差別しているのは誰なのか

絶版状態にあった「ちびくろサンボ」が復刊されるそうです。

ちびくろサンボよすこやかによみがえれ

ちびくろサンボよすこやかによみがえれ

わたしが幼稚園のころ、学芸会でトラを演じたのを覚えています。
子供心に「バターになるってどおゆうことよ?」と思ったものでしたが、担任のシズコ先生にいくら訊ねても、その演出プランについて納得のいく答えは得られませんでした。
舞台がどこの国かよくわかりませんが、トラはアジアにしかいませんしね。

この物語は、「サンボ」という単語が差別用語にあたるわけで、コレを書き換えたクリーン・バージョンとでもいうエディションも出ています。

トラのバターのパンケーキ―ババジくんのおはなし (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

トラのバターのパンケーキ―ババジくんのおはなし (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

  • 作者: ヘレン・バンナーマン,フレッド・マルチェリーノ,Helen Bannerman,Fred Marcellino,せなあいこ
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 1998/09/01
  • メディア: 単行本
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なんとなくコッチの方が納得いくかなぁ。舞台をインドに置き換えているからトラが出てくるのも納得いくし、不思議物語としての収まりもいい様な気がします。ってそれもインドという国に対する偏見ですね。
サンボ入門 (スポーツ新書 176)

サンボ入門 (スポーツ新書 176)

この「サンボ」は「武器を持たない護身術」という意味のロシア語の頭文字をとったもので、差別用語ではありません。念のため。


黒人に対する差別用語は他にもたくさんあります。

わたしも現役時代を観たことはありませんが、ボボ・ブラジルという黒人レスラーがいました。

幻の帝王ボボ・ブラジル [VHS]

幻の帝王ボボ・ブラジル [VHS]

ココバット」と呼ばれるヘッドバットを代名詞として、日本でも力道山ジャイアント馬場と名勝負を繰り広げた、伝説の名レスラーです。

で、このリングネーム。「ボボ」というのが九州地方で女性器を指す方言になるため、九州では「ブラジル」だけの名前でサーキットした、という逸話は有名ですが、

そもそも「ボボ」って何よ?

というのはわたしの長年の疑問だったのですが、

昨年、このアルバムが出て、やっとこれが黒人のスラングであることがわかりました。

つまりは、このリングネームには黒人に対する侮蔑的なニュアンスが込められています。

必殺のココバットも、語源は「ココナッツ」から来ています。
つまり、
「黒人の頭はココナッツみたいに固くてカラッポ」
という偏見を背負わされた必殺技なわけですね。

そして、その「ココバット」で白人レスラーを攻撃する姿に対しては、


「ブラジルのヘッドバットには白人への怨念が込められている」


というギミックがつけられていたわけです。

これって差別の最たるものですよね。


「アイツらは、昔に差別していたオレたちのことを恨んで、復讐しようとしてるんだ」


という偏見。日本における在日コリアン被差別部落民に対する偏見も、これと同じです。


「差別なんかもうなくなった」と思ってる人たちによる差別。


「自分は差別なんかしていない」という人たちによる差別。


「差別表現撤廃」と言いながら「言論統制」にすり替えようとするヤツラによる差別。


悲しいことですが、これはなかなか無くならないようです。


そんな、差別と偏見に満ちたギミックを押し付けられながらも、文句も言わずにココバットを撃ち続けたボボ・ブラジル

鉄人ルー・テーズも一目置く実力者でありながら、世界チャンピオンになれなかったボボ・ブラジル

彼の姿には、虐げられた黒人の哀しみが宿っているように思われます。


・・・プロレスを長く観てると、こういうブルース的な要素に魅かれるようになってくるんですよ。こうなるともはや末期症状です。