パチンコ探偵の冒険

政府の財政難や治安悪化、施設建設の遅れなど、さまざまな問題が危惧されていたリオ五輪はとりあえず開幕し、謎めいた事件が報じられつつも、日本選手団は初日から複数のメダルを獲得するなど、おおいに活躍しています。


それはともかく、開幕直前にはこんなニュースが報じられておりました。
高橋尚子 リオ行き直前にパチンコ11時間「依存症」心配の声も (女性自身) - Yahoo!ニュース 高橋尚子 リオ行き直前にパチンコ11時間「依存症」心配の声も (女性自身) - Yahoo!ニュース

「地元でみんな心配してるんです。というのも、高橋さんがカツラで変装までして、パチンコ店に通っていて……。朝から夜まで打ち続けることもザラ。パチンコ依存症なんじゃないかって、心配しています」(近所の住人)

 シドニー五輪女子マラソン金メダリストの“Qちやん”こと高橋尚子(44)。千葉市内の彼女の自宅から10キロほど離れたパチンコ店。7月下旬の午前11時半過ぎ、高橋が1人で店内に入ってきた。

8月開催のリオ五輪でもTBSのスペシャルキャスターに起用された高橋。この日、彼女は夜10時半の閉店まで丸11時間、食事もとらずに一心不乱にパチンコを打ち続けた。始めて、あっという間にドル箱を15箱積み上げた高橋。換金すれば、10万円以上に。だが高橋は打つのをやめない。いったん玉を精算すると、座り直して同じ台を打ち始めた。

手元には2本の水のペットボトル。あと一歩で大当たりを逃すと、頭をのけぞらせて悔しがる素振りを何度も見せる。夕方には、奮闘むなしく手元の玉が全部なくなることも。高橋は、残念そうに席を立った。さすがにこれで帰るのか。だがトイレ休憩と飲み物を買っただけで、またまた台へ戻って打ち始めた。恐ろしすぎる執念!大当たりがまた出始め、次々と連チャンする。リーチがかかると、高橋は台のボタンを一心不乱に連打していた。

その後も決して打つのをやめない高橋。走りと同じく、粘る、粘る!まるで、シドニー五輪のゴール前、追いすがるリディア・シモンを振りきったときのような粘り強さだ。

 夜8時半。ここでマネージャーも務める恋人・西村孔さん(45)が車でパチンコ店まで迎えに現れた。だがこのとき、高橋は再び大当たりの波をつかみ、連チャン中!駐車場で待つ恋人に、メールを何度も送っていたが、結局、西村さんは40分ほど彼女を待ったあげく、1人で家に戻っていった。

 夜10時40分、閉店のアナウンス。他の客は帰ってしまい、ガランとした中に文字どおり高橋ひとりが残っていた。店員に精算をうながされるが、席を立たない。どうにか未練を断ち切った彼女は、再び迎えに来た恋人の車で、やっと帰宅の途に就いたのだった。

この日の戦果は、大当たり55回という“歴史的大勝”。本当に依存症なのでは――。翌日、高橋を直撃した。

 ――昨日、すごく勝ってましたね。
「ありがとうございます(苦笑)。これ記事になるんですか!? やだ、もう(笑)」
 ――カツラで変装してパチンコ店に通っていると。
「カツラは1回かぶりましたが(変装とは)違うんです!」
 ――西村さんが迎えに来たのに、打ち続けてましたよね。
「そう!『勝っちゃった! どうしよう!』『ごめんなさい!』って思いながら(苦笑)。リオに行く準備もあるのに……って、すごく焦りました。早く帰りたかったんですけど」
 ――依存症ではない?
「月に何回かしか行かないです。昨日は休みだったので……あくまで息抜き(苦笑)」

 優等生イメージだったQちゃん、私生活は意外に“規格外”。地元の人たちを心配させるのは、ほどほどに――。

死ぬほどどうでもいいニュースではありますが、これで「パチンコ依存症では」という心配の声も上がるあたり、さすがに国民栄誉賞の神通力はすごいなあと思わされるばかりであります。まぁワスに言わせれば、座っていきなり15箱も積んで、1日で55回も当たるという大勝であれば、1日11時間座っててもそりゃ仕方ないと思わなくもないです。連チャンしてたら、そりゃ台を立てないのも当たり前です。


