史上最狂の日本映画
昨日も書きましたが、名探偵明智小五郎はこれまで何度も映像化されています。
最近では、田村正和が演じた「明智小五郎VS怪人二十面相」をご記憶されている方もいらっしゃることでしょう。
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江戸川乱歩原作の映画はいくつもありますが、一本だけ、凄すぎて他のが束になっても敵わないものがあります。
日本カルト映画史上の最高峰として映画ファンの間に名高い「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」(1968年東映)がそれです。
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タイトルも内容もヤバ過ぎて、今に至るもビデオもDVDも出ないこのハイパー傑作。
監督の石井輝男は「網走番外地」がよく知られている職人監督です。
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「恐怖奇形人間」は、江戸川乱歩の小説「孤島の鬼」と「パノラマ島奇談」をベースに、「屋根裏の散歩者」「蜘蛛男」「人間椅子」などの要素を強引にぶち込み、60年代アングラ文化味でグツグツ煮込み、東映三角マークをトッピングしたという奇跡のコラボ作品。
観るためには、名画座で上映されるのを心待ちにしなければなりませんが、それでも今なお新たなファンを開拓しているカルト中のカルトといえるでしょう。
ストーリーを解説するのは極めて困難ですが
主人公・人見広助は自分の出自を知らない医大生。何者かの陰謀により精神病院に入れられ、しかも刺客により殺されかけるが脱走。
かすかな手がかりから瀬戸内海の島が故郷らしいと知る。
現地では、自分にそっくりな大富豪の息子が急死していた。
人見は、生き返った彼になりすましてその家に入り込む。
父親である大富豪は、生まれつき手に水かきのある奇形人間だった。
そして、小島を改造して、奇形人間のパラダイスを作ろうと企んでいたのだ!
死んだ、人見にそっくりな男は実は人見の双子の弟だった、と父親から聞かされる。
つまり、この奇形人間は自分の父親だった!
人見を医大に入れたのは、外科手術により「芸術的な」奇形人間を作り出すためだった!
小島には多くの奇形人間たちが暮らしていた。
その中に、男女のシャム双生児がいるのを人見は発見する。彼らも外科手術で作られた奇形だった。
人見はこの2人に分離手術を施し、1人で歩けるようになった娘と恋に落ち、結ばれる。
父に、小島の奥の洞窟に連れていかれた人見は、そこに囚われている自分の母と対面する。
母は、不倫の末に女の子を産み、ここに幽閉されていたのだった。
その娘は、シャム双生児にされていた娘だった。つまり、人見は兄妹相姦の罪を犯してしまったのだった!
衝撃を受ける人見に、父は拳銃を向け、これからは自分のために働け、と脅迫する。
と、そこに唐突に明智小五郎が現れる。
明智は、父とその執事がはたらいた悪事を次々に暴いていく。
父が銃を向けると、爽やかに笑い「弾は抜かせてもらいました」
明智により、人見の危機は救われた。
しかし、兄妹相姦の罪は逃れられない。兄妹は、ともに体を打ち上げ花火にくくりつけ、人間花火となって空に散った。
島の上空には、人見の「おかあさ〜ん」という絶叫がこだましていた。
書くほどに頭が混乱していくストーリーです。おそらくこの文章で理解するのは不可能でしょう。でも本当にこんな感じなんだってば。お願い、信じて。
映画館で観たときは、明智の登場から後はもう場内は爆笑の渦。
演じているのは大木実という俳優。小太りのおじさんです。「えっ?これが明智?」という意外性はバツグンです。
父親を演じるのは、暗黒舞踏の創始者、土方巽。初登場シーンで見せる波打ち際不思議ダンスにはトリップ確実ですが、その後は意外にも無難な悪者演技。
三島由紀夫や澁澤龍彦が絶賛するカリスマ舞踏家が、単なるヘンな親父になっているというのは痛快なものがあります。
明智に全てを暴かれたあとの急激な反省ぶりも見ものといえるでしょう。「わしはむごい男じゃった・・・」って、そりゃあんまりだ。
そして、ラストの人間花火には場内はもう喝采の坩堝です。
夕日をバックにマネキンが砕け散り、手をつないだ2本の腕や首が「ひゅー」って感じで飛んでいくそのヴィジュアルは、人生観を一変させるチャペル・ペララスとなることでしょう。
情報誌をこまめにチェックすると、名画座の情報も載っていることでしょう。
この作品を観る機会に恵まれた方は、人生が豊かになりますよ。