美しい国へ

あらかじめ言っておきますけど、今日のエントリは何かを断定したり否定したりするものではなく、一連の流れから受ける印象の話です。



昨日あたりに盛り上がっていた、はてな匿名ダイアリーのエントリ。
通り魔に切られて日本すごいと思った話 通り魔に切られて日本すごいと思った話
通り魔に切りつけられ怪我をしたという増田が、「警察がすぐ来てくれた」「救急車と病院の対応がよかった」「警察がしっかりした調書を作ってくれた」「治療費を東京都が肩代わりしてくれた」などの体験を綴り「日本ってすごい」と称賛するものです。



まぁプライバシーの問題もあるし、真偽について追及するのはやめておきますが、清水潔の『桶川ストーカー殺人事件』や『殺人犯はそこにいる』などを読めば、こんなにうまくいくとは限らない、ということはおわかりになるかと思います。

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

警察関係のニュースでは、このように悪い結果は大きく報道され印象に残りますが、組織の力が正常に作用した場合は大きな報道にならないので、悪いケースばかり記憶しているという面もあることはあると思うんですけど、だからといって、不祥事を隠蔽するためには人の命も軽視する、悪い体質を無視していいことにはならんです。


そして、今日あたりはこちらが話題になっておりました。
母親に結構な金が注ぎ込まれてる 母親に結構な金が注ぎ込まれてる
こちらは、お母さんがガンの手術と抗ガン剤治療を受けているという増田が、高額な医療費が健康保険で大部分まかなわれている、という日本の医療制度への感謝を述べるエントリです。



闘病生活の描写には非常にリアリティがあり、「抗ガン剤治療」に対する偏見の強さを嘆くあたりも、落ち着いた筆致ですが、強いメッセージ性を感じます。


ぼくも身内がガンを患った経験があるので、この増田にはおおいに共感するし広く読まれてほしい内容ではあるんですけど、ただね、昨日は日本の警察機構へ感謝するエントリが話題になって、今日はこのエントリで日本の医療制度への感謝が述べられる、という流れには、そこはかとなく不安なものを感じるというかなんというか。

「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜

「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜



国会にまで取り上げられた「保育園落ちた日本死ね!!!」では、その背景がいろいろの憶測とともに語られましたが、「匿名」という特性上、そこで語られる言葉にもいろいろと意味が付加されてくる部分がある、そういう場になってきたという気がします。