猟奇の果て
身の毛もよだつ殺人読本―血と精液にまみれた殺人鬼たち (別冊宝島 (368))
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 1998/03
- メディア: ムック
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テッド・バンディやジェフリー・ダーマーなどの有名な殺人犯について、デルモンテ平山夢明先生やガース柳下毅一郎先生といったおなじみの人たちが解説してくれるとても楽しい本ですが、中でも強烈なのが、ジェラルド・シェイファーによる「キラー・フィクション」です。
1972年に、アメリカの元警官シェイファーは、数人の女性をロープで首を吊って殺害した容疑で逮捕されました。
彼の自宅からは、犯行に酷似した「小説」と称する自作の手記(イラスト付き)が押収され、快楽殺人を裏付ける証拠とされています。
ガース先生の訳がこの本に載っていますが、いやーもうクラクラします。
とにかく悪夢のように熱のこもった文章で、首吊りに対する執念の強さと被害者に対する凄まじい悪意を描いています。
犯罪を助長する創作物を規制せよ、という人は多いですが、やる奴は見なくたってやるし、見るべきものが無かったら自分で作っちゃうんですよ。
こんなことを思い出させる事件が、日本でも起こりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050806-00000017-san-soci
自分で小説を書いていた、というのはシェイファーと共通しています。
自殺サイトを使って被害者を物色する、というのはちょっと予想できませんでしたが、考えてみれば実に巧妙ですね。
被害者は「死にたい」という希望を持っているわけで、犯人の言われるままに身辺の整理を行い、遺書まで書いて犯人のもとへやってくるわけですから、殺人犯にとっては鴨がネギしょってついでに鍋とコンロまで持ってくるようなものです。
この事件で、自殺サイトの利用者は激減するでしょうね。
さてさて。
お懐かしやの「FBI心理分析官」によると、連続殺人者は秩序型と無秩序型に分けられます。
FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: ロバート・K.レスラー,トムシャットマン,Robert K. Ressler,Tom Shachtman,相原真理子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2000/12/01
- メディア: 文庫
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- 概ね知能が高い。
- 一連の犯行に、手口の共通が見られる。
- 被害者は、顔見知りかもしくは言葉巧みに声を掛けた相手。
- 他人への共感を欠く社会病質者であることが多い。
で、無秩序型の特徴はというと
- 知能は平均以下。
- 犯行の手口はまちまちで、共通する要素は見られない。
- 被害者は、いきなり襲い掛かった見知らぬ相手であることが多い。
- 被害妄想などが見られ、明らかな精神病患者であることも少なくない。
今回の事件の犯人は、日本には珍しいとされる秩序型の快楽殺人犯であることは間違いないですね。週明けからのワイドショーでも、ガース先生や小田晋先生や斎藤環先生が大活躍されることと思います。
忌まわしい殺人事件について、面白いとかつまらないとかいうのは不謹慎に過ぎるかもしれませんが、マニアの琴線に触れるのはなんか秩序型の方なんですよねぇ。どこか歪んだ創造性のようなものが感じられるというか。
こういう事件が起こると、決まって「メディアの影響」というものが取り沙汰されますが、ある食人犯はこんなことを言っています。
「オレたちは映画の真似なんかしない。映画がオレたちの真似をするんだ」
人間の心に闇がある以上、それを描いた芸術や創作物というのはあって当然ですし、健全な精神を持った人間は、どんな創作物を目にしても、それによって犯罪を犯すことはありません。
そして、不健全な精神を持った人間は、創作物によって生まれるものではありません。
創作をどんなに規制したとしても、それによって犯罪が根絶されることは絶対にありません。
ちなみに。
「身の毛もよだつ殺人読本」は、イタリアの古典的殺人犯ヴィンセント・ベルゼニの供述について
「女の首を絞めてたら(中略)ものすごい快感だった。オニナーよりずっといいからやめられなくなった」
という身の毛もよだつような誤植で「VOW」に載ったことでも有名です。
- 作者: 宝島編集部
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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