Only a hobo

以前BSでガンダム劇場版を一挙放送したとき、ブライトの「めくら撃ちでいい!」をはじめとしていくつかの不適切な台詞がカットされていたのですが、アムロが砂漠の飯屋でランバ・ラルに飯をおごってもらったときの「ぼく、乞食じゃありませんし」もやはりカットの対象となっておりました。

機動戦士ガンダム II 哀・戦士編 【劇場版】 [VHS]

機動戦士ガンダム II 哀・戦士編 【劇場版】 [VHS]

こじき」というのは放送上不適切な言葉とされております。



ですけどね。



今度、劇団四季が「王子とこじき」を上演するのですが。

王子と乞食

王子と乞食

http://www.shiki.gr.jp/applause/ohji/index.html

今、これのCMが放送されていて、思いっきり「こじき」って言ってるんですよねぇ。

いいのかなぁ。



乞食を扱った漫画としては、水島新司の「銭っ子」が有名です。

http://www.mandarake.co.jp/shop/info_nakano/iwai/animal027/index.html


この人の漫画には貧民街とかホームレスがよく登場してきて、代表作の一つである「野球狂の詩」にも「乞食打者」なんてエピソードがあったりします。

野球狂の詩 (1) (講談社漫画文庫)

野球狂の詩 (1) (講談社漫画文庫)

知的障害者のホームレスをプロ野球選手にしてしまう、という大胆すぎる設定。大丈夫なのかそれ。


このシリーズにはほかにも、岩田鉄五郎が、誤審したアンパイヤに向かって

「わりゃどめくらか」

と暴言を吐いて退場になるという話もあったりして色んな意味でどきどきしてしまうのですが、一番の破壊力があったのは、最終巻ボーナストラックとして収録されていた短編「ジャラリン子」ですね。

野球狂の詩(17) (マガジンKC)

野球狂の詩(17) (マガジンKC)

主人公は、コジキの父親とバラックで暮らしている少年。

彼の父親は、昼間は路傍に座って目を閉じ、

「あわれなめくらでございます…
どうぞおめぐみを」

とやっているのですが、白杖をついて家に帰ってくると、ふつうに目を開けて暮らしています。

これは、ジャン・ジュネの「泥棒日記」に出てくる「奇跡の庭」と同じですね。

泥棒日記 (新潮文庫)

泥棒日記 (新潮文庫)

目が不自由だったり足が不自由だったりする乞食が、根城に帰ってくると目が開き立ち上がるという。


コレが、ネットウヨクのひとがよく叫んでいる、弱者特権キー!とかいうアレですか。


そして、父親は「めくら」ギミックでは商売がうまくいかなくなり、「いざり」をやってみたり「中風」をやってみたりしますがジリ貧で、息子に残飯あさりをさせて日々をしのいでいます。


この息子は、コジキの息子ということで学校にも通えないという不遇な子ですが、実は本当の息子ではなく、赤ん坊の時に迷子になっていたのを拾って育てていたもの。


実父は、コジキの養父によく金を恵んでくれる隻眼の会社社長(水島新司作品によく出てくる漫画俳優)で、かつてヤクザだったとき、出入りのいざこざで赤ん坊だった息子が行方不明になったのをずっと探していたのでした。


実父はヤクザで養父は乞食って、どんだけ不遇なんですかこの子は。


しかし、この子は不遇な環境にも負けずに快活に育ち、ようやく見つけた実父も、養父の未成年者略取を告発するどころか、「今までよく育ててくれました、あなたのこともうちの会社で面倒見ます」と感謝するというから、ハッピーにもほどがあるというかなんというか。