孤独じゃないグルメ

花のズボラ飯』2巻を読んだんです。

花のズボラ飯(2)

花のズボラ飯(2)

久住昌之はデビューからずっとサブカル畑一本やりで来た人で、代表作とされる『孤独のグルメ』も、良くも悪くもサブカルらしい漫画でしたが、今回の『花のズボラ飯』2巻はがらりと趣きが変わっています。こんなに正統的なハートフル漫画もできる人だったとは。


1巻は、女性版『孤独のグルメ』に近いモノローグ重視の漫画でしたが、2巻では軌道修正がなされ、主人公の花と、周囲の人物とのかかわりを描くことに重点が置かれています。ひとりでおいしいものを食べることも幸せなら、親しい人といっしょに食べることもまた幸せ。おいしいものを食べるから幸せなのか、それとも関係性の中においしさがあるのか。おそらく両方とも正しいのですが、これまでのキャリアでは前者を中心に描いてきた久住昌之が、後者のやり方もできることを示してきたことに驚きました。一貫して男の世界を描いてきた人が、ガーリーな領域に踏み込んだことも。

豪快さんだっ! 完全版 (河出文庫)

豪快さんだっ! 完全版 (河出文庫)


底抜けに明るい花ですが、実はその裏にある事情を抱えていることがわかります。本書81頁での、公園で遊ぶ子どもたちを見る花の一コマがその後への伏線になっているあたりもいい。小学生のぱんつばかり描いてきたうさくん(って言ってもいいよね?)が、こんな成人女性の心理の機微を描けることも意外でした。花と親友のミズキのやり取りも、うさくんの柔らかい絵柄によくマッチしていていい感触です。これを谷口ジロー泉晴紀が描いてたら絶対こうはならなかっただろうなぁ。


前巻は、昨年の『このマンガがすごい!』オンナ編1位になりましたが、2巻はさらに万人に受ける内容になっています。しあわせな気持ちになれる漫画でした。