劇画バカ一代
影丸穣也先生が……亡くなられた?
http://mainichi.jp/select/news/20120509k0000m060103000c.html
影丸穣也といえば、梶原一騎とのコンビによる『空手バカ一代』がまず第一に挙げられるところです。つのだじろうの降板を受け、主役も大山倍達から芦原英幸へとシフトして、つのだ時代にあった怪奇ムード(人間凶器の由利達郎とか、いま見るとギャグとしか思えない)を払拭した、汗臭さを感じさせる作画が内容によくマッチしておりました。
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また、逮捕前の荒れた時期を代表する『カラテ地獄変』でも、あまりに殺伐としてワンパターンな原作に呆れた中城健が降板し、最終章を影丸が作画したことがありました。こちらは、作画家のクレジットは中城健ひとりになっており、完全なゴーストライター扱いだったものです。とはいえ、淫靡さを持った中城の絵と違い、汗臭いながらも健康的な影丸の絵のおかげで、さわやかなラストになっていたのが印象的でした。
梶原一騎のみならず、日本ミステリ史上においても影丸穣也は重要な人物でした。昭和43年に「少年マガジン」誌上で、影丸の作画による『八つ墓村』が連載開始され、これが後の横溝正史ブームの発端となりました。当時すでにセミリタイア状態にあった横溝の作品を敢えて取り上げたのには、桃源社が夢野久作や小栗虫太郎の作品を復刊したことによる怪奇・伝奇探偵小説ブームがあったのでしょうが、伝奇的とはいいがたい絵柄の影丸が作画に選ばれた理由は今もって謎です。金田一耕助が妙に強そうなのも印象的です。
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昭和54年には『悪魔が来りて笛を吹く』も劇画化していますが、こちらは原作をほぼ無視して、東映映画版を忠実に劇画化するという異色の作品でした。でも金田一耕助を西田敏行に似せては描きませんでしたけどね。
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真樹日佐夫とのコンビによる『ワル』も印象的で、劇画というものの迫力とロマンを追求し続けた作家でありました。謹んでご冥福をお祈りします。