Gの悲劇

このGWには、なぜかBSで石坂浩二金田一耕助シリーズが放送されています。

http://www.nhk.or.jp/bs/genre/movie.html#200705012000
今日は「獄門島」。

獄門島 [DVD]

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ちゃんと、例のキチガイじゃが仕方ない」もカットなしで放送されました。

※以下ネタバレ




















近年は、「基地外」とか「既知外」という言葉も使われてますが、「気違い」という言葉の言い換えとしては、この作品の「季違い」が元祖だと思われます。


さて、この作品についてですが。



すでに亡くなった人物の作った計画に則って殺人が行われる、という点において、よくエラリー・クイーンの「Yの悲劇」との共通が指摘されています。

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

あと、「気違い」と「季違い」のミスディレクションは、「鈍器」(ブラント・インストルメント)「楽器」(インストルメント)のアレと同じですね。



「獄門島」は横溝正史の最高傑作といわれることが多いのですが、「Yの悲劇」も、ミステリベストテンの類でよく1位になっています。これも共通してますね。



で、横溝正史はかつて小林信彦のインタビューに答えて、

あれは結局、梅毒が全体のテーマでしょう、だからあまり好かんのですわ

と語っておられました。



「Yの悲劇」の舞台となるハッター家は、その名前どおり「気違いハッター家」と呼ばれる精神異常者揃いの一家で、母のエミリーからの遺伝がほのめかされています。


横溝先生は、持病の肺結核に長年苦しめられた方でしたから、感染症を遺伝性の業病のように描いたこの作品には、ちょっと複雑な思いがあったのでしょう。




ですが。



「獄門島」でも、本鬼頭の当主与三松がお小夜聖天を後妻に迎えてからというもの、お小夜は発狂して死亡し、与三松も発狂して座敷牢に閉じ込められ、生まれた三人の娘はいずれもお馬鹿さん、というちょっとアレな家系の遺伝が見られます。


…これって、アレじゃないんですか横溝先生。