わが猟奇の原点

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来週から「カポーティ」が公開されるので、予習のために買ってきた本。

冷血 (新潮文庫)

冷血 (新潮文庫)

いつも殺人の話してるくせに、読んでなかったのかよ!というツッコミは勘弁してください。


いや、ホラ、あのね、これって強盗殺人の話じゃないですか。

ボクの場合、快楽殺人とか無差別殺人とか、そういうのが専門だから。

異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

異常快楽殺人 (角川ホラー文庫)

なんだよ専門って。われながらどういう言い訳だ。


そんなわけなんで、食うための犯罪ってのはあんまり食指が動かないのです。


本当に喰うための殺人は好きなんですけどね。

業火

業火




佐川一政氏の場合は、幼少期に叔父の佐川満男氏と「人喰い人種ごっこをして遊んだという幼児体験がその後の事件におおいに影響しているといわれていますが、わたしの場合も、ある幼児期の読書体験がその後の人生におおいに影響を与えております。



あれはたしか、小学校に上がる前だから5歳か6歳のころ。


「クイズ」とか「なぞなぞ」に目のない子供だったわたしは、親にねだって「推理クイズ」のたぐいの本を買ってもらいました。


今となっては書名も出版社もわからないのですが、たぶん小学館コロタン文庫とか秋田書店の大全科とかケイブンシャの大百科とかその辺の子供向け文庫本のたぐいだったと思います。



その本には、古今東西の名作推理小説から引用した奇抜な殺人トリックがたくさん載っておりました。

定番である、

  • 岩塩の弾丸で射殺すると、弾丸が溶けるので凶器が特定されない
  • 雪の上を後ろ向きに歩いて現場に出入りし、足跡をごまかす
  • 飲み物に入れた氷に毒を仕込み、溶ける前に毒味してみせる
  • 犯人はオランウータンだった

などなど。


しかし、それ以上に幼いわたしを魅了したのが、ある短編の子供向け抄訳でした。

  • ある館で暮らしていた女が行方不明になる。同居している男が殺したようだが、死体が見つからない。
  • 男は、女の失踪以来外出もせず、日がな一日、使いもしないマキを割って過ごしている。
  • 男はベジタリアンなのか、野菜しか買っていない。
  • しかし、肉料理用の調味料「ナムヌモ・ソース」を2本買っている。

果たして真相は…というもの。


いうまでもなく、ロード・ダンセイニの「二壜のソース」です。

世界短編傑作集 3 (創元推理文庫 100-3)

世界短編傑作集 3 (創元推理文庫 100-3)


解決篇では、名探偵リンリイがナムヌモ・ソースがけサラダを警部に喰わせるんですね。

警部が「このひどいドレッシング・ソースはなんだ!」って怒るんですが、「ドレッシング」という言葉をはじめて知ったのがこの小説だったというのはたぶんわたしぐらいのものでしょう。



これ以来、わたしはネクロ・サディズムとかアントロポファジーとかそういうものに異常に興味を持つようになり、現在に至っています。


今でも、「ナムヌモ・ソースってどんな味なのかなぁ」という思いは、初恋のひとの面影や、デパートの食堂で食べたクリームソーダなんかと同じように、心のどこかを甘く切なくくすぐるのでありました。