パックマンの危機

6階級制覇パッキャオ同性愛侮辱を謝罪/ファイト/デイリースポーツ online 6階級制覇パッキャオ同性愛侮辱を謝罪/ファイト/デイリースポーツ online

 ボクシング6階級制覇のマニー・パッキャオ(37)が17日(日本時間18日)、母国フィリピンのテレビで同性愛者を侮辱する発言をしたことに対し、自身のツイッターで謝罪した。

 米スポーツ専門局、ESPN(電子版)によると、パッキャオはテレビで「男性同士、女性同士で関係をもっている動物を見たことがありますか?もしそういう人がいるとしたら動物以下だ」などと発言。オンエア直後に猛烈な批判を浴び、米スポーツ用品メーカーのナイキ社からは不適切な発言として契約解除を言い渡された。

 事態を重く見たパッキャオは自身のツイッターを更新し、「同性愛者の方々と動物を比較し、傷つけてしまったことを申し訳なく思います。どうぞ許してください。神の恩恵がありますように」との文面を掲載。同時に投稿したビデオメッセージではナイキ社のTシャツをまとい、腕を組みながら30秒にわたってタガログ語で謝罪した。

 同選手の謝罪に対してフォロワーはさまざまな反応を見せた。「金のために顔を殴り合う動物を見たことがあるか?お前は動物以下だ」という辛らつなものや「私たちは今でもあなたを支持します!すべての人に自分の考えをもつ権利がある。それを説明する必要はありません」などの投稿があった。

この発言は、フィリピン上院選に立候補しているパッキャオが選挙運動の一環としてテレビ出演したときのもの。フィリピンは宗主国だったスペインの影響もあって伝統的にマチズモが強いお国柄で、また国民の大多数がカトリック教徒ということもあって同性愛にはあまり寛容でない傾向がありますから、こういう発言がウケると思ったんでしょうね。ボクサーとしてのパッキャオはおおいに尊敬していますが、それと思想は別です。


動物の世界に同性愛が存在することは、近年とくに広く知られるようになりましたのでここで取り上げることはしませんが、ボクシングの世界で同性愛がらみの事件といえばこれが有名です。


パレット事件 - Wikipedia
1962年3月、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンにて、世界ウェルター級王者ベニー・パレットと、挑戦者エミール・グリフィスのタイトルマッチが行われました。
両者の対戦はこれが3度目。前年4月の第1戦では、挑戦者グリフィスが王者パレットをKOして王座を奪取。9月の第2戦では、今度はパレットが判定勝ちで王座を奪還し、そして完全決着戦として、このラバーマッチが挙行されたのでありました。


この試合前の計量で、パレットはグリフィスのことを、同性愛者を表すスラングで挑発し、侮辱されたと感じたグリフィスはパレットに怒りの猛攻を加えます。


12ラウンドで、グリフィスはパレットをコーナーに追い込んで猛烈なラッシュ。押し込まれたパレットは、ロープの隙間から上半身を乗り出す格好になり、身動きが取れない状況で、むき出しの鉄柱に押し付けられるように、グリフィスのパンチを連続で食らうことになります。

20発以上も打たれたパレットは意識を失い、病院に搬送されましたが意識が戻ることはなく、そのまま10日後に死亡します。
このリング禍を受けて、アメリカではボクシングという競技への批判が高まり、禁止論すら出るまでになります。これ以降、それまで3本だったリングロープは、現在と同じ4本になって、隙間からボクサーの身体がはみ出すのを防止するようになりました。


(なおほぼ同じ時期には、『あしたのジョー』の力石が死亡する場面で引き合いに出された、デビー・ムーア対シュガー・ラモスの世界フェザー級タイトルマッチにおける、ダウンしたムーアがロープに頭を強打して死亡する事故も起きている)



グリフィスはこのリング禍に悩みながらもボクサーとして戦い続け、ウェルター級とミドル級の二階級を制覇しました。映画『ザ・ハリケーン』のモデルになったルービン・カーターとも対戦しています。

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後年には、バイセクシャルだったことをカミングアウトし、ゲイバーから出てきたところを暴漢に襲われて重傷を負ったこともありました。晩年は認知症を患い、2013年に介護施設で亡くなっています。



性志向というデリケートな話題と、ボクシングという過激なコンタクトスポーツが交錯すると、このように不幸な事故を生むことがあるので、扱いにはより慎重であってほしいものです。