とはいえ、この記事と、添えられている写真からわかることもだいぶあるんですね。


まず、写真を見るとお店は大手チェーンの「マルハン」で(ドル箱に書いてある)、打っている台は藤商事の「CRリング 運命の日」だ、ということがすぐにわかります。

そして、遊戯を開始して「あっという間にドル箱を15箱積み上げた」という文章。この爆発力からいって、出玉の多いマックススペック(大当たり確率は400分の1ほどと低いが、当たったときの出玉が多く、連チャン継続率も高い)ということが推測されますね。


お店は「千葉市内の彼女の自宅から10キロほど離れた」ところにある、とのことですから、これだけの手がかりがあれば、Qちゃんがどこで遊んでいたか突き止めるのは容易なことです。


高橋尚子キャスターの自宅が、千葉市内のどこにあるかはわかりませんが、ざっくりと千葉市近辺の「マルハン」を、公式サイトの店舗検索で探すと、おそらく「千葉みなと店」「千葉北店」「市原店」「習志野店」のどこかだと推測できます。そして、パチンコ店のサイトには「設置機種」という項目があるので、そこから、「マックススペックの『リング 運命の日』が、2台以上並んでいるお店を探します。パチンコ台というのは、リリース直後は出玉の多いマックススペックが出て、それからミドルスペック、ライトスペック、甘デジとスペックを変えて入れ替えていくのが通例です。「リング 運命の日」は2年前に出た機種なので、マックスが複数台残っている店はそれほど多くありません。


すると、「千葉北店」にはマックススペックの「CRリング 運命の日FPF」(末尾のアルファベットはスペックを表す)が4台ありますが、ほかの店にはミドル以下の台しか残っていない、ということがわかりました。この記事でQちゃんが遊んでいたのは、マルハン千葉北店ということでおそらく間違いないでしょう。これだけの情報があれば、いろいろ絞り込むのは簡単なことなのであります。


この日は大当たり55回とのことで、「運命の日」の出玉スペック(約1800発が60%、約450発が35%、出玉なしのST継続のみが5%)からいって、6万発〜7万発ほど出たでしょう。換金すると20万円を超えます。「歴史的大勝」というのは決して大げさな表現ではなく、Qちゃんが楽しそうに取材に応じてしまう気持ちもよくわかります。オリンピック本番を前に、なんともゲンのいい話ではあります。


ところで、パチンコ業界では大当たり確率400分の1を「マックススペック」もしくは「フルスペック」と呼んでいたのですが、2015年11月から規定が変わり、上限は319分の1となりました。また、2016年の6月からはさらに規制が強まり、確変継続率は65%までとなりました(以前は78%ぐらいあった)。そのため、旧基準機はこれから随時撤去されていく予定です。パチンコ業界では、釘調整などいろいろな問題が取りざたされていますが、この1年ほどでまた大きく変化することになるでありましょう。


余談ですが、アニメなどを原作とするパチンコ機の演出では、熱い(期待度の高い)リーチがかかると、主人公と敵のバトルが始まります。その際は、原作で重要なバトルが再現されるほど熱いという原則があるため、「強い相手と戦うほど勝ちやすい」という価値観の倒錯がみられます。「CR機動戦士ガンダム」シリーズでは、アムロは無名パイロットが乗る量産型ザクにはなかなか勝てないのに、シャアが乗るゲルググにはよく勝ちます。ジオングが出てきたときは必ず勝ちます。この原則は他のアニメ原作でも同じで、『北斗の拳』ならGOLANのカーネルにはいつも負けるのに北斗琉拳の羅将にはよく勝つし、『あしたのジョー』ならウルフ金串にはよく負けるのにホセ・メンドーサにはよく勝ちます。


エヴァンゲリオン』の場合は、やはり敵の使徒が強いほど期待度が高くなりますが、作品で最強の敵はシンジ君の弱い心であるため、もっとも熱いリーチは「いちど逃げ出して帰ってきたシンジ君が、マダオに『僕をエヴァに乗せてください!』と言えるかどうか葛藤する」場面という、非常に盛り上がりに欠ける展開なのでありました。