八つ墓明神はお怒りじゃ

さて、78年テレビ版「八つ墓村」を見たんですけども。
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※以下ネタバレ

























…何だコレ。



原作とぜんぜん違うじゃないですか。


犯人はやっぱり美也子なんですが、なぜか諏訪弁護士が共犯で、犯行の後半はこっちが主導してるという状態でした。


諏訪弁護士は実は八つ墓村出身で、かつて要蔵に家族を殺されていた、という背景が金田一によって明かされるのですが、観客が知らない手がかりで推理するってのは探偵もののルール違反でしょう。


美也子の動機になったはずの慎太郎は殺されるし、久野医師の動機になったはずの新居医師は出てこないし、地元民の暴動は長門勇が一言で鎮圧しちゃうし、そもそも辰弥が押し出しの強いおっさんだし、美也子が辰弥に「わたしと一緒に死んで!」とか言って剃刀で切りつけるし。


(典子が出てこないのはいつものこととしても)原作とぜーんぜん違いますね。これは予想外でした。




そして、一番の違いは事件が解決した後。



金田一ものの長編は、その多くが大団円を迎えて終わり、残された人々が「多くの犠牲があったけど、これからは新しい未来に向けて生きていこう」と悲しみを乗り越えていくというポジティヴなエンディングを迎えます。


たとえば「犬神家の一族」もそうだし、「女王蜂」とか「三つ首塔」「悪魔の手毬唄」「病院坂の首縊りの家」なんかもそう。


八つ墓村」も、辰弥は要蔵の子でないことがわかり、田治見家の財産はもらえないものの落ち武者の隠し財宝をゲットし、ついでに恋人もゲットして子供もでき、村では、慎太郎が山から石灰岩を採掘する新事業を開始し、残された人々がみんな新たな幸せに向かって歩きはじめるというとても明るいエンディングを迎えました。



ところがこの78年版では。


岡山県に台風が上陸して洪水が発生、八つ墓村全域が跡形もなく流され、地図から消えてしまうという原作ファンなら誰もが唖然とするしかないエンディングを迎えます。


幸せになるはずだった辰弥も、たまたまその時、落ち武者の財宝を探しに村へ来ていて、鍾乳洞の中で水死するという悲惨な運命をたどってしまうのでした。



…これじゃテーマが真逆になるんだけどなぁ。



このシリーズは、古谷一行長門勇のキャラクターもあって全体的にコミカルな雰囲気があり、むちゃくちゃ陰惨な事件でもあまり深刻にならないという特徴がありました。


この「八つ墓村」も事件解決まではわりとあっさり進んでいたのですが、油断してるとこういう不意打ちがあるので注意が必要です。