スキャンダル・コントラ・カベジェラ

ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『マレーナ』で、戦争が終わって街が解放され、主演のモニカ・ベルッチが「敵兵と寝た売国女」としてリンチに遭い、はさみで髪を切られる場面は非常に印象的です。

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これは、第2次世界大戦でナチス・ドイツ占領下にあったパリが連合軍によって解放されたとき、対独協力者とされた女性たちが公衆の面前で丸刈りにされ、晒し者にされたという事実をもとに、舞台をシチリア島に置き換えたものです。


女性が不貞をはたらいたときなど、制裁として髪を切る行為は古代からあります。フランス革命の犠牲となったマリー・アントワネットも、ギロチンで処刑される前にその髪を切られています。

ベルサイユのばら』にも出てきます。


が、第2次大戦時のドイツとフランスではとくに広く、女性の髪を切る暴力行為が横行しました。ナチス政権下のドイツでは外国人やユダヤ人と関係を持ったとされる女性が丸刈りにされ、解放されたフランスでは、前述のとおり対独協力者とされた女性がその対象となります。ファッションデザイナーのココ・シャネルも、ナチス親衛隊の将校と愛人関係にあったため、解放後はスイスに亡命して難を逃れました。

誰も知らなかったココ・シャネル

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くわしくは、こちらの論文を参照のこと。


http://www.desk.c.u-tokyo.ac.jp/download/es_8_Hirase.pdf


近年では、女性が坊主になることに制裁的な意味は薄れてきています。女優が役作りのために丸刈りになることはちょくちょくありますし(シガニー・ウィーバーデミ・ムーアナタリー・ポートマン、日本では長澤まさみ谷村美月などがすぐ思いつくところ)、女性的なジェンダーロールに息苦しさを覚えて坊主になる女性の例も仄聞されます。

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女子プロレスでは、敗者がリング上で丸坊主にされる髪切りマッチがしばしば行われ、ジャガー横田長与千種ダンプ松本アジャ・コング、山田敏代、尾崎魔弓(この人は2度坊主になっている)らが丸刈りを披露しました。とくにクラッシュ・ギャルズで女子中高生に絶大な人気を誇っていた長与が坊主になったときは、満場のファンが泣き叫ぶ姿が非常にショッキングだったものです。

1985年のクラッシュ・ギャルズ

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(いま見ると、こりゃ長与さんオイシイわと言わざるを得ない)



さて。



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130131-00000105-spnannex-ent

AKB峯岸みなみ 丸刈りで“お泊り”騒動謝罪 研究生に降格

一部週刊誌に若手ダンサー宅への“お泊り”が報じられたAKB48の峯岸みなみ(20)が31日、ユーチューブ上のグループ公式チャンネルで謝罪した。


 丸刈りで登場した峯岸は涙声で「メンバー、ファン、スタッフ、家族、みなさんにご心配をおかけして申し訳ありませんでした。AKB第1期生として、後輩のお手本になるべきなのに軽率で自覚のない行動でした」と謝罪。「頭の中が真っ白でどうしたらいいのか、自分に何ができるのか、週刊誌を見ていてもたってもいられず、だれにも相談せず坊主にすることに決めました」と丸刈りにした経緯を語った。さらに涙ながらに「AKB48を辞めたくない。甘い考えかもしれませんが、今回のことはすべて私が悪かったです。本当に申し訳ございません」と深々と頭を下げた。

 またAKB48劇場の戸賀崎智信支配人は公式ブログで、峯岸を2月1日付でAKB48研究生に降格処分にすると発表した。

 “お泊り”は、31日発売の週刊文春で、1月17日に世田谷区内のダンサー宅に一泊したと報じられたもの。お相手はEXILEの弟グループ「GENERATIONS」の白濱亜嵐(19)で、2人は11年秋に朗読劇「もしもキミが。」で共演していた。

 AKB48は恋愛禁止を掲げているため、峯岸は丸刈りにしてけじめをつけた。

これ、「男性と関係を持った」ことを咎として坊主になるんだから、発想としてはナチス関係と同じですよね。
自分で考えて決めたとのことですが、これが運営に強制されてのことだったら、重大な人権侵害ですよ。ちょうど、女子柔道五輪強化チームが監督の体罰パワハラJOCに訴えて話題になってますが、体罰がこれだけ問題になってるご時世に、平気でこういうことをやるアイドル業界ってどうなってるんですかね。コンプライアンスとか芸能界には通用しないんですね。
それにしても、AKB48を辞めたくないと言って坊主にしたわけですけど、これからどうやって活動するつもりなんでしょうね。一休さんでもやるんでしょうか。坊主頭で歌って踊っても、異様なだけですからね。パンクバンドならサマになるんですけど、ガチャピン顔の峯岸にパンクは似合わないし。


そういえば、アントニオ猪木は1986年に浮気をスクープされて「男のケジメ」として坊主になり、坊主頭のままでアンドレ・ザ・ジャイアントから腕固めでギブアップを奪ったことがありました。

また、1989年には長州力に完敗を喫し、「一からやり直す」と称してしばらく第一試合に出場。当時デビューしたばかりの鈴木みのるらと対戦していたこともありました。



坊主も降格も、猪木が20数年前にもうやっていたことです。やっぱ猪木は常人の25年先を行ってたんだな!