から「意味がわからない」「謎が明かされないまま終わるので消化不良」との批判をいただき、逢坂先生からも「この分量で原典を三つも入れるのは無理がある」との講評をいただきました。


「作者が説明しなくちゃ解らないようではダメですよ」とも。


やっぱりね、ブログを書くときも、はじめて読む人の目線を意識してやらないといかんですね。

こぼれ話

逢坂先生の『さまよえる脳髄』や『百舌の叫ぶ夜』は、編集者がつけたタイトルだったそうです。

さまよえる脳髄 (集英社文庫)

さまよえる脳髄 (集英社文庫)

さまよえる脳髄 [DVD]

さまよえる脳髄 [DVD]

(↑高島礼子のヌードが拝める、お宝映像の定番である)


脳髄はさまよわないだろ、と先生は思ったそうです。


百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

また、『百舌の叫ぶ夜』はもとは『百舌の啼く夜』だったそうですが、「百舌」と「啼く」という難読漢字が二つも入るのは好ましくない、という営業的判断によって「叫ぶ」に変わったそうです。


扱いづらいネタは一作品に一つで充分、ってことですね。