「悪霊」と書いて「たたり」と読みます

ということで、『犬神の悪霊』を観てきたわけです。

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不祥事を隠蔽しようとする企業が、地元住民の間に残る”犬神筋”差別を利用しようとするあたりは、近代的と目されている日本の社会が、その実は前近代的な因習から脱却できていないという社会派なテーマを表現していたと思うのですが、いかんせんいろんな演出が常軌を逸しすぎているため、どうしてもツッコミどころを探しながら見てしまいます。


たとえば、大和田伸也の新妻である泉じゅんが犬神にとりつかれて発狂する場面。

まずは病院に連れて行くのですが、とりあえずCTスキャンを撮り、脳波を測り、一通り検査しても原因はわかりません。


この辺は、当時オカルトホラーのブームを巻き起こしていた『エクソシスト』とおんなじで、ご丁寧に頚動脈に注射までしています。

チューブラー・ベルズ

チューブラー・ベルズ

実は、『エクソシスト』でいちばん怖いのはあの首の血管から血がぴゅーっと出るところだと思うんですが、あれって造影剤を入れるための処置なんですよね。なのに、この映画ではレントゲン撮った後に注射の場面が出てくるんですよ。意味ねえじゃんそれ!


んで、病院ではらちがあかないというので山奥の実家に大和田伸也ともども戻り、そこで犬神落としをやるんですね。

怪しげな祈祷師と霊媒のおばさん(発狂演技では第一人者の白石加代子。名人芸。)がお決まりの問答をやって、「赤飯をくれれば帰る」というシャーマンの言を受けて、横たわった泉じゅんを男衆が囲み、手に手に持った赤飯のおにぎりでその体を撫で回しまくり、着物をはだけさせてもだえまくるんです。


しかし、それでも犬神は落ちず、泉じゅんは荒縄で縛られて雪中に放置され、結局死んでしまいます。


この手の、憑き物落としリンチ殺人というのは実際によくあって、けっこう最近でも聞く話なんでわりとリアリティはあるんですが、ほとんどBUKKAKEビデオみたいな絵ヅラの強烈なインパクトに負けて、それどころではなくなってしまいます。
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ほかにも、大和田伸也のトゥーマッチな発狂演技(一升瓶をラッパ飲みするところが最高)とか、差別と失恋に悲しむ山内えみ子が自室で泣きながらゴーゴーを踊るところとか、

  • 土蔵の二階から突如現れたキ○ガイの息子が、お母さんを吊り上げ絞殺
  • 猟銃を手に入ってきた村人が、お父さんが「撃つな!」と言った瞬間に息子を射殺
  • 転落した息子が手に持っていた刀が、お父さんを貫通

という殺人ピタゴラスイッチ的一家皆殺しなどなど、見どころは満載。


テーマ的には深く重いものが込められていますが、そこからこぼれ出た情念がこういったオモシロ場面を生み出した、ということでしょうか。