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少年漫画に見られる女体化すれば馬鹿になる表現と女性キャラの性的消費 - Togetterまとめ
『ONE PIECE』で描かれているジェンダー観に、男尊女卑が多分に含まれているという指摘と、それに対する反発がまとめられています。
それが端的に出ているのが、単行本のおまけコーナー「SBS」で描かれた、主要キャラの性転換イラストです。
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上のまとめでは「女体化」と書かれていますが、もともと女性であるボア・ハンコックは男性化されていますね。
1枚の絵だけで女性/男性っぽく表すために、ジェンダー観が誇張されて、女性化されたキャラは「占いとスイーツと美容が好きで、有給とって海外旅行」みたいなバブリーOLのステロタイプになっています。高慢で一人称が「わらわ」だったハンコックは、一人称「おれ」で粗暴なべらんめえ口調になっているのがわかりますね。ストーリー上すでに退場しているサー・クロコダイルやゲッコー・モリア、バーソロミュー・くまはともかく、本編中で主人公たちと戦っている最中であるドンキホーテ・ドフラミンゴは、もうちょっと重厚でもいいんじゃないかな。
では、七武海以外のキャラはどうなるのか、見てみましょう。
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どちらも、女性化されたキャラは美容とスイーツが好きに、男性化されたキャラはより粗暴になっていますね。ナミはあまり変わってないけどニコ・ロビンはぜんぜん違う人になってます。ウソップとフランキーは外見だけ変わってて、ルフィは肉好きからサラダ好きに変わってますね。
ユースタス・“キャプテン”キッドがやたら同盟を組みたがるのと、バジル・ホーキンスが占い好きなのは本編と同じです。占う内容が死相から恋愛運になったのと、本編ではピザをおかわりしていたジュエリー・ボニーがどんぶりをおかわりするようになった程度で、「最悪の世代」は総じて変化が少ないですね。
まぁ、これらのイラストはあくまでおまけの一枚であって、本編とはあんまり関係ないんですけど、本編のほうもけっこうジェンダー観がカテエところはあります。
『ONE PIECE』の世界では、戦闘能力は悪魔の実に左右されるところが大きく、女性でも男性より強い戦力を持つキャラは少なくありません。誰しも魅了し石化してしまうボア・ハンコックはほぼ無敵だし、ニコ・ロビンの能力も攻略された描写はありません。オバケを使った精神攻撃を仕掛けるペローナには、麦わらの一味でもウソップ以外は手も足も出ずに敗れています。
とはいえ、戦闘力の面では男女平等ですが、まとめの中でも指摘されているように、「男のロマン」を強調しすぎて女性が従属的になる傾向はありますね。海賊女王だったはずのハンコックはルフィのサポートしかしなくなっちゃったし、サンジが女性に暴力をふるえないためCP9のカリファに倒される場面も、人によっては女性差別的と感じるでしょう。エースの母が、海賊王ゴールド・ロジャーの血を引いた子を産むために自分の生命を犠牲にするあたりも、母性への過剰な信仰といえます。
性暴力やセクハラ的なモチーフも、あちこちに見られます。ナミがアーロン一味の奴隷だった時期に、刺青を入れられたのはレイプによるスティグマのメタファーでしょうし、アイスバーグの秘書に扮していたカリファがやたら「セクハラです」と言うギャグも、フェミニストに対する悪意があるでしょう。そのカリファが、アワアワの実を食べて身体から泡を出す石鹸人間になるあたりも、女性秘書という職業に対するセクシャルな視点を感じます。
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『ロッキー・ホラー・ショー』のフランクン・フルターによく似たエンポリオ・イワンコフが統治するカマバッカ王国には性的マイノリティばかりが住んでいるのですが、女好きなサンジがそこへ来たときは住人みんなが彼を追い回します。ここを「ゲイを色情狂として描いている」という批判はよく聞かれるところですし、オレもこの書き方には問題があると思います。
でも、これはゲイのみならず『ONE PIECE』の女性キャラに多く見られる傾向で、ルフィはハンコックらアマゾン・リリーの女たちに追い回されるし、ドフラミンゴ家のメイドであるベビー5は、少しでも自分に好意をしめした男には、誰彼かまわず尽くさずにいられない共依存的な人物になっています。この漫画では、女もゲイも同じ性格を持たされているといっていいでしょう(もちろん、違った性質を持ったキャラはナミやロビンら何人もいるけど)。
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でもこの感覚は、『ONE PIECE』に限らず少年漫画の多くに通底しているもので、ジャンプはとくにそれが強い傾向があります。そもそも、ジャンプの方向性を決定したであろう本宮ひろ志の『男一匹ガキ大将』からして「女はひっこんでろ」的な価値観の典型例でしたし、『魁!!男塾』のように女性がまったく出てこない漫画も少なくない。
『こち亀』の両津なんて幼児的なミソジニーの塊みたいな人物ですし、『ドラゴンボール』に至っては、後半になると女性キャラには「サイヤ人の子を産む」以外の役割はほぼ与えられていません。「少年漫画だから女をないがしろにしてもいい」という感覚は、確実にあると思いますね。「最終的には女の方が強い」という結論にはなっても、それもまた偏見の再生産でしかなかったりするし。その辺は、男性としても意識しておいていいでしょう。
(ちなみに、個人的にミソジニーがひどい漫画として思い浮かぶのが、川原正敏の『修羅の門』である。この漫画では美形キャラが出てくるたびに、格闘技のこともわからないのにルックスだけでついた女性ファンが大挙して試合場に押し寄せ、名前入りのうちわを振りながら、技のことなどいっさいわからないまま相手に野次を飛ばしまくるのである)
そもそも「少年漫画」「少女漫画」と区分されている時点でジェンダーの偏りは絶対にあるわけで、それへの指摘はなくならないし、やたら反発するのもおかしい。フェミニストからの「少年漫画は女性を消費している」という指摘に対して「だったら少女漫画のイケメン消費はどうなんだ」と返すのも、そもそも少女漫画はフェミニズムの本ではないんだから、何の反論にもなりません。
だいたい、元の指摘は「この漫画の背景にはこういう社会的合意がある」というものであって、「こんな漫画は規制しろ」という話ではないのに、勝手に表現規制の話にするのもどうかしてると思いますね。
あと、『ONE PIECE』は海賊が主人公のアウトロー漫画だからそもそも法律を犯している、という人もいますけど、あの作品は、本質的には封建的社会秩序を転覆させ、人々を圧政から解放するという革命思想を描いている漫画です。海賊は革命家のメタファーなので(まぁルフィの父親はガチで革命家なんだけど)、犯罪者とかそういうツッコミも無意味です。ツッコむなら「革命思想をカッコよく美化するアカ漫画」とでもいうべきなんじゃないですかね。
ちなみに『七つの大罪』の主人公がヒロインにセクハラしまくり、ヒロインもそれを嫌がらないという描写については、読んだことないので何とも言えません!
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それと、『進撃の巨人』は女性を性的に描いていないからいい、という人もいるみたいですが、あれは画力の問題でセクシーな女性を描けないだけなんじゃないかという疑念がどうしても拭えません!
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