地獄の猟犬がつきまとう

俺と悪魔のブルーズ(2) (アフタヌーンKC)

俺と悪魔のブルーズ(2) (アフタヌーンKC)

この漫画では、悪魔と取り引きした主人公・RJの右手の指が10本になるという衝撃的な展開があります。

実際、モデルになったロバート・ジョンソンの演奏を聴くと、リードとリズムを一人でいっぺんに弾いてるんですね。どうやって弾いてるのか全然わかりません

Complete Recordings

Complete Recordings

コレができるなら、悪魔に魂を売ってもいいです。



で、悪魔に売った魂を取り戻すためにはどうすればいいか。
それを教えてくれるのがこの映画です。

ロバート・ジョンソンの「クロスロード・ブルーズ」にも登場する、友人のウィリー・ブラウンをモデルにしたこの映画。


主人公は、「ベスト・キッド」の空手少年ダニエル役でも有名なラルフ・マッチオ
音大でクラシックギターを専攻しつつ、ブルーズに傾倒する少年の役です。

で、彼のブルーズの師匠であるハーモニカ吹きのジイサンが、実はロバート・ジョンソンの歌に登場するウィリー・ブラウン。
かつてウィリーは、悪魔と取り引きしてブルーズを極めたものの、老い先短い今になって後悔し、ラルフ・マッチオを伴ってミシシッピ川流域を遡り、悪魔と再会して契約を破棄するための旅に出ます。


ギターとハープだけを持った流浪の旅。


旅の過程で、少年は出会いと別れを経験し、男として、ブルーズマンとして一回り大きく成長していきます。
この辺の描写はなかなかしんみりしたものがあります。


そして、ついにかつて悪魔と取り引きしたという十字路にたどり着いた老人と少年。


ここで映画のトーンが一変します。


十字路に立っていると、ウィリーが言うとおりの悪魔が本当に現れてしまいます
これが普通の背広を着た黒人のオッサンで、なんとも有り難味がありませんがホンモノなんだから仕方ない。

そして、契約を反故にしたいというウィリーに対し、「ほんじゃウチのギタリストと勝負してもらおうか」という悪魔。

バトル会場のライヴハウスへ行ってみると、そこで待ち受けているのがなんとスティーヴ・ヴァイ

Passion & Warfare

Passion & Warfare

オレだったらとりあえず謝る。それから泣いてみる

しかし、このギター・モンスターに対しまったく臆せずに果敢にバトルを挑む主人公。
クリーム色のテレキャスターを手に、速弾き合戦に突入してしまいます。

しかし、ヴァイにかなうはずもなく、負けそうになる主人公。
ここで、ピックを捨ててクラシック風の奏法に切り替えます。


このシーンを指して、「ロックよりクラシックの方がエライってことか?」という批判の声もありますが、むしろ「付け焼刃のブルーズじゃなく、自分の血となり肉となっているもので勝負してみろ!」ということなんじゃないでしょうか。

それと、ロックのアグレッシブさとクラシックのメロディを組み合わせて新しい音楽を生み出そうという意図があったのかもしれません。

だとしたら、ウォルター・ヒル監督はイングヴェイ・マルムスティーンの存在をまったく知らなかったんでしょうね。

Trilogy

Trilogy


このクラシック風速弾きに怯み、敗北するヴァイ。

きっと、アルカトラズにインギーの後任として加入し、彼のプレイをコピーさせられたイヤな記憶が呼び覚まされたんでしょうね。

ディスタービング・ザ・ピース

ディスタービング・ザ・ピース

「Too young to die,too drunk to live」のスウィーププレイをタッピングで再現してみたり、「アイツと同じことはやらねえ」という必死さがありましたからねぇ。