最後のドラマ

WBO世界ヘビー級王者のトミー・モリソンが、亡くなったとのこと。


http://www.jiji.com/jc/zc?k=201309/2013090300024&g=spo

ボクシング元世界チャンピオンのトミー・モリソン氏死去

 トミー・モリソン氏(ボクシング元世界チャンピオン)米スポーツ局ESPNによると、1日にネブラスカ州オマハの病院で死去、44歳。93年にジョージ・フォアマン(米国)を破って世界ボクシング機構(WBO)ヘビー級王座を獲得。96年にエイズウイルス(HIV)が検出されて資格停止となった。
 映画「ロッキー5」にはボクサー役で出演した。米アーカンソー州出身。戦績は48勝(42KO)3敗1分け。 (ロサンゼルス時事)(2013/09/03-01:43)

映画ファンには、『ロッキー5/最後のドラマ』に出演していた印象が強い人物だと思います。

まぁ興行的にも批評的にもいろいろアレな作品ではありますが。この映画が公開された1990年当時、ボクシングのヘビー級戦線は黒人が中心となっていました。最強を誇ったマイク・タイソンは王座から陥落しましたが、代わって台頭したイベンダー・ホリフィールドやレノックス・ルイス、ブランクを経て奇跡の復活を遂げたジョージ・フォアマンらがしのぎを削り、白人選手がそこに食い込むことはなかなかできませんでした。


そこに出現した強豪モリソンは、ホワイト・ホープとして白人ファンからおおいに期待され、映画の中と同じように猛烈なプッシュを受けました。というかそもそもこの映画自体がモリソンを売り出すための企画の一環だった、と言っても過言ではないでしょう。


映画では、ドン・キング似の悪徳プロモーターに引き抜かれ、恩人のロッキーを裏切るというダーティな役柄ながら世界チャンピオンになりましたが、現実にも、この3年後にジョージ・フォアマンを破り、WBO世界ヘビー級王座を獲得します。久方ぶりでの白人の戴冠に、人種主義者は狂喜しましたが2回目の防衛戦で黒人のマイケル・ベントに番狂わせのKO負けを喫し、王座陥落。返り咲きを狙いますが、試合前の検査でHIV感染が発覚し、ライセンスを取り消されてしまいます。


その後は、映画の役柄そのままに荒れた人生を送り、何度も逮捕されてはファンを嘆かせました。引退後のボクサーにはまま見られることですが、実力の衰えとは別な要因による不本意な引退をした人物だけに、その陰影の濃さは特別なものがありました。


現在のヘビー級ボクシング戦線は、ウクライナ出身のクリチコ兄弟が絶対王者として君臨しており、他にも旧ソ連出身の白人ボクサーがトップどころを占めています。
『ロッキー5』に登場したモリソンは亡くなりましたが、現実のボクシング界は『ロッキー4/炎の友情』に近付いている、といってもいいかもしれませんね。